スマホで調べよう!新拠点に必要な設備!
異世界でWi-Fiが使えるようになった。
これで、一つ問題解決!
「いやー、便利になったね!」
私はスマホを手に、満足げに頷いた。
今までは、地球側の情報を調べようと思ったら、小屋まで戻りパソコンを使う必要があった。
でも、これからは違う。
異世界にいながら、スマホで調べ物ができるのだ!
「さて、せっかく使えるようになったんだから、活用しないとね!」
「ところで、さとる。ちょっと相談があるんだけど」
「今度は何?」
「新しい家を建てることになったの!」
「……うん。知ってる」
「倉庫と住居と店が一緒になった建物ね」
「うん」
「だから、建物の設備とか収納方法とか、いろいろ調べたいの!」
「なるほど。それで、わざわざこっちに来たんだ?」
「そう! 基本は実家のお店!」
スマホが使えるようになったとはいえ、資料を印刷したり、必要な物を確認したりするなら、実家の設備を基本に。
「じゃあ、何を調べるの?」
「まずは換気! それから湿気対策と、倉庫の棚。あと、店の商品を並べる方法もかな」
「結構あるね」
「建物ができてから、あれが足りない、これが不便ってなるのは嫌だからね!」
「それは確かに」
私はさっそく、スマホで検索を始めた。
「えーっと……倉庫の換気方法……」
画面を見ながら、気になる情報を探していく。
倉庫では、空気がこもらないように換気することが大切らしい。
ただし、窓を大きくすればいいというものでもない。
雨が吹き込んだり、虫が入ったりする可能性もある。
保管する物によって、適した環境も違う。
木材なら、湿気がこもらないように風通しを確保したい。
一方、乾燥食品は、湿気や虫から守らなければならない。
「ふむふむ……。やっぱり、保管場所を分けるのは正解だったね」
私は納得しながら、必要な情報をメモしていく。
次は、湿気対策。換気扇がつけられればなー。
床を地面から少し高くする方法や、建物の周囲に水がたまらないようにする工夫などが見つかった。
「なるほど。床を高くするだけじゃなくて、地面の水はけも考えないといけないんだ」
建物の下に湿気がたまれば、床や保管した商品にも影響が出る。
屋根の形や軒の長さも、雨対策では重要になりそうだ。
「これ、職人さんたちに見せたら参考になるかも!」
私は画面の情報を確認しながら、必要な部分を印刷していく。
もちろん、地球の建物と、この世界の建物では条件が違う。
使える材料も違うし、道具や建築技術にも差がある。
そのまま真似することはできない。
でも、考え方を知るだけでも役に立つはずだ。
「よし、次は棚!」
倉庫の棚についても調べてみる。
商品を種類ごとに分けて保管する方法。
重い物を下に置き、軽い物を上に置く工夫。
奥に入れた物も取り出しやすくする配置。
同じ商品をまとめて管理する方法。
「おお……これ、商品管理にも使えるね!」
商品をただ積み重ねておくだけでは、何がどこにあるのか分からなくなってしまう。
棚に置き場所を決めておけば、在庫の確認も簡単になる。
それに、店の商品を並べるときにも応用できそうだ。
「売り物を並べる棚と、倉庫に保管する棚は別に考えた方がいいかな?」
私は少し考えた。
店の棚は、お客さんが商品を見やすいことが大切。
倉庫の棚は、商品を安全に保管して、出し入れしやすいことが大切だ。
同じ棚でも、目的が違えば設計も変わってくる。
「なるほどねぇ……。これは面白い!」
気がつけば、私はすっかり調べ物に夢中になっていた。
「姉さん、楽しそうだね」
横から、さとるが声をかけてきた。
「そりゃそうよ! 新しい建物だよ? しかも、倉庫と家と店が一緒なんだから!」
「まあ、そうだけどさ」
「どうせ作るなら、便利で使いやすい建物にしたいじゃない!」
「はいはい。頑張ってください」
……なんだか、他人事だな。
