異世界の村を観察します
「……」
私はノートパソコンの画面を見つめていた。
昨日から、戦国時代や昔の農村について調べている。
「動画を見た感じだと……」
やっぱり、農業関係の道具がいいかな?
村の人たちの生活を見る限り、農業がかなり重要だ。
だったら――
「農業系の道具を、可能な限りこっちで再現する?」
鍬。鋤。鎌。ふるい。農作業に使う道具。
「でも……」
問題は材料。
「流石に鉄というか……鍛冶になるのかな?」
道具を作るなら鉄が必要になる。
鉄を加工するなら鍛冶屋。
「……」
私は腕を組む。
「そもそも、この村に鍛冶屋っているの?」
昨日はそこまで見ていない。
「うーん……」
私がまだ村のことを知らなすぎる。
いきなり、
「農業を改善しましょう!」
なんて言っても、何を改善すればいいのか分からない。
「また、明日にでも行くか」
まずは観察!それから考えよう。
◇
翌日。
「さて」
昨日とほぼ同じ物をリュックへ詰める。
マッチ。蝋燭。紙。塩。砂糖。胡椒。
醤油。味噌。油。
「これくらいあればいいかな」
売り切ることが目的じゃない。
今日は村を見ることが目的だ。
私はリュックを背負い、村へ向かった。
◇
村に入る。すると――
「あ」
昨日、話した人がこちらを見た。
そして、軽く会釈してくる。
「こんにちは」
私も会釈を返す。
別の人も。
「……」
また会釈。
「……」
さらに会釈。
「……」
どうやら、顔を覚えられたらしい。
まあ――
「突然やって来て、商人ですって言って、こんな変な服装してたら……」
覚えられるのも当然か。
私は苦笑する。
「まあ、いいか」
敵意はない。
むしろ、少しずつ警戒が解けてきている気がする。
「さて……」
今日は商売よりも、ゆっくり観察していこう。
村の中を歩く。
畑。家。井戸。家畜。
そして――
「あ」
畑の向こうで、誰かが鍬を振っている。
「……」
ザクッ。ザクッ。
土を耕している。
「やっぱり鍬を使うのね」
自分でも使って、結構大変だった。
「ということは……」
私は鍬を眺める。
「鉄はあるってことか」
鍬の先端は金属製。
おそらく鉄だ。
「じゃあ、鍛冶屋はいるのかな?」
村の中を見回す。煙突のある建物。
金床。作業場。
それらしい場所は――
「……見当たらない」
村の外にあるのかもしれない。
あるいは、別の町から買っているのか。
「これは聞いてみないと分からないな」
さらに歩く。
「水車は……」
見当たらない。
でも――
「小川は流れている」
水はある。なら、水車を作れる可能性もある?
でも、水車が必要なのかどうかすら分からない。
「うーむ……」
考えれば考えるほど、分からないことが増えていく。
「それなら……」
私は村を見渡す。
「困っていることがあるかどうか、聞いてみる?」
「……」
かなり怪しい商人では?
いきなり、
「何か困ってることありませんか?」
なんて聞く商人。普通に考えたら怪しい。
でも――
「いや」
私は少し考える。
「それを聞いて、持ってくる」
これならどうだろう。
例えば、
「こんな道具が欲しい」
と言われる。
↓
一度、戻り。
↓
店やネットで探す。
↓
鞄を通して持ってくる。
「……」
これなら。
「何でも持ってくる商人」
という立ち位置にできる。
遠くの町から珍しい商品を仕入れてくる商人。
そういう設定なら、変に説明する必要もない。
「……いいかも」
ただし、あまり便利すぎると思われても困る。
それに、何でも無料で持ってくるわけにもいかない。
商売なのだから。
「ちゃんと交換する」
それが大事。
「よし」
方針が決まった。
まずは村の人に聞いてみよう。
「何か、欲しい物や困っていることはありませんか?」
そして――
「私なら、遠くから仕入れてくることができます」
これなら商人として自然だ。
「……」
私はリュックを背負い直す。
「さて」
誰に聞こうか。村の様子をもう一度見回す。
農作業をしている人。
家畜の世話をしている人。
井戸から水を汲んでいる人。
薪を運んでいる人。
「……」
生活を見ていると、少しずつ気になることが出てくる。
でも、それを勝手に決めつけてはいけない。
「困っていることは、本人に聞く」
商店をやってきた経験が、ここでも役に立ちそうだった。
私は村の人に声を掛けるため、一歩踏み出した。




