↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
163/174

倉庫問題と、村の新しい我が家!

「……うーん。やっぱり、倉庫が足りないですね」


私は村の倉庫を眺めながら、腕を組んだ。

商品や材料が増えてきたことで、今まで使っていた倉庫では手狭になってきたのだ。


木材に竹製品、木工職人が作った品物、乾燥させた果物や椎茸。

それに、これから商人に売る予定の商品もある。


「ちほ殿、どこに置けばよいのか、そろそろ困ってきましたな」


村長さんも困った顔をしていた。


「そうですね。全部を一緒に置くわけにもいきませんし」


木材と乾燥食品を同じ場所に置くのは、あまりよくない。


食品は湿気や虫に気をつけなければならないし、木材や竹製品も保管方法によっては傷んでしまう。


完成した商品だって、雨に濡れたり、乱雑に積み重ねたりすれば、売り物にならなくなる可能性がある。


「まずは、何をどこに保管するのか決めましょう」


私がそう提案すると、村人たちが集まってきた。


「木材は、今の倉庫とは別にした方がよいでしょうな」


木工職人が言った。


「木材は乾燥させる必要があります。湿ったまま保管すると、後で使うときに問題が出ることもありますから」


「竹も、乾燥させた物と加工途中の物は分けたいですね」


竹細工職人も続けた。


「それから、完成した籠や木工品は、できるだけ雨や土埃が入らない場所に置きたいです」


なるほど。

それぞれの職人には、それぞれの事情がある。


材料を保管する場所。

加工途中の物を置く場所。

完成した商品を保管する場所。


さらに、乾燥食品は湿気や虫を防げる場所に置かなければならない。


「うーむ……。倉庫と一口に言っても、いろいろ考える必要がありますね」


「そうですな。今までのように、一つの場所に何でも置いておくわけにはいかなくなりました」


村長さんは頷いた。


「では、用途ごとに保管場所を分けることにしましょう」


「そうですね。新しく建てるなら、最初から使い道を決めておいた方がよさそうです」


私は紙を広げ、簡単な図を描いた。


木材は、風通しを確保しながら雨に濡れない場所へ。


竹製品も、湿気がこもらないようにする。


乾燥食品は、雨や虫、湿気から守れるように、清潔に保管できる場所を用意する。


完成した商品は、種類ごとに整理して、商人が来たときにすぐ取り出せるようにする。


「こうして考えると、保管場所をきちんと分けるだけでも、ずいぶん仕事がしやすくなりそうですね」


「ええ。何がどこにあるのか分かれば、探す手間も減りますからな」


「それに、商品を傷めずに済みます」


うんうん。


せっかく職人さんたちが良い物を作っても、保管方法が悪くて傷んでしまったら意味がない。

作ることだけでなく、作った物を守ることも大切なのだ。


「では、村にある木材や竹を使って、倉庫を増やす方向で考えましょうか」


私がそう言うと、村人たちも賛成してくれた。


「よし! 皆で作るべ!」


「おお!」


なんだか、ずいぶんと話が早い。

まあ、材料になる木材も竹も、この村にはある。


職人さんたちもいるし、必要な物を相談しながら作れば、村の力で建てられるだろう。


そんなことを考えていると、村長さんがふと思い出したように私を見た。


「ところで、ちほ殿」


「はい?」


「森の中の小屋から、毎日ここまで通うのも面倒ではありませんかな?」


「……え?」


突然の質問に、私は目を瞬かせた。

確かに、私の住んでいる小屋は森の近くにある。


村まで通えない距離ではないけれど、何か相談があるたびに行き来するのは、それなりに手間が掛かる。


それに、商品や材料について相談したいとき、すぐ近くにいれば便利なのは間違いない。


「まあ、少しは面倒ですけど……」


「ならば、いっそのこと、村に倉庫兼住居を建てるのはどうでしょう?」


「えっ!?」


思わず声が裏返った。


「倉庫兼住居、ですか?」


「そうです。商品を保管する倉庫を作り、その一角をちほ殿の住まいにするのです」


村長さんは、さも当然のように説明した。


「ちほ殿が村にいてくだされば、わしらも安心ですからな。相談したいことがあれば、すぐに話ができますし」


「いや、でも……」


私は思わず周囲を見回した。

すると、近くにいた村人たちまで頷き始めた。


「確かに、それはいい考えだな!」


「ちほさんが村にいてくれれば、相談もしやすいです!」


「商品を持っていくときも、近くにいた方が便利ですしね!」


「よし! 皆で作るべ!」


いやいやいや!

皆さん、盛り上がりすぎじゃありませんか!?


私の住む場所が、いつの間にか村の建築計画に組み込まれているんですけど!


