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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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種芋、異世界の土へ

翌日。


「届いたー!」


待っていた種芋たちが、無事に届いた。

じゃがいも、里芋、さつまいも。

それぞれ一袋ずつ。


「思ったより普通ね」


私は届いた袋を眺める。

まあ、種芋なんだから普通なのは当然なんだけど。


「さて……」


せっかく届いたんだし。


「早速、持って行きますか!」


私は種芋を背負い籠に入れる。

そしていつものように、村へ向かった。

村に着くと、まずは村長さんのところへ。


「村長さん、いますかー?」


「おや、ちほさん。今日も何か持ってきたのかね?」


「はい!」


私は鞄から種芋を取り出す。


「これは?」


「芋です!」


「……芋?」


「はい。地球……じゃなくて、私の故郷で食べられている作物です」


危ない。

また地球って言いそうになった。


「これを、この前の実験用の畑で育ててみたいんです」


「ほう……」


村長さんは種芋を手に取って、じっくり眺める。


「これは食べるものでは?」


「そのまま食べることもできますけど、今回は植えます」


「植えるのか」


「はい」


村長さんは少し考える。


「どのような作物なのかは分からんが……実験用の畑なら問題ないだろう」


「ありがとうございます!」


今回もあっさり許可が出た。

村長さん、本当に話が早い。


「この芋は、どう育てるんだ?」


「あー……」


私は少し考える。


「種類によって違いますけど……基本的には土に植えて、育つのを待ちます」


「それだけ?」


「……たぶん」


「たぶん?」


「私も実際に育てたことはないので」


「なるほど」


村長さんも納得したように頷いた。


「ならば、今回も試してみるしかないな」


「ですね!」


結局、今回も実験。

じゃがいも、里芋、さつまいもをそれぞれ分けて植えてもらうことになった。


「これで……」


私は畑を見る。

先日の種とは別に、今度は芋が土の中へ入っていく。


「結果が出るまで、また数ヶ月先ね」


「そうなるな」


「農業って、気長ですねぇ……」


水車なら数日から数週間で結果が見える。

でも作物は違う。

植えて。水をやって。育つのを待つ。

そして収穫して、初めて結果が分かる。


「ちゃんと育ってくれるといいんですけど」


「そればかりは、土地と天候次第だな」


「ですよね」


私は畑を眺める。


異世界の土。異世界の気候。異世界の作物。

そしてそこに、地球の芋を植える。


「……なんか不思議ですね」


「何がだね?」


「私の知っている芋が、この世界で育つかもしれないってことです」


「それは確かに面白いな」


村長さんも畑を見る。


「もし育てば、食べられる作物が増える」


「はい」


「そして、この土地に合うのであれば……村の新しい作物になる」


「そうですね」


「ならば、試す価値は十分にある」


「ですね!」


こうして、異世界の畑に新たな作物が植えられた。


じゃがいも。里芋。さつまいも。


どれか一つでも育ってくれればいい。


できれば全部。私はそんなことを考えながら、畑を眺めていた。


「……でも、結果が分かるのは数ヶ月後かぁ」


農業は、本当に気長だ。


「まあ、待つしかないか」


私はそう呟いて、村長さんのところを後にした。さて。次は何をしようかな。

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