↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/37

村長は犬人でした

「美味い!」


シンスちゃんが、テーブルの上にあるパンを頬張る。


「この四角いパン!」


「柔らかいなぁ」


一緒に来ていた男性も、パンを手に取って眺めている。


「どうやって作ったんだ?」


「……」


しまった。

これも全部、元の世界から持ち込んだ物。

この世界のパンとは違うのだろう。


「細かい話は後で!」


私は二人を見る。


「まずは腹ごしらえよ!」


「お、おう!」


「はーい!」


二人とも、再びパンを食べ始める。


「……」


私はその様子を眺めながら考える。

そうか。この世界の人たちからすれば――


「パン一つをとっても、違う物なのか……」


私にとっては、いつもの食パン。

でも、この世界では珍しい食べ物になる。


「ここの食事事情も知らないとダメね……」


何が普通なのか。

何が珍しいのか。

何が高価なのか。


「うーん……」


これから商売や技術を持ち込むなら、その辺も注意しないといけない。


「ごちそうさまー!」


シンスちゃんの声で我に返る。


「さて」


男性が立ち上がる。


「準備してくれ。外で待ってるから」


「分かったわ」


二人が小屋の外へ出ていく。

私は周囲を確認する。


「特に持っていく物はないかしらね……」


昨日、模型は村長さんのところへ渡してある様だし。

だから今日は、模型を見ながら説明すればいい。


「説明書もあるから、それでいいわね」


私は小屋を出る。

そして――



「この方が村長さん?」


私は目の前の人物を見る。


「犬人間!?」


思わず声に出そうになる。

頭には犬のような耳。

顔立ちも、昨日まで会った人たちとは少し違う。


でも――


「わざわざすまんな」


「いえいえ!」


私は慌てて頭を下げる。


「こちらこそ、お時間をいただいてありがとうございます」


「早速だが」


村長さんが机の上に置かれた模型を見る。


「この模型という物の水車じゃが……」


「はい」


「説明してもらえるか?」


「もちろんです!」


私は水車の模型を指差す。


「まず、水の流れをこの部分に当てます」


「うむ」


「そうすると、水の力で水車が回ります」


私は模型を実際に動かして見せる。


「この回転を軸に伝えて――」


「ほう」


「その力を利用して、粉を挽いたり、何かを突いたりできます」


村長さんが模型をじっと見る。


「なるほどな」


「人がずっと力を加える必要がありません」


「確かに便利そうじゃ」


村長さんは頷く。


「しかし……」


私を見る。


「お主は作れないという話だったな?」


「そうなんです」


私は苦笑する。


「この模型くらいなら組み立てられますけど……」


「うむ」


「流石に大きな物となると、私では作れません」


「確かにそうか……」


村長さんは説明書を手に取る。


「この説明書という物を見ながら作らないといかんのか」


「はい」


「ふむ……」


村長さんが考え込む。


「木工が出来るのが村にいるから、そいつらに……」


「そうですね」


私は頷く。


「少なくとも、木の扱いができる方でないと難しいと思います」


「ふむ」


村長さんは再び模型を見る。


「それと――」


少し間を置いてから聞いてくる。


「金も要らぬと聞いておるが……」


「はい」


私は頷く。


「構いません」


「……」


村長さんが少し驚いたような顔をする。


「本当に?」


「はい」


水車が完成すれば、この村の人たちの役に立つ。それなら、模型一つくらい問題ない。


「そうか……」


村長さんは模型を手に取る。


「ならば、少し考えさせてもらおう」


「はい!」


こうして――異世界の村に、水車という新しい技術の可能性が持ち込まれた。


私はまだ知らない。


この小さな模型が、村の中で思った以上の騒ぎを起こすことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。