まあ、さとるは異世界で生活するわけじゃないから仕方ないけど。
必要な情報をまとめ終えた私は、印刷した資料を籠に入れた。
「よし! これで準備完了!」
「結構な量になったね」
「必要なところだけだから、これでも絞ったんだよ?」
「……そうなんだ」
さとるは、少し呆れたように資料を見ていた。
「でも、姉さん。地球の建物と向こうの建物じゃ、いろいろ違うでしょ?」
「うん。だから、そのまま真似するつもりはないよ」
私は資料を整理しながら答えた。
「使える部分を参考にして、あとは職人さんたちに考えてもらうつもり」
「それがいいね。材料も技術も違うんだから、同じものを作ろうとしても難しいだろうし」
「そういうこと!」
地球には、便利な道具も技術もたくさんある。
でも、それをそのまま異世界に持ち込めば解決するわけではない。
この世界には、この世界の材料がある。
そして、それを扱う職人たちの経験がある。
私ができるのは、参考になりそうな情報を持ち込んで、考えるきっかけを作ることくらいだ。
実際に形にするのは、村のみんな。
それでいいのだと思う。
「じゃあ、これを持って戻るね!」
「うん。頑張って!」
「さとるも、お店よろしく!」
「はいはい!」
村に戻ると、ちょうど職人たちが建築の打ち合わせをしていた。
「皆さん、ちょっといいですか?」
「おう、ちほ。どうした?」
「建物の換気や湿気対策、それから棚について、参考になりそうな資料を持ってきました!」
私は印刷した紙を広げた。
職人たちは興味深そうに、資料を覗き込んだ。
「ほう……。床を地面から高くするだけじゃなく、建物の周囲の水はけも考えるのか」
「空気の通り道も必要だな。だが、雨や虫が入らないようにしなければならん」
「棚も、保管する物によって形を変えるのか」
次々と意見が出てくる。
私は、地球で調べた情報を説明しながら、みんなの反応を見ていた。
「ただ、ここに書いてある方法を、そのまま使えるとは限りません。材料も違いますし、作り方も違いますから」
「分かっている。だが、考え方は参考になるな」
木工職人が頷いた。
「床を高くするなら、柱の形や土台の作り方を工夫できる。竹も使えば、風を通す仕組みを作れるかもしれん」
「棚も、木材だけで作る必要はないな。軽い物なら竹を組み合わせてもいい」
「乾燥食品を置く場所は、虫が入りにくい構造にしたい。蓋付きの容器も必要だろう」
おお……。
もう、みんな自分たちなりの工夫を考え始めている。
「いいですね! それぞれの案を試してみて、使いやすい方法を考えていきましょう!」
「そうだな。建物が完成してから不便に気づいても遅いからな」
村長も満足そうに頷いた。
「ちほが持ってきた資料は参考にしつつ、こちらの材料で実現できる形を考えよう」
「よろしくお願いします!」
私は頭を下げた。
地球の知識を持ち込む。
それを村の職人たちが、自分たちの技術や経験と組み合わせる。
そうやって、この村に合った方法を見つけていく。
これも、領地開発……じゃなくて、村の開発の面白いところだ。
「よし! これで新しい建物も、さらに使いやすくなりそうね!」
私は完成した建物を想像した。
広い倉庫に、使いやすい棚。
商品を並べた店。
そして、その隣には私の住む家。
……うん。やっぱり、楽しみだ。ただし。
「……あれ? 私、また仕事を増やしてない?」
ふと、そんな疑問が浮かんだ。
資料を調べて、印刷して、説明して、みんなと相談して。
便利なことを考えるたびに、やることが増えている気がする。
「……まあ、いいか!」
私は気にしないことにした。
新しい家が完成すれば、今よりずっと暮らしやすくなるはずだ。
それに、村のみんなも楽しそうに工夫を考えている。
だったら、頑張る価値はある。
……たぶん!
私は再び資料を広げ、職人たちと一緒に新拠点の設計を考え始めた。




