次は糸を作る機械
「……」
私はノートパソコンの画面を眺めていた。
昨日から色々と調べて――
「分かった」
布を作るなら、まず糸が必要。
そして糸を作るなら、
「紡ぎ車が必要ね」
麻から繊維を取り出して、それを細くして糸にする。そのために使われるのが紡ぎ車。
「これなら、布を作るところまで一気に進められそう」
もちろん、糸を作っただけでは布にはならない。その先には織る作業も必要になる。
でも――まずは一歩ずつ。
「紡ぎ車かぁ……」
水車の時と違って、今回は模型がない。
もちろん、現物もない。
「仕方ない」
私はネットで見つけた資料を参考に、紡ぎ車の構造や写真を印刷する。
「これで分かるかな?」
実物を見たことがない私には、これでも十分とは言えない。でも、何もないよりはいい。
「よし」
資料をまとめて、村へ向かう。
◇
「村長さん!」
「おお、ちほさんか」
私は村長さんのところへ行くなり、さっそく紙を広げる。
「早速なんですが、このような機械はありますか?」
「これは?」
村長さんが紙を見る。
そこに描かれているのは――
木製の紡ぎ車。
「これは、麻を紐……というか、糸にするための機械です」
「ほぅ」
村長さんがじっくり眺める。
「いや、ないな」
「やっぱり……」
「そもそも、こんな形の物は見たことがない」
「なるほど」
予想通り。でも、ここからが大事。
「これ、ここで作れますかね?」
私は少し不安になりながら聞く。
村長さんは紙を眺めながら考え込む。
「ふむ……」
しばらくして――
「木で作られておるのなら、可能かもしれんな」
「本当ですか?」
「詳しく見なければ何とも言えんが……」
村長さんが頷く。
「木工をしている者に相談してみよう」
「お願いします!」
「なら、わしから話しておくとするぞ」
「ありがとうございます!」
これで一歩進んだ。
……と思ったところで。
「じゃが」
「はい?」
村長さんが私を見る。
「その前に――」
「?」
「仕組みをわしに詳しく話しておくれ」
「あ……」
そうだった。水車の時もそうだった。
絵だけ見せても、作る人には分からない。
「はい!」
私は紙を広げ直す。
「まず、ここに麻の繊維をセットします」
「うむ」
「それを、この部分で引っ張りながら細くしていって――」
「ほう」
「車輪を回すことで、繊維を撚っていきます」
私は指で図を追いながら説明する。
「そうすると、細い繊維が一本の糸になっていきます」
「なるほど……」
村長さんが頷く。
「車輪を回すことで、繊維を撚るのか」
「はい」
「では、この車輪と軸の部分が重要になるわけじゃな」
「そうだと思います」
……たぶん。私は専門家じゃない。
でも、ネットで調べたことを一つずつ伝えていく。
「それと、この部分は糸を巻き取るためのものです」
「ふむ」
「実際に作る時は、村の職人さんにもっと詳しく見てもらった方がいいと思います」
「分かった」
村長さんは資料を受け取る。
「これなら、職人たちにも話ができそうじゃ」
「よかった」
「しかし……」
村長さんが少し笑う。
「今度は糸か」
「はい」
「水車の次は農具。その次は糸を作る機械……」
「……」
「お主は本当に、次から次へと面白い物を出してくるの」
「いやぁ……」
私は苦笑する。
「私も調べてるだけなんですけどね」
「それでもじゃ」
村長さんが資料を見る。
「これが上手くいけば、布まで自分たちで作れるようになるかもしれんな」
「そうですね」
その言葉を聞いて、私も期待が膨らんでくる。
今までは、布を商人から買っていた。
でも――もし村で糸を作り。
布を織ることができれば。
「村の中で、新しい仕事が増えるかもしれませんね」
「うむ」
村長さんが頷く。
「まずは、この紡ぎ車とやらを作ってみるとしよう」
「お願いします!」
私は笑顔で頭を下げた。
水車も、最初は小さな模型からだった。
でも今回は――紙に描かれた一枚の図から始まる。
果たして、村の職人たちはこの未知の道具を形にできるのだろうか。




