鑑定で決める仕入れ価格
思わぬ形で、現金を手に入れてしまった。
「……」
私は小屋に戻ってから、改めて手の中のお金を見る。
水車小屋の売上から貰った、私の取り分。
「さて……どうするか」
せっかく手に入ったお金だ。
このまましまっておくのも勿体ない。
「そうだ」
私は、村でもらった巾着袋を取り出す。
「序でに、仕入れをしていくか」
これから村の商品を地球で売る。
そうなると、ちゃんと仕入れ値を決めないといけない。
でも――。
「しかし……」
問題がある。
「適正な仕入れ価格が分からない……」
村の人たちに、
「これ、いくら?」
と聞けばいいのかもしれない。
でも、それだけでは判断できない。
安すぎれば村の人たちが損をする。
高すぎれば、今度は地球で売った時に利益が出ない。
「うーむ……」
私は巾着袋を眺める。
村の人たちが作った手作り品。
地球では、それなりの価値があるかもしれない。でも、この世界ではどうなのか。
「……」
その時。ふと思い出した。
「そうだ!」
私は立ち上がった。
「鑑定!」
この世界に来てから、何度も使っている能力。
今まで食べられるかどうかを確認したりするために使っていた。
でも――。
「これにも使えるんじゃない?」
私は巾着袋を手に持つ。
「鑑定!」
すると――。
【巾着袋】
【素材:布】
【品質:普通】
【仕入価格:10鉄貨】
「……」
私はしばらく黙る。
「……便利ね」
まさか、仕入れ価格まで出るとは思わなかった。
「ということは……」
別の布製品を手に取る。
「これも」
鑑定。
「……」
ちゃんと価格が表示される。
「これなら、村の人たちに無理な値段を提示することもないし」
私が勝手に、
「このくらいでいいかな?」
と決める必要もない。
鑑定が示した価格を基準にすればいい。
「……」
私は少し考える。
もちろん、鑑定の価格が絶対に正しいとは限らない。でも、少なくとも何も分からない私にとっては、かなりありがたい。
「だったら――」
仕入れの準備をしよう。
私は村でもらった布製品をいくつか確認する。
「これなら、ちゃんと買える」
そして――。
「女性陣に注文を入れてみよう」
今までのように、何となく物々交換するのではない。今回はちゃんとお金を払う。
作ってもらった商品を仕入れる。
「これで、村の人たちにも収入が入る」
そして、私も地球で販売する。
売れれば、また仕入れる。
「……」
少しずつだけど本当に、商売らしくなってきた。
「よし」
私は巾着袋を鞄にしまう。
「次に村へ行った時、注文してみよう」
これまで私が持ち込んでいたのは、地球の商品。
でも今度は――異世界の商品を、地球へ持って帰る。
なんだか立場が逆になったみたいで、ちょっと面白い。
「さて……どのくらい作ってもらおうかな?」
私は、次の仕入れを考えながら笑った。




