↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/33

調べた知識を職人たちへ

「……よし」


私はノートを閉じた。

昨日から、ひたすら調べている。


水車の仕組み。水の流し方。水車の種類。

軸の固定方法。木材の強度。


そして、水車を実際に作る時に注意すること。


「……」


正直、全部理解できたわけじゃない。

ネットに書いてあることを読んで、


「なるほど」


と思っただけのものも多い。


「これ、本当に役に立つのかな……」


それでも、調べられることは調べた。

私はメモをポケットに入れる。


そして――


「よし!」


村へ向かった。



「こんにちは!」


「おう、来たか」


水車小屋の予定地では、今日も職人さんたちが作業をしている。


昨日折れた軸は外されていた。

水車も一度ばらされている。


「どうですか?」


「うーむ……」


職人さんの一人が頭を掻く。


「まだ問題が多いな」


「やっぱり……」


私は少し不安になる。


「それで、昨日調べたことがあるんです」


「調べた?」


「はい」


私はメモを取り出す。


「水車について色々と調べてみました」


職人さんたちが集まってくる。


「まず、軸なんですが――」


私は自分なりに調べたことを説明する。


軸に掛かる力。水車の重さ。水が当たる位置。

水の流れ。


「それから、水車の羽根も……」


説明書には書かれていなかったことも伝える。

もちろん、私自身が専門家ではない。


「……なので、これが正しいかは分からないんですけど」


最後にそう付け加える。

すると――


「そうか」


一人の職人さんが腕を組む。


「なるほど」


別の職人さんが水車を見る。


「ならば、こうしよう」


「そうだな」


「試しにだ」


「この部分を変えてみるか」


「……」


私は黙って聞いている。


「水の当て方を変えれば……」


「軸もこちらなら耐えるかもしれん」


「羽根の角度も変えてみよう」


職人さんたちが次々と意見を出していく。


「……」


私は少し離れたところから、その様子を眺める。


「……少しは役に立ったかな?」


正直、不安でいっぱいだ。

私は水車職人じゃない。

ネットで調べただけ。その知識だって、この世界でそのまま使える保証はない。


「もし間違ってたらどうしよう……」


でも――職人さんたちの顔を見る。


さっきまで悩んでいた人たちが、今はあれこれ話し合っている。


「こっちを試そう」


「いや、まずはこちらだ」


「なら、両方作って比べてみればいい」


「それがいい」


「……」


何かを掴んだような顔をしている。


「大丈夫かな?」


私は小さく呟く。


すると、一人の職人さんが振り返った。


「助かったぞ」


「え?」


「何も分からんかったところに、考える材料が増えた」


「……」


「後は俺たちが試してみる」


「はい!」


思わず笑顔になる。


「頑張ってください!」


「おう!」


職人さんたちは、また作業へ戻っていく。

私はその様子を眺めながら、ふと思った。


「……」


もしかすると。

私が全部答えを知っている必要なんてないのかもしれない。


私は知っていることを伝える。

職人さんたちは、それを元に考える。


そして、この世界の材料や環境に合わせて作り直す。


「それでいいんだ」


水車はまだ完成していない。


でも――昨日より一歩。


確実に前へ進んでいる。

私は少しだけ自信を持って、水車を眺めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。