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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者:


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20/33

異世界の村を観察します

「……」


私はノートパソコンの画面を見つめていた。

昨日から、戦国時代や昔の農村について調べている。


「動画を見た感じだと……」


やっぱり、農業関係の道具がいいかな?

村の人たちの生活を見る限り、農業がかなり重要だ。


だったら――


「農業系の道具を、可能な限りこっちで再現する?」


鍬。鋤。鎌。ふるい。農作業に使う道具。


「でも……」


問題は材料。


「流石に鉄というか……鍛冶になるのかな?」


道具を作るなら鉄が必要になる。

鉄を加工するなら鍛冶屋。


「……」


私は腕を組む。


「そもそも、この村に鍛冶屋っているの?」


昨日はそこまで見ていない。


「うーん……」


私がまだ村のことを知らなすぎる。

いきなり、


「農業を改善しましょう!」


なんて言っても、何を改善すればいいのか分からない。


「また、明日にでも行くか」


まずは観察!それから考えよう。



翌日。


「さて」


昨日とほぼ同じ物をリュックへ詰める。


マッチ。蝋燭。紙。塩。砂糖。胡椒。

醤油。味噌。油。


「これくらいあればいいかな」


売り切ることが目的じゃない。

今日は村を見ることが目的だ。

私はリュックを背負い、村へ向かった。



村に入る。すると――


「あ」


昨日、話した人がこちらを見た。

そして、軽く会釈してくる。


「こんにちは」


私も会釈を返す。

別の人も。


「……」


また会釈。


「……」


さらに会釈。


「……」


どうやら、顔を覚えられたらしい。

まあ――


「突然やって来て、商人ですって言って、こんな変な服装してたら……」


覚えられるのも当然か。

私は苦笑する。


「まあ、いいか」


敵意はない。

むしろ、少しずつ警戒が解けてきている気がする。


「さて……」


今日は商売よりも、ゆっくり観察していこう。

村の中を歩く。

畑。家。井戸。家畜。

そして――


「あ」


畑の向こうで、誰かが鍬を振っている。


「……」


ザクッ。ザクッ。


土を耕している。


「やっぱり鍬を使うのね」


自分でも使って、結構大変だった。


「ということは……」


私は鍬を眺める。


「鉄はあるってことか」


鍬の先端は金属製。

おそらく鉄だ。


「じゃあ、鍛冶屋はいるのかな?」


村の中を見回す。煙突のある建物。

金床。作業場。

それらしい場所は――


「……見当たらない」


村の外にあるのかもしれない。

あるいは、別の町から買っているのか。


「これは聞いてみないと分からないな」


さらに歩く。


「水車は……」


見当たらない。

でも――


「小川は流れている」


水はある。なら、水車を作れる可能性もある?

でも、水車が必要なのかどうかすら分からない。


「うーむ……」


考えれば考えるほど、分からないことが増えていく。


「それなら……」


私は村を見渡す。


「困っていることがあるかどうか、聞いてみる?」


「……」


かなり怪しい商人では?

いきなり、


「何か困ってることありませんか?」


なんて聞く商人。普通に考えたら怪しい。

でも――


「いや」


私は少し考える。


「それを聞いて、持ってくる」


これならどうだろう。

例えば、


「こんな道具が欲しい」


と言われる。

一度、戻り。

店やネットで探す。

鞄を通して持ってくる。


「……」


これなら。


「何でも持ってくる商人」


という立ち位置にできる。

遠くの町から珍しい商品を仕入れてくる商人。

そういう設定なら、変に説明する必要もない。


「……いいかも」


ただし、あまり便利すぎると思われても困る。

それに、何でも無料で持ってくるわけにもいかない。


商売なのだから。


「ちゃんと交換する」


それが大事。


「よし」


方針が決まった。

まずは村の人に聞いてみよう。


「何か、欲しい物や困っていることはありませんか?」


そして――


「私なら、遠くから仕入れてくることができます」


これなら商人として自然だ。


「……」


私はリュックを背負い直す。


「さて」


誰に聞こうか。村の様子をもう一度見回す。

農作業をしている人。

家畜の世話をしている人。

井戸から水を汲んでいる人。

薪を運んでいる人。


「……」


生活を見ていると、少しずつ気になることが出てくる。

でも、それを勝手に決めつけてはいけない。


「困っていることは、本人に聞く」


商店をやってきた経験が、ここでも役に立ちそうだった。

私は村の人に声を掛けるため、一歩踏み出した。

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