調べた知識を職人たちへ
「……よし」
私はノートを閉じた。
昨日から、ひたすら調べている。
水車の仕組み。水の流し方。水車の種類。
軸の固定方法。木材の強度。
そして、水車を実際に作る時に注意すること。
「……」
正直、全部理解できたわけじゃない。
ネットに書いてあることを読んで、
「なるほど」
と思っただけのものも多い。
「これ、本当に役に立つのかな……」
それでも、調べられることは調べた。
私はメモをポケットに入れる。
そして――
「よし!」
村へ向かった。
◇
「こんにちは!」
「おう、来たか」
水車小屋の予定地では、今日も職人さんたちが作業をしている。
昨日折れた軸は外されていた。
水車も一度ばらされている。
「どうですか?」
「うーむ……」
職人さんの一人が頭を掻く。
「まだ問題が多いな」
「やっぱり……」
私は少し不安になる。
「それで、昨日調べたことがあるんです」
「調べた?」
「はい」
私はメモを取り出す。
「水車について色々と調べてみました」
職人さんたちが集まってくる。
「まず、軸なんですが――」
私は自分なりに調べたことを説明する。
軸に掛かる力。水車の重さ。水が当たる位置。
水の流れ。
「それから、水車の羽根も……」
説明書には書かれていなかったことも伝える。
もちろん、私自身が専門家ではない。
「……なので、これが正しいかは分からないんですけど」
最後にそう付け加える。
すると――
「そうか」
一人の職人さんが腕を組む。
「なるほど」
別の職人さんが水車を見る。
「ならば、こうしよう」
「そうだな」
「試しにだ」
「この部分を変えてみるか」
「……」
私は黙って聞いている。
「水の当て方を変えれば……」
「軸もこちらなら耐えるかもしれん」
「羽根の角度も変えてみよう」
職人さんたちが次々と意見を出していく。
「……」
私は少し離れたところから、その様子を眺める。
「……少しは役に立ったかな?」
正直、不安でいっぱいだ。
私は水車職人じゃない。
ネットで調べただけ。その知識だって、この世界でそのまま使える保証はない。
「もし間違ってたらどうしよう……」
でも――職人さんたちの顔を見る。
さっきまで悩んでいた人たちが、今はあれこれ話し合っている。
「こっちを試そう」
「いや、まずはこちらだ」
「なら、両方作って比べてみればいい」
「それがいい」
「……」
何かを掴んだような顔をしている。
「大丈夫かな?」
私は小さく呟く。
すると、一人の職人さんが振り返った。
「助かったぞ」
「え?」
「何も分からんかったところに、考える材料が増えた」
「……」
「後は俺たちが試してみる」
「はい!」
思わず笑顔になる。
「頑張ってください!」
「おう!」
職人さんたちは、また作業へ戻っていく。
私はその様子を眺めながら、ふと思った。
「……」
もしかすると。
私が全部答えを知っている必要なんてないのかもしれない。
私は知っていることを伝える。
職人さんたちは、それを元に考える。
そして、この世界の材料や環境に合わせて作り直す。
「それでいいんだ」
水車はまだ完成していない。
でも――昨日より一歩。
確実に前へ進んでいる。
私は少しだけ自信を持って、水車を眺めた。




