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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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次は異世界で芋を育てよう

「……」


私はノートパソコンの画面を眺めていた。

ここ最近、暇があれば動画を検索している。


昔の農業。昔の生活。昔の産業。


「何か、いい物ないかなぁ……」


水車は上手くいった。

農具も少しずつ形になっている。

紡ぎ車も完成して、今は改良中。

種も村へ渡した。


「うーん……」


色々調べてみたけど、やっぱり難しい。

私が専門家じゃないというのもある。


知識として知っていることと、実際に作ることは全然違う。


「無難に、農作物系がいいかな?」


だったら――


「種類は、もう渡したから……」


今度は別の物。


「根菜類かな?」


土の中で育つ作物なら、畑の使い方も少し変えられるかもしれない。

それに、比較的育てやすい作物もある。


「ジャガイモ」


「里芋」


「さつまいも……」


この辺りなら、環境が違っても試してみる価値はあるかもしれない。


もちろん、本当に育つかどうかは分からない。


「でも……」


やってみなければ分からない。

これまでだってそうだった。


「よし」


私は鞄を覗き込む。


「さとるー!」


「はいはい!」


すぐに返事が返ってきた。


「ちょっとお願い!」


「何?」


「この三種類を注文して!」


「ん?」


「ジャガイモ、里芋、さつまいも!」


「んー……」


さとるが考える。


「芋類?」


「そうそう!」


私は頷く。


「今度は根菜類を持ち込もうかと思って」


「なるほどね!」


「この前渡した種とは、また違う作物だし」


「確かに」


「こっちでも育つか試してみたいの」


「分かった!」


さとるが答える。


「注文しとく!」


「お願いね!」


「しかし姉さん……」


「なに?」


「異世界で、どんどん農業詳しくなってない?」


「……」


私は少し考える。


「動画を見てるだけよ」


「それでも最初は鍬もまともに使えなかったじゃん」


「言わないでよ……」


「今は?」


「……」


「少しは慣れた?」


「まあ……ちょっとだけ」


最初に鍬を振った時は、本当に大変だった。

今でも大変だけど。


「でも、農業って面白いかもね」


「芋がちゃんと育ったらいいな」


「そうね」


私はまだ何もない畑を思い浮かべる。


地球の野菜。この世界の土。この世界の太陽。

そして――異世界の芋。


「……」


「ちゃんと育つのかしら?」


「それは植えてみないと分からないな」


「よね」


水車も。農具も。紡ぎ車も。

最初から成功したわけじゃない。


だから今回も――


「まずは、試してみよう」


そう決めた。

やがて届く三種類の芋が、この世界の農業にどんな変化をもたらすのか。


それはまだ、誰にも分からない。

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