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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者:


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何かありますか?と聞かれても

最近、私のこともだいぶ村の人たちに知られてきた。

最初の頃は、


「何者だ?」


「どこから来た?」


そんな目で見られていたけど――今では村の中を歩いていても、特に変な目で見られることはない。


「こんにちは」


「おう」


軽く挨拶を交わす。


「……」


うん。

だいぶ馴染んできた気がする。


「ということで……」


今日は村の中を、ゆっくり見て回ることにした。



「うーむ……」


畑。家。井戸。家畜。薪。荷車。

村の中を歩きながら、じっくり観察する。


「昔の田舎っていうのは分かる」


日本の昔の農村を紹介する動画を見ていたから、何となく分かる。


ただ――


「分かるんだけど……」


やっぱり、村の人たちの生活は私が思っていたより安定している。


水車もできた。

農具も、今のところは何とかなっている。

食料も作っている。


「確かに……」


これなら、


「何か困ったことがありますか?」


と聞かれても、答えにくいよね。

そもそも本人たちからすれば、これが普通の生活なのだから。


「うーむ……」


見た感じ、特別に困っていることはなさそう。

だからこそ、私が何をすればいいのか分からない。

そんなことを考えながら歩いていると――


「おう! あんたか」


「ん?」


振り返る。


「あ」


そこにいたのは、以前水車小屋で指揮を取っていた男性だった。

職人たちの中でも中心になっていた、親方風の人だ。


「こんにちは」


「何やってんだ?」


「え?」


私は少し考える。


「うーん……村の中で散歩?」


「なんだそりゃ」


「ですよね」


自分でもそう思う。


「じゃあ、何だ?」


「何か役に立てることないかなーって」


「……」


親方さんが私を見る。


「変わった商人だな」


「よく言われます」


もう何度目だろう。


「何かあります?」


私が聞くと――


「何かありますって聞かれてもなぁ?」


「ですよねー」


二人で顔を見合わせる。


「……」


「……」


何も思いつかない。


「まあ、今のところは特にないな」


「そうですか」


「水車も動いてるし、農具の話も村長から聞いた」


「はい」


「十分助かってる」


「それなら良かったです」


私は笑う。

でも――


「……」


やっぱり、これで終わりなのだろうか?


水車。農具。


それ以外に、私ができることはないのか。


「……」


村を歩く。今までと同じ景色。

畑。家。井戸。家畜。

何も変わっていないように見える。


でも――


「……」


私は少しだけ立ち止まった。

本当に?何も変わっていない?

水車ができた。

農具もこれから変わるかもしれない。


なら、その先には――


「……」


まだ私が気づいていないものがあるのかもしれない。


「うーん……」


私は再び歩き出す。


「もう少し、ゆっくり見てみよう」


急いで答えを探す必要はない。

この村で暮らしている人たちを見ていれば――

いつか、


「これ、もっと楽にできるんじゃない?」


と思う瞬間が来るかもしれない。

今の私にできるのは――それを見逃さないことだった。

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