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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者:


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異世界で売る

次の日。

私はまた村へ向かった。

目的は――


「キーホルダー、できてますかー?」


「出来てるわよー」


「ありがとうございます!」


昨日交換した分だけではなく、新しく作ってくれた物もある。

私は一つずつ受け取っていく。


「これも」


「はい!」


「こっちも」


「ありがとうございます!」


気がつけば、かなりの数になっていた。


「こんなに作ってくれたんですね」


「革の切れ端だからねぇ」


「それでも、助かります」


私はキーホルダーをリュックへ入れる。


「じゃあ、またお願いします」


「こっちも頼むよ」


「はい!」



小屋へ戻る。


「……」


さとるは実家にいなかった。

どこかへ出掛けているらしい。


「まあ、いいか」


私はリュックからキーホルダーを出す。

テーブルの上へ並べていく。


「一個……二個……」


「結構あるわね」


数十個。


「……」


これだけあれば、しばらくは売れるだろう。


「さとるが気づいたら、またネットで売り出すでしょ」


私はキーホルダーを眺める。

一つ一つ形が違う。

同じ物は一つとしてない。


「……」


こういうの、地球では逆に魅力になるかもしれない。


手作り。一点物。異世界の革。


「……」


なんだか面白くなってきた。


でも――


「物々交換って、思ったより面倒ね」


村へ行く。商品を見せる。相手が欲しいか確認する。何と交換するか決める。そして、また別の商品を探す。


「それに……」


一番難しいのが、


「価値観が違う」


ということ。

地球なら、だいたいの値段が分かる。

でも、この世界では分からない。


「このキーホルダー一個と、洗濯ばさみ何個が釣り合うの?」


「……」


分からない。


相手にとって価値のある物なら高く感じるし、必要ない物なら安く感じる。


「商売って難しいわね」


私は腕を組む。


「……」


だったら。


「ここの商人と取引する?」


村の商人。

この世界の相場を知っている人なら、私よりずっと上手く取引できる。


でも――


「いや」


私は首を振る。


「違うな」


私が直接商人と取引するより、


「村の人を通して取引する」


その方がいい。村の人が作った物。

村の人が売る。そして、その利益が村に残る。


「そうすれば、村にも何かしらプラスになるだろうし」


水車や農具と同じ。

私だけが儲かる形にはしたくない。


「そっちの方がいいと思う」


私はキーホルダーを一つ手に取る。


「……」


そして、ふと思う。


「そうだ」


農具もそうだ。水車もそう。この村には、作れる人がいる。木工ができる人。革を加工できる人。農具を作れる人。


「ここで作った物を売るってもらうのは、どう?」


私は一人で呟く。地球の知識を異世界で作り、他にも売ってもらう。異世界の物も地球で売る。


「……」


これなら、私が商品を持ち込む必要もない。

村の人たちが作った物を、地球へ持ってくる。

そして売る。


売れたお金を――村に還元する。


そうすれば。

村はもっと材料を買える。

職人も増える。作れる物も増える。


「……」


私は立ち上がる。


「生産拠点みたいにするのは?」


小さな村。

でも、ここでしか作れない物がある。


地球にはない素材。異世界にはない技術。


そして、この世界の職人たち。


「……」


考えれば考えるほど、面白くなってくる。

最初は、ただの暇つぶしだった。

異世界でのスローライフ。

村の人たちに便利な物を教える。

それだけだったはずなのに。


「まさか……」


私はテーブルいっぱいのキーホルダーを見る。


「異世界と地球を繋ぐ商売になる?」


まだ何も決まっていない。

でも――これが上手くいけば。

村の人たちにも仕事が生まれる。

私は商品を手に入れられる。

そして地球の誰かが、その商品を買ってくれる。


「……」


なんだか、ワクワクしてきた。


ただし――そのためには、まず村の人たちに話さなければならない。


「村長さんに相談してみよう」


私は次に村へ行く予定を考え始めた。

異世界での商売が――少しずつ、本当の商売になり始めていた。

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