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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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異世界の手作り品、地球で売ってみる

しかし――。


「……」


両脇いっぱいに抱えた布製品。

巾着袋。小さな袋。簡単な鞄のような物。


「……さすがに多いわね」


嬉しい。

嬉しいんだけど――。


「村に来たばっかりなのに、一度小屋へ戻るか」


これを抱えたまま村を歩き回るのは大変だ。

私は一度、小屋へ戻ることにした。


◇


「さとる!」


「なーに? 姉さん!」


小屋に戻るなり、テーブルの上へ布製品を並べていく。


「これ、見て」


「……」


さとるが目を丸くする。


「色々あるね!」


「そうなのよ」


巾着袋を手に取る。


「こんなのとか」


「へー!」


別の小さな袋も見せる。


「これも」


「本当だ!」


「いつの間にか、こんなに増えてたのよ」


最初は、ただ布を作るところから始まった。


それが今では――。


「村の人たちが自分たちで商品を作ってるのよね」


「いいじゃん!」


さとるも楽しそうだ。


「しかし……」


「何?」


「そんなに貰って、どうするの?」


「……」


私は大量の布製品を見る。


「さー?」


正直、私にも分からない。

自分で使うにしても限界がある。


「だからさ」


私は一つを手に取った。


「これも一部、ネットで売ってみてよ」


「ネットで?」


「うん」


「分かった!」


さとるはすぐにパソコンへ向かった。


「あ、そうそう!」


「何?」


「この前の布も売れたよ」


「そうなの!?」


思わず身を乗り出す。


「うん」


「本当に?」


「ちゃんと売れた」


「へー……」


あのゴワゴワした布。

現代のタオルと比べれば、明らかに質は違う。

それでも買ってくれる人がいた。


「どんな人が買ったの?」


「それは分からないけど、コメントが入ってた」


「何て?」


「海外の田舎で作ってる、お土産みたいって」


「……」


私は布製品を見る。


「なるほど」


言われてみれば――。


確かにそうかもしれない。

大量生産された物ではない。

機械で完璧に作られた物でもない。

一つ一つ、人の手で作られている。


「そう言われると、なんとなく分かる気がする」


「でしょ?」


「うん」


私は巾着袋を眺める。


「こっちの世界では普通でも、地球から見れば珍しい物なのかもね」


「そういうことじゃない?」


なるほど。物の価値というのは、使いやすさだけでは決まらない。


作られた場所。作り方。

そして、そこにある物語。そういうものも価値になるのかもしれない。


「じゃあ、これも売ってみよう」


「値段どうする?」


「うーん……」


私は少し考える。


「任せる!」


「え?」


「私には相場が分からないもの」


「まあ、そうだよね」


「売れそうな値段でお願い」


「了解!」


さとるが一つずつ写真を撮っていく。


「これは?」


「それもお願い」


「こっちは?」


「それも!」


次々と商品が並んでいく。


「……」


私はその様子を眺めながら思う。

異世界の村で作られた布製品。

それが、地球の誰かの手に渡る。


「なんか不思議ね」


「何が?」


「いや」


私は笑った。


「異世界のお土産を、地球で売ってるみたいで」


「確かに!」


二人で顔を見合わせる。


「まあ、実際はそんな簡単な話じゃないけどね」


「でも面白いじゃん!」


「……それもそうね」


私はまた一つ、布製品を手に取った。

村で生まれた物が、どこまで広がっていくのか。


それを考えると――


「ちょっと楽しみになってきたわね」


異世界と地球。思いもしなかったところで、少しずつ繋がり始めていた。

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