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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者:


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村長からのお礼

「はぁー……」


私は小屋の外で、水車小屋のある方向を眺めていた。


「水車小屋は、上手くいった」


完成した水車は、今も元気に回っている。

これで村の人たちの作業が、少しでも楽になればいい。


「……」


でも――


「他は何を教えればいいかなー」


水車が完成したからといって、私のやることがなくなったわけじゃない。


むしろ、ここからだ。


「また動画を見て、考えるかー」


現代には、昔の生活について解説している動画がいくらでもある。


農業。道具。保存食。衛生。


いろいろ調べてみよう。


「……」


でも、今回の水車作りで分かったこともある。


「知識だけあっても、厳しいこともあるのよね」


水車の仕組みを知っていても、自分では作れなかった。

職人さんたちが試行錯誤してくれたから、完成した。


「やっぱり、現地の人の力って大事ね」


そんなことを考えていると――


「グゥ……」


「……」



コンコンコン!


「ん?」


「……寝ちゃってたか」


いつの間にか昼寝をしていたらしい。


コンコンコン!


「はいはーい!」


私は慌てて起き上がる。


「ちょっと待っててください!」


扉を開ける。


「どうしました?」


そこに立っていたのは――


「おや。村長さん?」


犬人の村長さんだった。


「突然すまんな」


「いえいえ」


「今回の水車小屋の件じゃが……」


村長さんが少し笑う。


「ありがとうな」


「……」


「皆、さっそく使い始めとる」


「本当ですか?」


「ああ」


村長さんが頷く。


「今まで人の手でやっておった作業が、ずいぶん楽になった」


「それは良かった!」


思わず笑顔になる。

自分が教えたことが、実際に役立っている。

それだけで嬉しい。


「それにしても……」


村長さんが腕を組む。


「ふむ」


「どうしました?」


「何のお礼もしないというのもな……」


「え?」


私は慌てて手を振る。


「いえいえ!」


「しかし――」


「本当に気にしないでください」


私は笑う。


「私はただ、仕組みを説明しただけですから」


「じゃが……」


「水車を作ったのは、村の職人さんたちです」


「それでも、お主がおらねば始まらなかった」


「……」


そう言われると、少し照れる。


「でも、本当に大丈夫です」


私は頭を下げる。


「気になさらないでください」


村長さんはしばらく私を見る。


「……そうか」


「はい」


「ならば、今はそうしておこう」


「ありがとうございます」


村長さんは帰ろうとする。

そして、ふと振り返った。


「ただな」


「はい?」


「もし、また何か面白い物を思いついたら――」


「……」


「村に教えてくれると助かる」


「!」


私は思わず笑ってしまう。


「もちろんです!」


「そうか」


村長さんも笑う。


「では、またな」


「はい!」


村長さんを見送る。

扉を閉める。


「……」


私はしばらく、その場に立っていた。


「面白い物……か」


水車は成功した。

村長さんからも信頼してもらえた。


そして今――


「私が何を持ってくるのか、期待され始めてる?」


そう考えると、ちょっとだけプレッシャーを感じる。

でも――


「……悪くないかも」


私は机の上のノートパソコンを見る。


「次は何にしようかな?」


こうして私は、再び現代の知識を探し始めた。

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