異世界の商品、地球でも売れる?
「これでいいかな?」
私はリュックの中を確認する。
木製の洗濯ばさみ。
そして――洗濯板。
さとるが店の中から見つけてくれた物だ。
「そもそも、なんで店に洗濯板なんてあるの?」
さとるにも言われた。
「売れるのよ」
「本当に?」
「年に一回くらいだけど」
実際、注文が入る。
小さな子供がいる家庭から。プラスチック製の洗濯板だと、どうしてもしなって使いにくい。
だから昔ながらの木製の物が欲しい――
そんな注文だ。
「だから、一枚だけ在庫を持ってたのよね」
「なるほど」
「この二種類なら、村でも作れそうだし」
木製洗濯ばさみ。木製洗濯板。
どちらも特別な材料や技術が必要なわけではない。
「持って行っても、まあ無駄にはならないかな?」
それに――似たような物がすでにあっても、交換なら応じてくれるかもしれないし。売るだけが商売じゃない。
相手が欲しい物と、自分が持っている物を交換する。
それでも十分だ。
「よし」
私はリュックを背負った。
「行ってきます!」
◇
村へ到着。
今日は、前にキーホルダーを作ってくれている女性たちのところへ向かった。
「こんにちはー!」
「おや、また来たのかい」
「はい!」
私はリュックから木製洗濯ばさみを取り出す。
「これ、使ってみませんか?」
「何だい、これは?」
「洗濯物を干す時に使う道具です」
実際に布を挟んでみせる。
「こうやって――」
パチン。
「おお」
「なるほどね」
続いて、洗濯板も取り出す。
「こっちは洗濯板です」
「へー」
女性が手に取る。
「今使ってるのより便利そうね」
「そうだね」
別の女性も洗濯板を見る。
「この溝がいいのかい?」
「はい。ここに布を当てて、擦って洗います」
「なるほど……」
二つとも、反応は悪くない。
「……」
私は少し安心する。
「使えそうですか?」
「ああ」
「これは便利そうだね」
「よかった」
すでに何個か完成している革製キーホルダーを見せてもらう。
「じゃあ、これと交換してもらえます?」
「いいよ」
「これも?」
「もちろん」
こうして、木製洗濯ばさみと洗濯板は、いくつかの革製キーホルダーと交換された。
「ありがとうございます!」
「こちらこそ」
私はリュックを背負う。
「じゃあ、また来ますね」
「いつでもおいで」
「はい!」
◇
「さとる! 戻ってきた!」
小屋へ戻ると、鞄の向こうから声が聞こえた。
「はいよ!」
「交換できた?」
「できたわよ!」
私は今日交換してきたキーホルダーを見せる。
「おー」
「結構できてるでしょ?」
「だな」
さとるが一つ手に取る。
「あ、そうだ」
「ん?」
「さっきのキーホルダーさー」
「うん」
「ネットで売りに出したら、売れたよ」
「え!?」
私は思わず声を上げる。
「売れたの!?」
「うん」
「本当に!?」
「アンティークっぽいって」
「へぇ……」
「『こういうの好きです。届くのが楽しみです』ってコメントも貰えた」
「……」
私はキーホルダーを見る。
村の女性が、捨てるはずだった革の切れ端から作った物。
それが――地球で誰かに欲しいと思ってもらえた。
「いくらで売ったの?」
「八百円」
「八百円!?」
思ったより高い。
「まあまあ、いいかな?」
「十分じゃない?」
私はキーホルダーを眺める。
「……」
すると、さとるが言う。
「ねー、姉さん」
「なに?」
「何気に、そっちの物って珍しくて売れるんじゃない?」
「……」
私は村でもらった物を見る。
革製のキーホルダー。異世界の物。
「……そうね」
今まで私は、こっちの物を向こうへ持っていく。ことばかり考えていた。
でも――逆もできる。
異世界でしか手に入らない物。
この世界にはない素材。
この世界の職人が作った物。
それを地球へ持ち込めば――
「……」
商売になるかもしれない。
「異世界の商品を地球で売る……」
なんだか、とんでもない商売になりそうな予感がする。
そして私はまだ知らない。
この小さな革製キーホルダーが――異世界と地球を繋ぐ、もう一つの商売の始まりになることを。




