異世界を知るには、まず勉強?
「うーん……」
私は今日も机に向かっていた。
さとるの言っていたことを思い出す。
『便利な物を交換するのはいいけど、姉さんが戻ったら手に入らなくなるよ?』
確かに、その通りだ。
マッチも。紙も。調味料も。
今は鞄を通して持ってこられる。
でも、私が元の世界へ戻ったら?
「……」
その時、村の人たちはどうなるんだろう。
「確かに、さとるが言うことももっともね」
私は腕を組む。
「でも……」
問題はそこから。
「何を?」
何を教えればいい?
「って言われると、困るわね」
そもそも――
「何が必要なのかも知らない」
私は今日の村を思い出す。
畑。家。井戸。家畜。道。村人。
「……」
見ただけでは分からない。何が足りないのか。何に困っているのか。何を改善できるのか。
「やっぱり……」
私は立ち上がる。
「また村へ行って聞いてみたり、もっと観察しないといけないかな」
実際に住んでいる人に聞くのが一番早い。
「何に困ってますか?」
と聞けばいい。
……いや。それだけでは怪しまれるか。
「うーむ」
異世界に来てから、考えることが増えた気がする。
「それに……」
私はノートパソコンを見る。
「私も少し知識をつけないとまずいか」
商店を経営していたとはいえ、農業や昔の生活について詳しいわけではない。
あの村を見る限り――
「戦国時代……かな?」
もちろん、日本の戦国時代とは違う。
でも、生活水準はかなり近そうだ。
なら――
「戦国時代系のネット動画を見ればいいかな」
さっそく検索。
『戦国時代 農村生活』
『戦国時代 農業』
『昔の農具』
『江戸時代 生活』
「……」
動画を再生する。
「へぇ……」
知らなかったことが次々と出てくる。
「なるほど……」
別の動画。
「こういう方法があるのか」
さらに別の動画。
「これなら村でも使えるかも」
そして――
「……」
気が付けば、夕方。
「……」
さらに動画。
「……」
夜。
「……」
私はノートパソコンの画面を見つめる。
「……」
そして、ふと我に返った。
「……あ」
「またやってる」
これ――
「いつもの休みの日と同じじゃない?」
朝起きて。動画を見て。お昼を食べて。
また動画を見て。気づけば一日が終わる。
「……」
異世界に来ても、結局こうなるのか。
「まあ……」
私は苦笑する。
「いいか」
勉強はした。たぶん。
「少しは知識も増えたし」
今日はこれでいい。
「さて」
私は立ち上がる。
今日、村でもらった野菜を見る。
「交換した野菜でも食べて寝るかー」
鑑定をする。
「鑑定」
【食用可能】
「よし」
鍋を取り出す。異世界の野菜。異世界の水。
そして、元の世界から持ってきた調味料。
「……」
少し不思議な組み合わせ。
でも――
「いただきます」
一口食べる。
「……美味しい」
知らない世界の野菜なのに、どこか懐かしい味がする。
私はゆっくり食事をしながら考える。
明日は――もう少し村のことを知ろう。
そして、いつか。この世界の人たちが、自分たちの力だけで豊かになれるような方法を見つけたい。
「……まあ、明日考えればいいか」
今日はもう寝よう。
こうして異世界生活の一日は、静かに終わっていった。




