異世界の商品を売ってみる
小屋に戻った私は、テーブルの上に並べた商品を眺めていた。
巾着袋に、小さな布製の袋。
そして、村の女性たちが作った革製品。
「……」
こうして見ると、なかなか味がある。
地球で売れるのか。
以前に作ってもらった布製品が売れた。
でも今回は違う。
私がちゃんとお金を払って仕入れた商品だ。
「本当に売れるのかしら?」
「まあ、出してみないと分からないよ」
さとるが商品を一つ手に取る。
「じゃあ、写真撮るね」
「お願い」
さとるは商品の写真を撮り、ネットショップへ掲載していく。
「説明文は?」
「村で手作りされた物って感じで」
「了解」
カタカタカタ。
さとるが入力していく。
「値段は?」
「鑑定価格を参考にして……このくらい?」
「いいんじゃない?」
「じゃあ、出すよ」
「うん」
ポチッ。
「……」
販売開始。
「……」
「……」
「まあ、すぐには売れないわよね」
「そうだね」
二人で画面を見る。
「……」
「……」
「暇ね」
「まだ一分も経ってないよ」
「そうだった」
私は苦笑する。
さすがに、こんなに早く売れるわけがない。
そう思っていた。
その時――ピコン。
「ん?」
さとるがスマホを見る。
「姉さん」
「なに?」
「売れた」
「……え?」
「一個」
「……」
私は思わず画面を覗き込む。
確かに注文が入っている。
「本当に?」
「本当」
「……」
異世界の商品が地球で!
「売れた……」
なんだか不思議な気分だ。
村の女性が作った巾着袋。
それが、地球の誰かに選ばれた。
「すごいわね……」
「まだ一個だけだけどね」
「それでもよ!」
私は嬉しくなる。
そして――ピコン。
「……」
「また売れた」
「え?」
「二個目」
「ちょっと!」
さらに。
ピコン。
「三個目」
「……」
ピコン。
「四個目」
「…………」
私は画面を見つめる。
「売れてる……」
「売れてるね」
「結構売れるじゃない!」
「だから言ったじゃん。こっちの物、珍しいんだって」
「……」
確かに。一点物の手作り。
それに地球にはない雰囲気。
そう考えれば、欲しがる人がいてもおかしくない。
「……」
私はテーブルの上の商品を見る。
そして――。
「これ」
「ん?」
「村の人たちに、もっと作ってもらってもいいんじゃない?」
「確かに」
さとるも頷く。
「売れるなら、仕入れを増やした方がいいよね」
「そうよ」
「じゃあ、次に村へ行った時に頼む?」
「うん!」
私はすっかり乗り気になっていた。
村の人たちにも収入が入る。
私は商品を仕入れられる。
地球では商品が売れる。
「いいことばっかりじゃない!」
「……」
さとるが少し考える。
「でもさ」
「なに?」
「大量に作るとなると……」
「……」
私は止まる。
「どうしたの?」
「今作ってもらってるのって、村の人たちが暇な時間に作ってるんだよね?」
「そうね」
「だったら、注文を増やしたらどうなる?」
「……」
考えてみると農作業がある。家事もある。
子供の世話もある。その合間に布を織ったり、袋を作ったりしている。
「……」
「大量生産なんて無理じゃない?」
「……そうね」
売れるからといって、
「もっと作って!」
と簡単に言うわけにはいかない。
「むしろ……」
私は考える。
「今の作り方のまま、注文だけ増やしたら大変なことになるわね」
「うん」
「村の人たちが無理をして作るようになったら、本末転倒だし」
水車を作った時もそうだった。
私は、村の人たちが少しでも楽になるようにと思って動いてきた。
それなのに――商売が上手くいった結果、仕事が増えてしまったら意味がない。
「……」
私は商品を見る。
「これは、ちょっと考えないといけないわね」
「どうする?」
「まずは村で聞いてみる」
「何を?」
「どのくらいなら作れるのか」
無理なく作れる量。
そして、作るために必要な材料。
「それと……」
私はもう一つ気づく。
「もし本当に売れるなら、村の人たちが専門に作る仕事になってもいいのかもしれない」
「仕事にする?」
「うん」
今までは農業の片手間。でも、需要があるなら、それを仕事にする人がいてもいい。
「……」
異世界の商品を地球で売る。
最初はただの思いつきだった。
でも――。
「なんだか、本当に商売になってきたわね」
私は、売れた商品の画面を見ながら笑った。
ただし商売が大きくなればなるほど――。
次は『作る人』の問題が出てくる。
そんなことを、私はまだ知らなかった。




