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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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換気設備の試作品!風は通るのか?

「……それにしても」


私は、籠に残った資料を見下ろした。

換気の資料を持ってきただけなのに、また仕事が増えた気がする。


いや、実際に増えている。

間違いなく増えている。


「私、いつになったらゆっくりできるんだろう……」


ぽつりと呟くと、近くにいた職人が不思議そうに首を傾げた。


「ちほ殿、何かおっしゃいましたか?」


「いえ! 何でもありません!」


危ない危ない。

聞かれたら、また何か頼まれそうだ。


でも、職人たちが楽しそうに話し合っている姿を見ると、悪い気はしない。


私が持ってきた知識が、村の人たちの工夫によって、新しい技術に変わっていく。


それこそが、私の目指している村の発展なのだから。


「ちほ殿、試作品ができましたぞ!」


朝から村の職人たちが、嬉しそうに声をかけてきた。


「えっ、もうできたんですか?」


「簡単なものから作ってみました。まずは実際に使ってみなければ、分かりませんからな」


そう言って見せてくれたのは、木材で作った枠に竹を組み合わせた換気口だった。


さらに、竹をつないで作った筒のようなものもある。


「おお……!」


思わず声が出た。

前に私が渡した資料を参考にしているのは分かる。


でも、形はそのままではない。


村で手に入る木材や竹を使い、職人たちが自分たちで工夫して作ったものなのだ。


「こちらが空気の取り入れ口。こちらが上部に設ける空気の出口です」


「なるほど。下から入れて、上から逃がすんですね」


「ええ。それから、こちらは竹の筒を使ったものです。上に伸ばせば、空気が抜けやすくなるのではないかと考えました」


「いいですね!」


私は感心しながら、試作品を眺めた。

前世の知識を参考にしたとはいえ、実際に形にするのは職人たちだ。


こういうところは、本当に頼もしい。


「では、さっそく試してみましょう!」


「そうしましょう!」


職人たちと一緒に、村にある倉庫へ向かった。

まずは、壁の下側に空気の取り入れ口を設置した。


木枠を壁に取り付け、竹を重ねた部分が外側を向くようにする。

これなら、多少の雨なら吹き込みにくいはずだ。


次に、反対側の壁の上部に空気の出口を取り付けた。こちらには、雨が直接入りにくいように、木材と竹で作った覆いが付いている。


「これで準備はできましたな」


「では、風が通るか確かめてみましょう」


職人の一人が、薄く削った木の皮を持ってきた。


「これを使ってみてはどうでしょう?」


なるほど。空気の流れは目に見えない。

でも、軽いものを使えば、風の動きを確認できる。


「いい考えですね!」


木の皮を換気口の内側に近づけてみる。


すると……。


ふわり。木の皮が、わずかに揺れた。


「おおっ!」


「動きましたぞ!」


「風が入ってきている!」


職人たちが歓声を上げた。

いやいや、ちょっと待って。

まだ入口だけだからね。


大切なのは、入ってきた空気が建物の中を通り、外へ抜けていくかどうかだ。


私は倉庫の中へ入り、上部の空気の出口を確認した。こちらにも木の皮を近づける。

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