水車、完成しました!
それから数日。
私は毎日のように村へ通っていた。
職人さんたちは、水車を作っては試し、壊しては直していた。
私もそのたびに、ネットで調べたことを伝えた。
そして――ある日のこと。
「完成したぞ!」
「え?」
職人さんの声に、私は振り返った。
「本当ですか!?」
「ああ!」
私は慌てて水車小屋へ向かう。
そして――
「おおー!」
思わず声が出た。
「ザッ! 水車小屋!」
目の前に、立派な木造の小屋が建っている。
その横には、水路。
そして――大きな水車が、勢いよく回っていた。
「すごい……」
模型とは全然違う。
実際に人が使うための、本物の水車。
「なんだそれ?」
職人さんが笑う。
「どうだ?」
「ちゃんと動いてるだろ?」
「ですね!」
私は水車を見上げる。
「問題なさそうです!」
「だろ?」
職人さんは嬉しそうに笑う。
「中も見てみろ」
「はい!」
小屋の中へ入る。
「おお……」
そこには大きな臼が設置されていた。
水車が回り、その力が軸へ伝わる。
そして――
「臼が動いてる!」
「これで穀物を挽けば粉になる」
「それだけじゃない」
職人さんが別の仕組みを指差す。
「こっちは突くこともできる」
「なるほど……」
人が杵を持って、何度も何度も突く必要がない。水の力が代わりにやってくれる。
「すごい……」
私はしばらく、その動きを眺めていた。
水が流れる。水車が回る。軸が回る。
臼が動く。
今まで、人がやっていた作業が――水の力で動いている。
「……」
胸の奥が、じんわりと熱くなった。
「ふふふ!」
職人さんが笑う。
「これもあんたのお陰だ!」
「私?」
「そうだ」
職人さんが水車を見る。
「これで村の奴らも、少し楽ができるはずだ!」
「……」
私は水車を見つめる。
「そうですね」
自然と笑みがこぼれる。
最初は、ただの小さな模型だった。
それを見せただけ。私は水車を作れなかった。
職人さんたちも最初は分からなかった。
何度も失敗した。
でも――みんなで考えて。
試して。直して。そして、完成した。
「……感慨深い」
思わず呟く。
「何だ?」
「いえ」
私は水車を見上げる。
「私が作ったわけじゃないのに……」
それでも。
「なんだか、嬉しいです」
「なら、あんたもこの村の仲間ってことだな」
「え?」
職人さんが笑う。
「これを最初に持ってきたのは、お前だからな」
「……」
私は少し照れながら笑った。
異世界に来てから、初めてだった。
自分がこの世界に何かを残したと、はっきり感じたのは。
小さな水車。
でも――村にとっては、大きな一歩だった。




