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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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異世界に竹を植えよう!

さとるは、四丁目にある佐藤のおばあちゃんの家へ向かった。


以前、配達に行ったときに聞いた話を思い出しながら、庭先までやってくる。


「こんにちはー」


「あら、さとるくんじゃないかい」


「こんにちは。ちょっと聞きたいことがあって」


「なんだい?」


さとるは、庭の竹藪を見る。


「この竹って、工事のときに抜く予定なんですよね?」


「ああ、そうだよ」


おばあちゃんが竹藪を見る。


「庭を少し広げるからね。一部は抜いてしまう予定なんだ」


「それなら……」


さとるは、姉から頼まれたことを説明する。


「しかし、何に使うんだい?」


「あー……」


そこは当然聞かれる。

さとるは少し考えてから答えた。


「えっと。丁度、竹を植えたいって方がいて……」


「ほう」


「おばあちゃんの話を思い出したのよ。姉さんが!」


「なるほどね」


「はい」


「それで、姉さんが以前ここで話を聞いたのを思い出したみたいで」


「なるほどね」


おばあちゃんは少し考える。

そして――


「どうせ抜いて捨てるんだから、持っていっていいよ」


「本当ですか!?」


「構わないよ」


「ありがとうございます!」


さとるが頭を下げる。

おばあちゃんは納得したように頷く。


「なら、私が根付きの良さそうなのを見繕ってあげるよ」


「本当ですか?」


「ああ。せっかく植えるんだろ?」


「ありがとうございます!」


こうして、さとるはおばあちゃんに竹を選んでもらうことになった。


◇


しばらくして。


「姉さんー! いるー?」


鞄の向こうから、さとるの声が聞こえた。


「いるよ!」


私はすぐに返事をする。

すると、鞄の向こう側からさとるが顔を出した。


「おばあちゃんが、根付きの良さそうなのを見繕ってくれたよ」


「本当!?」


「うん。それで、紐で結いて、鞄の口に通るようにしたから」


「ありがとう!」


私は受け取った竹を見る。

根元には土が付いている。

これなら、上手くいけばこちらでも育てられるかもしれない。


「いい竹ね」


「おばあちゃんが選んでくれたからね」


「ありがたいわ」


私は竹を眺める。

さて。竹は手に入った。


あとは――


「植える場所ね」


私は小屋の周辺を見回す。

畑に植えるわけにはいかない。

竹は広がるらしい。

だったら、できるだけ畑や小屋から離したほうがいい。


「……あ」


小屋から少し離れたところに、原っぱがある。

何かを育てているわけでもない。


「ここでいいかな」


竹が増えても、小屋や畑から離れていれば管理もしやすそうだ。


「よし。ここに植えてみよう」


私は竹を持って原っぱへ向かった。

まずは土を掘る。

根を傷めないように竹を置き、土を戻していく。


「こんな感じかな?」


最後に水をかける。


「頑張って育ってね」


植えたばかりの竹を眺める。

まだ何も変わらない。

本当に育つのかも分からない。


でも――これが上手く育てば。


竹箒も。竹ザルも。竹籠も。


他にも、いろいろな竹製品が作れるようになる。地球から持ってくるのではなく、この世界で竹を育てる。


「まずは一本からね」


私は小さな竹を眺めながら笑った。

異世界の原っぱに、初めての竹が植えられた。

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