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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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竹製品が高級品!?

さて。竹製品は、異世界ではいくらくらいなのかしら?

私は鞄の中にある店を眺めながら考える。


熊手。竹箒。竹ザル。


地球では、どれも特別高い物ではない。

むしろ、普通にホームセンターや店で買える日用品だ。でも、この世界ではどうだろう?


「鑑定!」


まずは熊手を確認する。


【熊手】

【素材:木・鉄】

【品質:普通】

【価格:銀貨三十枚】


「……まあ、こんなものか」


次に竹箒。


【竹箒】

【素材:竹】

【品質:普通】

【価格:銀貨三十枚】


「……ん?」


そして竹ザル。


【竹ザル】

【素材:竹】

【品質:普通】

【価格:銀貨三十枚】


私は三つの商品を見比べた。


「は?」


熊手。銀貨三十枚。

竹箒。銀貨三十枚。

竹ザル。銀貨三十枚。


「何で竹製品、三つで銀貨九十枚もするのよ!?」


思わず叫んでしまった。

そのときだった。


「何騒いでるのさー?」


聞き慣れた声がする。


「……さとる?」


鞄の向こう側から、さとるが顔を出している。


「竹製品が高すぎる!」


「高すぎる?」


「そう!」


私は竹箒を持ち上げる。


「これ、一個で日本円にすると三万円近くする!」


「えー!? 高すぎる!」


「何でよ!」


私は竹箒を見る。


「竹箒よ?」


「いや、俺に言われても……」


さとるが竹箒を眺める。


「んー……」


少し考えたあと、何かに気づいたような顔をした。


「ちょっと姉さん。待って」


「何?」


「ひょっとしてさ――」


さとるが竹箒を指差す。


「そっちの世界、竹が無いんじゃない?」


「竹が無い?」


「そうそう」


「でも、竹って普通にあるでしょ?」


「それは地球の話」


「あ……」


言われてみれば。私はこの世界に来てから、それなりに歩き回っている。


森にも入った。村の周辺も見た。畑も見た。

木はたくさんある。草もある。


でも――


「……竹、見たことない」


「だよね?」


「そういえば、竹を見た記憶がないわ」


「だったら、それじゃない?」


さとるが続ける。


「地球には普通にあるけど、そっちの世界には存在しない」


「なるほど……」


私は竹箒をもう一度見る。


「だから、竹を使った製品そのものが珍しい」


「そういうこと」


「でも、地球じゃ消耗品みたいなものよ?」


「地球ではね」


「こっちでは材料自体がない」


「うん」


私は少し考える。


「となると……」


竹製品を持ってくる。

↓

異世界には竹がない。

↓

竹製品は珍しい。

↓

珍しいから高い。


「……こっちの世界にない製品は、普通に高くなると」


「そうそう」


さとるが頷く。


「こっちでは消耗品だけど、ない物で作られていれば、高価になる!」


「……なるほど」


私は竹箒を眺める。

たった一本の竹箒。地球なら、掃除道具。

でも、この世界では――材料からして珍しい。


「だったら……」


私は思いついた。


「竹をこっちに植えるか?」


「竹を?」


「そう」


竹そのものがないなら、竹を育てればいい。


竹が育つ。

↓

竹が手に入る。

↓

竹箒を作れる。

↓

竹ザルを作れる。

↓

竹製品を村で作れる。


「そうすれば、地球からずっと持ってくる必要もなくなるわね」


「確かに」


「しかも、竹製品なら村の人たちでも作れそう。問題は、こっちの気候で竹が育つかだけどね。それは試してみるしかないわね」


私は竹箒を置いた。


「うん。まずは竹を植えてみよう」


地球では、どこにでもあるような植物。

でも――この世界には存在しない。


なら。


「竹そのものが、この世界では新しい作物になるのかも」


なんだか、面白くなってきた。

私はさっそく、さとるに頼む。


「ねえ、竹の苗……って売ってる?」


「苗?」


「うん」


「竹って、どうやって増やすんだっけ?」


「……知らない」


「姉さんも知らないのかよ!」


「だって、勝手に生えてるイメージしかないんだもの!」


「じゃあ、調べるところからだな」


「そうね」


竹箒一本から始まった話が――まさか、竹を育てる話になるとは思わなかった。


でも。これもまた、商売の種になるかもしれない。

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