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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者:


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村の物を村の商売に

私は村長さんの家を訪ねていた。


「わしに用とは?」


犬人の村長さんが、私を見る。


「何か困り事か?」


「いえいえ」


私は首を振る。


「困り事というより、相談ですかね」


「相談?」


「はい」


私は少し姿勢を正す。


「水車小屋を作ったじゃありませんか?」


「うむ」


「その水車小屋を、他の村とかへ売りませんか?」


「……水車小屋を?」


「はい」


私は続ける。


「それに、農具とかも便利な形へ作り直したじゃないですか?」


「そうじゃな」


「その農具も、他の村へ売り出せば、この村にも利益が落ちると思うんですが」


「……」


村長さんが腕を組む。

しばらく考えた後――


「ほぅ」


顔を上げた。


「ちほさんは、面白いことを考えるな」


「どうですか?」


私は少し緊張しながら聞く。


「その考え方は?」


「悪くない」


「本当ですか?」


「ああ」


村長さんは頷く。


「水車も農具も、すでに村で使っておる」


「はい」


「実際に便利になったことも分かっておる」


「ですよね」


「それを他の村へ売る……」


村長さんが考える。


「上手くいけば、村の収入になるな」


「そう思います」


「しかし――」


村長さんが私を見る。


「何故、そこまでしてくれる?」


「え?」


「お主には、この村から何かを買う必要もないだろう」


「……」


確かに。

私は地球の商品を持っている。

必要な物は鞄から出せる。

それなのに、なぜここまで村のことを考えるのか。


「いえ」


私は少し考えてから答える。


「私も、ここで商売をして気がついたんですが……」


「うむ」


「物々交換って、お互いが納得すれば交換できますよね?」


「そうじゃな」


「でも……」


私は苦笑する。


「そもそも基準が曖昧なんですよね」


「……」


「この商品と、これだけの野菜を交換していいのか」


「ふむ」


「もしかしたら、村の方が損してるかもしれませんし」


「ほぉ……」


私は続ける。


「私も、ここの物の価値がまだちゃんと分かってないんです」


「なるほどな」


村長さんが顎に手を当てる。


「つまり――」


「はい」


「分かりやすく、お金でやり取りをしたい」


「そういうことです」


私は頷く。


「でも……」


「うむ」


「私も、ここの商品の価値が計り切れないんですよね」


「……」


村長さんが少し笑う。


「ほっほっほ」


「?」


「そこまで考えてくれておるのか」


「いや……」


「ちほさんの考えは分かった」


村長さんが頷く。


「村の者へ話をしておこう」


「お願いします!」


私は頭を下げる。


「これで、少しでも村が豊かになればいいんですけど」


「それは、やってみなければ分からん」


「はい」


「じゃが――」


村長さんが笑う。


「悪い話ではない」


「……」


その言葉に、私は少し安心した。

村で作った物を、村の外へ売る。

売れれば、お金が村に入る。

そのお金で材料を買う。

職人に仕事が増える。

そしてまた、新しい物が作られる。


「……」


これならただ便利にするだけじゃない。

村そのものが豊かになっていく。

私はそんな未来を想像する。


「じゃあ、私はこれからも色々探してみますね」


「うむ」


「水車や農具だけじゃなくて、他にも売れそうな物を」


「期待しておるぞ」


「……」


期待。

その言葉に、少しだけプレッシャーを感じる。

でも――


「はい!」


私は笑って答えた。

異世界へ来てから始めた、ちょっとした商売。

それがいつの間にか――村を一つの生産地に変える計画へと動き始めていた。

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