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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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異世界Wi-Fi開通!鞄の引っ越し問題も解決?

翌日。


さとるが手配してくれたルーターが、鞄を通して届いた。


「よし! これで準備完了!」


私はルーターを受け取り、小屋の中に設置した。

置き場所は、いつも鞄を置いている机の近くだ。ここなら、地球側との接続にも問題はないだろう。


……たぶん。


「えーっと、あとは設定ね」


説明書を見ながら、スマホを操作する。


さとるが設定しやすい機種を選んでくれたおかげで、手順そのものは難しくない。


ただし、ここは異世界。


本当にインターネットにつながるのか、それだけが問題だった。

私は鞄を開き、地球側にいるさとるに声をかけた。


「さとるー! ルーター、設置したよ!」


「おっ! それで、どう?」


「設置はしたけど、今、設定してるところ!」


「……」


「……」


「……つながりそう?」


「今、確認してるから!」


私はスマホの画面を見つめた。

Wi-Fiの設定を開き、ルーターのネットワークを選択する。


パスワードを入力して……。


「……あれ?」


画面に表示された接続状況を確認する。


そして、もう一度。


「……ん?」


少し待ってから、ブラウザを開いてみた。


「……あっ!」


画面に、見慣れたウェブページが表示された。


「できたー!」


「おおっ! つながった!?」


「つながった! インターネット、使えるよ!」


「マジで!?」


「マジです!」


私は思わずスマホを掲げた。

異世界でインターネットが使える。

よく考えれば、とんでもないことだ。


もちろん、鞄を通して地球とつながっている時点で、普通ではないのだけど。


「やっぱり、問題なかったね!」


「いや、まさか本当に使えるとは……」


「私もびっくり!」


私はスマホでいくつかのページを開いてみた。

読み込みも問題ない。検索もできる。

どうやら、普通にインターネットを利用できるようだ。


「これなら、建物の中なら問題なく使えそうね!」


「そうだね。ルーターの電波が届く範囲なら使えるはずだよ」


「うんうん!」


これで、いちいちパソコンを操作する必要もなくなる。

必要な情報を調べるのも簡単になるし、さとるとの連絡だって楽になる。

何より、村の新しい家に引っ越してからも、鞄の近くにルーターを置けばいい。


「もっと早く気がつけば良かったね……」


「本当にね」


「でも、まあ……」


私は少し考えてから、苦笑した。


「色々、それどころじゃなかったからね」


「確かに。村の開発に、商品の販売に、今度は倉庫兼住宅兼店でしょ?」


「そうなのよ!」


最初は、異世界で生活するだけのつもりだった。


それが、気づけば村の人たちと商品を作り、商人と取引し、村の生産や道具の修理まで考えている。


新しい建物まで作ることになったのだから、通信環境のことを後回しにしていたのも仕方がない。


……いや、もう少し早く思いついてもよかったかもしれないけど。


「でも、これでかなり便利になるわ!」


「ところで、姉さん」


「なに?」


「鞄、さらにコードだらけになりそうだね」


「……」


私は机の上を見た。


鞄。ルーター。電源コード。充電器。


そして、これからスマホやパソコンを使うための道具も増えるかもしれない。


「……仕方ないでしょ!」


「いや、別に責めてないけど」


「便利になるんだから、いいの!」


「はいはい」


まったく。

せっかく画期的な環境が整ったというのに、弟は一言多い。

でも、確かにコードの整理は必要かもしれない。


新しい家に引っ越したら、鞄やルーターをどこに置くかも考えないといけないな。


「まあ、それは引っ越しのときに考えよう!」


「そうだね」


そのとき、さとるが思い出したように言った。


「あ、そうそう。ミカミさんから返信が来たよ」


「えっ! 何て?」


「鞄を持ち歩いてもつながったままなのか、って質問したんでしょ?」


「そう!」


「それに対して……」


さとるは、少し間を置いてから答えた。


「「鞄なんだから持ち歩けるわ!」だって」


「…………」


「…………」


「……はぁ?」


思わず、変な声が出た。


「それだけ!?」


「うん。それだけ」


「いやいやいや! もうちょっと説明とかないの!?」


「僕に言われても……」


「こっちは、接続が切れたらどうしようって心配してたんだよ!?」


「まあ、ミカミさんからすれば、鞄なんだから当然ってことなんじゃない?」


「……いい加減だなぁ」


私は思わず額に手を当てた。


神様なんだから、もう少し丁寧に説明してくれてもいいじゃないか。


……いや、ミカミさんだしなぁ。


なんとなく、あの人なら言いそうな返事ではある。


「でも、これで問題は解決かな?」


「そうだね。鞄を持ち歩いても大丈夫で、ルーターも使えるようになったんだから」


「うん!」


これなら、新しい家に引っ越しても大丈夫そうだ。


鞄を移動させても地球との接続は維持される。

ルーターを新しい家に設置すれば、建物の中でもインターネットが使える。


あとは、引っ越しのときに鞄とルーターを一緒に移動させればいい。


「よし! これで引っ越しの心配は一つ減った!」


「おめでとう」


「ありがとう!」


私はスマホを手に、もう一度インターネットを開いた。


さて。これからは、必要な情報をすぐに調べられる。


村の開発に役立つ資料だって探せるし、地球側で新しく出た道具や技術についても確認できる。


ただし、調べた知識をそのまま村に持ち込めるとは限らない。


材料も、道具も、技術も違う。

実際に作るのは村の人たちだ。


だからこそ、参考になる情報を探して、みんなと相談しながら活用していけばいい。


「ふふふ……。これは便利になったわね!」


私はスマホを握りしめた。

異世界でインターネット。

なんだか、少しだけ現代人らしい生活に戻れた気がする。


……まあ、住んでいる場所は森の中の小屋なんだけどね。


「さて! これで安心して新しい家を待てるわ!」


そう思った私は、さっそく村の様子を見に行くことにした。


新拠点の建築準備も、そろそろ本格的に始まるはずだ。


そして、これからはスマホも活用できる。

村の発展が、また一歩進むかもしれない。


……問題は、便利になるたびに、私の仕事も増えている気がすることだけど。


それは、今は考えないことにしよう!

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