「ええと……私の住む場所まで、村で建ててもらっていいんですか?」


「もちろんですとも!」


村長さんは、力強く頷いた。


「ちほ殿には、これまで村の発展にずいぶんと力を貸していただきました。これくらいは、わしらにもさせてくだされ」


「そうそう! 遠慮することはない!」


村人たちも口々に言う。


……うーん。


これは、断りにくい。

そもそも、村の発展を手伝っているのは、私が好きでやっていることでもある。


でも、村人たちが自分たちから住む場所を用意すると言ってくれるのは、素直に嬉しかった。


「……ありがとうございます」


私は、少し照れながら頭を下げた。

すると、村長さんはさらに話を続けた。


「それで、ちほ殿。どのような倉庫兼住居がよろしいですかな?」


「えっ、もう設計の話ですか!?」


「はっはっは。建てるなら、希望を聞いておいた方がよいでしょう」


いや、確かにそうだけど!


「倉庫と住居を一緒にするなら、保管する商品と生活空間は分けたいですね」


「ふむふむ」


「それから、窓も欲しいです。風通しも大切ですし、明るい方がいいですから」


「窓ですな。分かりました」


「あと、乾燥食品を保管する場所は、湿気や虫が入らないように工夫したいです。完成した商品も、きちんと整理できる棚があると便利ですね」


私が希望を伝えるたびに、村長さんが紙に書き留めていく。


木工職人も横から覗き込んでいた。


「それなら、倉庫部分は広めにして、住居部分は別の区画にした方がよさそうですな」


「そうですね。生活する場所に、商品や材料が入り込んでくるのは困りますから」


「火を使う場所も、保管場所とは分けた方がよいでしょう」


「それもお願いします!」


なんだか、本格的な打ち合わせになってきた。


倉庫の広さ。住居の間取り。窓の位置。

商品を運び込むための出入口。

保管用の棚。


考え始めると、必要なことが次々に出てくる。

そして、村長さんが最後に、とんでもない提案をした。


「それから、ちほ殿」


「はい?」


「せっかく村の中に建てるのです。窓口として、小さな店も併設してはいかがでしょう?」


「……店?」


私は首を傾げた。


「はい。村で作った商品を並べたり、村人が必要な物を受け取ったりできる場所です。商人が来たときにも、商品の確認や受け渡しがしやすくなります」


「ああ、なるほど!」


それは確かに便利かもしれない。

村で作った商品を倉庫に保管しておき、必要に応じて店の部分へ運ぶ。


商人が来たら、そこで商品を見せたり、取引の相談をしたりできる。


村人たちにとっても、商品や材料の管理がしやすくなるだろう。


ただし、店を作るなら、何を売るのか、誰が管理するのかも考えなければならない。


私が全部を担当するのでは、今以上に忙しくなってしまう。


「店を作るのはいいと思います。でも、私一人で管理するのは難しいですよ?」


「もちろんです。村の者たちで役割を分担しましょう」


村長さんは即答した。


「ちほ殿には、地球との取引や商品の相談など、必要な部分をお願いできればと思っています」


「なるほど。それなら、何とかなるかもしれませんね」


村の人たちが作った商品を、村の中で管理する場所。


そして、商人との取引を進めるための窓口。


それがあれば、村の産業も、もう一段階進められるかもしれない。


「……うーん。倉庫を作る話だったのに、いつの間にか家と店まで増えちゃったなぁ」


私は思わず呟いた。


「はっはっは! 村が発展している証拠ですな!」


村長さんは楽しそうに笑った。

いや、まあ、確かにそうなんだけど!

私は新しく描かれた建物の図を覗き込んだ。


倉庫。住居。店。


三つの役割を持つ建物。

村の木材や竹を活用し、村人たちの技術で建てる。


完成すれば、商品の保管も、取引も、私の生活も、ずっと便利になるだろう。


「よし。それなら、みんなで考えて、使いやすい建物にしましょう!」


私がそう言うと、村人たちは嬉しそうに声を上げた。


「おお!」


「皆で作るべ!」


「いい建物にしましょう!」


……うん。


村の発展は順調だ。順調なんだけど。


「これ、完成したら、私の仕事がさらに増えるんじゃ……?」


ふと、そんな考えが頭をよぎった。


倉庫を管理して、店の相談をして、商品の受け渡しをして。


……いやいや。


そこは村の人たちと分担するんだ。

私は自分にそう言い聞かせた。

せっかく村の皆が、自分たちの力で発展しようとしているのだから。


私も、できる範囲で手伝っていこう。


そして、いつかこの村が、私がいなくても自分たちで回っていけるようになればいい。


……まあ、その頃には、今度こそ地球に帰れる方法も見つかっているといいんだけどね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。