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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者:


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異世界の商品、地球でも売れる?

「これでいいかな?」


私はリュックの中を確認する。

木製の洗濯ばさみ。

そして――洗濯板。


さとるが店の中から見つけてくれた物だ。


「そもそも、なんで店に洗濯板なんてあるの?」


さとるにも言われた。


「売れるのよ」


「本当に?」


「年に一回くらいだけど」


実際、注文が入る。

小さな子供がいる家庭から。プラスチック製の洗濯板だと、どうしてもしなって使いにくい。


だから昔ながらの木製の物が欲しい――

そんな注文だ。


「だから、一枚だけ在庫を持ってたのよね」


「なるほど」


「この二種類なら、村でも作れそうだし」


木製洗濯ばさみ。木製洗濯板。

どちらも特別な材料や技術が必要なわけではない。


「持って行っても、まあ無駄にはならないかな?」


それに――似たような物がすでにあっても、交換なら応じてくれるかもしれないし。売るだけが商売じゃない。

相手が欲しい物と、自分が持っている物を交換する。


それでも十分だ。


「よし」


私はリュックを背負った。


「行ってきます!」



村へ到着。


今日は、前にキーホルダーを作ってくれている女性たちのところへ向かった。


「こんにちはー!」


「おや、また来たのかい」


「はい!」


私はリュックから木製洗濯ばさみを取り出す。


「これ、使ってみませんか?」


「何だい、これは?」


「洗濯物を干す時に使う道具です」


実際に布を挟んでみせる。


「こうやって――」


パチン。


「おお」


「なるほどね」


続いて、洗濯板も取り出す。


「こっちは洗濯板です」


「へー」


女性が手に取る。


「今使ってるのより便利そうね」


「そうだね」


別の女性も洗濯板を見る。


「この溝がいいのかい?」


「はい。ここに布を当てて、擦って洗います」


「なるほど……」


二つとも、反応は悪くない。


「……」


私は少し安心する。


「使えそうですか?」


「ああ」


「これは便利そうだね」


「よかった」


すでに何個か完成している革製キーホルダーを見せてもらう。


「じゃあ、これと交換してもらえます?」


「いいよ」


「これも?」


「もちろん」


こうして、木製洗濯ばさみと洗濯板は、いくつかの革製キーホルダーと交換された。


「ありがとうございます!」


「こちらこそ」


私はリュックを背負う。


「じゃあ、また来ますね」


「いつでもおいで」


「はい!」



「さとる! 戻ってきた!」


小屋へ戻ると、鞄の向こうから声が聞こえた。


「はいよ!」


「交換できた?」


「できたわよ!」


私は今日交換してきたキーホルダーを見せる。


「おー」


「結構できてるでしょ?」


「だな」


さとるが一つ手に取る。


「あ、そうだ」


「ん?」


「さっきのキーホルダーさー」


「うん」


「ネットで売りに出したら、売れたよ」


「え!?」


私は思わず声を上げる。


「売れたの!?」


「うん」


「本当に!?」


「アンティークっぽいって」


「へぇ……」


「『こういうの好きです。届くのが楽しみです』ってコメントも貰えた」


「……」


私はキーホルダーを見る。


村の女性が、捨てるはずだった革の切れ端から作った物。


それが――地球で誰かに欲しいと思ってもらえた。


「いくらで売ったの?」


「八百円」


「八百円!?」


思ったより高い。


「まあまあ、いいかな?」


「十分じゃない?」


私はキーホルダーを眺める。


「……」


すると、さとるが言う。


「ねー、姉さん」


「なに?」


「何気に、そっちの物って珍しくて売れるんじゃない?」


「……」


私は村でもらった物を見る。

革製のキーホルダー。異世界の物。


「……そうね」


今まで私は、こっちの物を向こうへ持っていく。ことばかり考えていた。


でも――逆もできる。


異世界でしか手に入らない物。

この世界にはない素材。

この世界の職人が作った物。

それを地球へ持ち込めば――


「……」


商売になるかもしれない。


「異世界の商品を地球で売る……」


なんだか、とんでもない商売になりそうな予感がする。


そして私はまだ知らない。


この小さな革製キーホルダーが――異世界と地球を繋ぐ、もう一つの商売の始まりになることを。

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