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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者:


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次は糸を作る機械

「……」


私はノートパソコンの画面を眺めていた。

昨日から色々と調べて――


「分かった」


布を作るなら、まず糸が必要。

そして糸を作るなら、


「紡ぎ車が必要ね」


麻から繊維を取り出して、それを細くして糸にする。そのために使われるのが紡ぎ車。


「これなら、布を作るところまで一気に進められそう」


もちろん、糸を作っただけでは布にはならない。その先には織る作業も必要になる。


でも――まずは一歩ずつ。


「紡ぎ車かぁ……」


水車の時と違って、今回は模型がない。

もちろん、現物もない。


「仕方ない」


私はネットで見つけた資料を参考に、紡ぎ車の構造や写真を印刷する。


「これで分かるかな?」


実物を見たことがない私には、これでも十分とは言えない。でも、何もないよりはいい。


「よし」


資料をまとめて、村へ向かう。



「村長さん!」


「おお、ちほさんか」


私は村長さんのところへ行くなり、さっそく紙を広げる。


「早速なんですが、このような機械はありますか?」


「これは?」


村長さんが紙を見る。

そこに描かれているのは――


木製の紡ぎ車。


「これは、麻を紐……というか、糸にするための機械です」


「ほぅ」


村長さんがじっくり眺める。


「いや、ないな」


「やっぱり……」


「そもそも、こんな形の物は見たことがない」


「なるほど」


予想通り。でも、ここからが大事。


「これ、ここで作れますかね?」


私は少し不安になりながら聞く。

村長さんは紙を眺めながら考え込む。


「ふむ……」


しばらくして――


「木で作られておるのなら、可能かもしれんな」


「本当ですか?」


「詳しく見なければ何とも言えんが……」


村長さんが頷く。


「木工をしている者に相談してみよう」


「お願いします!」


「なら、わしから話しておくとするぞ」


「ありがとうございます!」


これで一歩進んだ。

……と思ったところで。


「じゃが」


「はい?」


村長さんが私を見る。


「その前に――」


「?」


「仕組みをわしに詳しく話しておくれ」


「あ……」


そうだった。水車の時もそうだった。

絵だけ見せても、作る人には分からない。


「はい!」


私は紙を広げ直す。


「まず、ここに麻の繊維をセットします」


「うむ」


「それを、この部分で引っ張りながら細くしていって――」


「ほう」


「車輪を回すことで、繊維を撚っていきます」


私は指で図を追いながら説明する。


「そうすると、細い繊維が一本の糸になっていきます」


「なるほど……」


村長さんが頷く。


「車輪を回すことで、繊維を撚るのか」


「はい」


「では、この車輪と軸の部分が重要になるわけじゃな」


「そうだと思います」


……たぶん。私は専門家じゃない。


でも、ネットで調べたことを一つずつ伝えていく。


「それと、この部分は糸を巻き取るためのものです」


「ふむ」


「実際に作る時は、村の職人さんにもっと詳しく見てもらった方がいいと思います」


「分かった」


村長さんは資料を受け取る。


「これなら、職人たちにも話ができそうじゃ」


「よかった」


「しかし……」


村長さんが少し笑う。


「今度は糸か」


「はい」


「水車の次は農具。その次は糸を作る機械……」


「……」


「お主は本当に、次から次へと面白い物を出してくるの」


「いやぁ……」


私は苦笑する。


「私も調べてるだけなんですけどね」


「それでもじゃ」


村長さんが資料を見る。


「これが上手くいけば、布まで自分たちで作れるようになるかもしれんな」


「そうですね」


その言葉を聞いて、私も期待が膨らんでくる。

今までは、布を商人から買っていた。

でも――もし村で糸を作り。

布を織ることができれば。


「村の中で、新しい仕事が増えるかもしれませんね」


「うむ」


村長さんが頷く。


「まずは、この紡ぎ車とやらを作ってみるとしよう」


「お願いします!」


私は笑顔で頭を下げた。

水車も、最初は小さな模型からだった。


でも今回は――紙に描かれた一枚の図から始まる。


果たして、村の職人たちはこの未知の道具を形にできるのだろうか。

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