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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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鑑定の意外な使い道

村へやって来た私は、さっそく女性たちのところへ向かった。


「こんにちはー!」


「あら、ちほさん。今日はどうしたんだい?」


「今日はお願いがあって来ました!」


「お願い?」


私は持ってきた巾着袋や布製の小物を並べる。


「これと同じような物を、いくつか作ってもらえませんか?」


「もちろんいいけど……」


「今回は、ちゃんとお金で買い取ります」


「お金で?」


女性たちが顔を見合わせる。


「はい!」


私は鑑定で確認した価格を基準に、買取価格を説明していく。


「このくらいで、どうでしょう?」


「そんなに貰っていいのかい?」


「もちろんです。作ってもらった物は、私が責任を持って引き取ります」


「本当かい?」


「はい!」


これまでのような物々交換ではない。

作った分だけ、きちんとお金になる。


「それじゃあ、作ってみるよ!」


「お願いします!」


「ある程度できたら、また来てもらえるのかい?」


「はい。出来上がった分を引き取りに来ます」


「分かったよ!」


こうして――。


「うむ。発注完了」


私は満足して村を後にした。

これなら、村の人たちも収入になる。

私も商品を仕入れられる。


「これで、お互いに損はないはず!」


……たぶん。


◇


小屋へ戻る途中。

ふと、あることが頭に浮かんだ。


「……ん?」


私は立ち止まる。


「ここの製品を鑑定したら、価格が分かった」


そう。巾着袋を鑑定した時には、仕入れ価格が表示された。


「だったら……」


私は鞄の中を見る。地球から持ってきた物。


「地球の製品を鑑定したら?」


試したことはない。


「……」


ちょっと気になる。私は履いていた靴を見る。


「これでいいか」


そして――。


「鑑定!」


すると、頭の中に表示が浮かんだ。


【地球製】

【スニーカー】

【価格:金貨三枚】


「…………」


私は固まった。


「なっ!?」


金貨三枚。


この世界の金貨がどの程度の価値なのかは、まだ正確には分からない。


でも――。


「鑑定できるんじゃん!」


思わず声が出る。そして、次の瞬間。


「……」


これまでのことを思い返す。

物々交換の価値。商品の仕入れ価格。

地球の商品をいくらで持っていけばいいのか。

村の人たちに何を渡せばいいのか。


「……」


私は頭を抱える。


「ていうか!」


もっと早く試せばよかった。


「だったら、今まで悩む必要なかったのに!!」


適正価格が分からない。

この世界の価値観が分からない。

何と交換すればいいのか分からない。

散々悩んできた。

それなのに――。


「鑑定すればよかっただけじゃん……」


私は空を見上げる。


「……私、馬鹿なのかしら?」


誰も答えてくれない。


いや。


「……」


たぶん、さとるなら言う。


『今さら気づいたの?』


「……」


絶対言う。

私はため息を吐きながら、再び小屋へ向かう。


でも――。


「待てよ」


これが分かったということは。

地球の商品をこの世界で売る場合も――。


「適正価格が分かるってことよね?」


そして、この世界の商品も。


「仕入れ価格が分かる」


「……」


なんだか急に、商売が簡単になった気がする。

ただし――。


「鑑定結果が、そのまま販売価格ってわけじゃないわよね」


利益も必要だ。運ぶ手間もある。

それに、村の人たちが無理なく買える価格でなければ意味がない。


「……」


便利だけど。やっぱり、最後に考えるのは私。


「まあ、それくらいは商人として考えないとね」


私は少し笑う。

異世界での商売。そのための武器を、また一つ見つけた気がした。

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