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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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思わぬところから入ったお金

「うーむ……」


私は小屋の中で腕を組んでいた。

昨日、さとると話したことが頭から離れない。


「お金を借りる……か」


今までは、物々交換でも何とかなっていた。

でも、これから村の商品を仕入れて、地球で売る。そう考えると、やっぱりお金があった方がいい。


「とはいえ……」


私はため息をつく。


「私みたいな、訳の分からない商人にお金を貸してくれるのかしら?」


そもそも、この世界で借金という仕組みがどうなっているのかすら知らない。


担保は?利息は?誰から借りる?


「……」


考えていても仕方がない。

とりあえず、村長さんに相談してみよう。


◇


私は村へ向かった。

そして、いつものように村長さんのところへ。


「うーむ……」


歩きながらも悩む。


「どう説明しようかしら」


異世界から来ました。お金を貸してください。

なんて言えるわけがない。


「……」


そんなことを考えているうちに、村長さんの家へ着いた。


「こんにちはー」


「ん? どうした、ちほさんや?」


村長さんが顔を出す。


「いや、そのー……」


どう切り出そう。

そう思っていると――。


「ちょうど良いところに来た」


「え?」


村長さんが奥から何かを持ってくる。


「渡すもんがあるのじゃ」


「渡す物?」


「うむ」


手渡されたのは――。


「……お金?」


「そうじゃ」


「え?」


私は思わず固まった。


「隣村へ水車小屋の連中が帰ってきてな」


「はい」


「無事に水車小屋も完成した」


「それは良かったです!」


「それでな」


村長さんが笑う。


「ほれ。ちほさんの取り分のお金じゃ」


「……」


私は手の中のお金を見る。


「私の……?」


「そうじゃ」


「これ、私が貰っていいんですか?」


「もちろんじゃ」


どうやら、隣村へ水車小屋を売った際の利益の一部らしい。


「……」


私は改めてお金を見る。


「現金……」


ついに私は、この世界で――。


「お金を手に入れた……」


今まで何度も村へ来た。

物々交換もした。野菜も貰った。布も貰った。

でも、ちゃんとした商売の対価として、お金を受け取るのは初めてだった。


「なんだか……」


ちょっと感動する。


「これで、ちゃんと買い物が出来るんですね」


「まあ、そういうことじゃな」


「ありがとうございます!」


私は大事にお金をしまう。

これなら――村の商品を仕入れることも出来る。


「……」


昨日まで悩んでいた。お金を借りられるか。

どうやって商売をするか。


でも――。


「……」


なんだか、問題が一つ解決したような。


いや。


「解決した……のかしら?」


まだよく分からない。

すると村長さんが首を傾げる。


「で、なんの用じゃ?」


「あ……」


そうだった。

私は相談に来たんだった。


「いや、その……」


お金を借りる相談をするつもりだった。

でも、目の前にはもうお金がある。


「……」


「ん?」


「いえ」


私は笑って誤魔化す。


「何でもないです……」


「そうか?」


「はい!」


私は頭を下げる。


「お金、ありがとうございます!」


「ほっほっほ。気にするでない」


村長さんと別れ、私は村を歩く。


「……」


手元には、この世界のお金。

これで村の商品を買える。


でも――。


「どうやって仕入れるのが一番いいのかしら?」


まだまだ考えることは残っている。

とはいえ。


「まあ……」


私は少しだけ笑った。


「最初の一歩は踏み出せたかな?」


今度は物々交換ではない。

お金を使った商売が始まるかもしれない。

そう思うと、少しだけワクワクしてきた。

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