↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
160/174

最初の修理は、折れた道具の柄!

鍛冶職人が金属加工の勉強を始めた一方、木工職人たちも道具の修理について考えていた。


「まずは、簡単な修理から始めてみましょう」


私がそう提案すると、木工職人が一本の斧を持ってきた。


「ちょうど、柄が折れてしまった斧があります。これなら修理できるでしょう」


差し出された斧を見ると、金属の刃は無事だった。折れているのは木製の柄だけだ。


「おお! これなら大丈夫そうですね」


私は斧を確認しながら頷いた。


「刃が壊れているわけじゃありませんから、新しい柄を作れば使えるようになるはずです」


「そうですな。問題は、どのような木を使うかです」


木工職人は折れた柄を見つめた。


「以前と同じ木で作るのもよいですが、せっかくですから、もっと丈夫な物を試してみたいですね」


「それなら、ユーカリはどうでしょう?」


「ユーカリですか?」


「はい。持ち込んだ木がありますよね。あれは硬いですし、試してみる価値はあると思います」


この村では、ユーカリがすっかり身近な資源になっている。


成長が早く、木材としても利用できる。

以前は、お風呂の材料や木工品として使えないかと考えていたけれど、今回は別の使い道だ。


斧の柄に向いているかどうかは、実際に試してみないと分からない。


硬い木なら何でもよい、というわけではないからだ。


柄には、強度だけでなく、衝撃に耐える性質や、手に持ったときの扱いやすさも必要になる。


「では、ユーカリで一本作ってみましょう」


木工職人は、さっそく作業に取りかかった。

まずは折れた柄を参考に、長さや太さを測る。


次に、斧を取り付ける部分の形を確認し、木材を削っていく。


「この部分は、刃の穴に合うようにしなければなりませんな」


「そうですね。緩すぎると危ないですし、無理に押し込んでも木が割れるかもしれません」


私は地球で見たことのある斧を思い浮かべながら答えた。


もっとも、私も斧の柄を作った経験なんてない。あくまで、一般的な注意点を伝えているだけだ。実際の加工方法は、職人さんに任せるしかない。


木工職人は何度も寸法を確かめながら、少しずつ形を整えていった。


そして、ようやく新しい柄が完成した。


「できましたぞ」


「おおっ!」


私は完成した柄を眺めた。


木目がきれいで、手に持ったときの感触も悪くない。木工職人は慎重に斧の刃を取り付け、固定具合を確認した。


「さて、これでどうでしょうな」


「見た目はいい感じですね!」


ただし、見た目がよいからといって、すぐに実用に耐えるとは限らない。


使っている途中で柄が緩んだり、木にひびが入ったりしたら危険だ。

そこで、職人はまず取り付け部分を確認し、軽く力を加えて緩みがないかを調べた。


さらに、柄の形や握りやすさについても確認する。


「以前の柄より、少し太くしたのです。これなら手に馴染むでしょう」


「なるほど。太さも調整したんですね」


「ええ。使う者の手の大きさも考えました」


おお。


ただ折れた物を元に戻すだけじゃない。

使いやすさまで考えて改良している。


これぞ、職人さんの仕事だね!


もちろん、実際に木を割る作業で使う前には、取り付けが確実であることを確認しなければならない。

職人たちは、無理に力を加えず、少しずつ様子を見ながら試すことにした。


その結果、柄がすぐに緩むこともなく、手に持った感触も良好だった。


「これは、なかなかよいですな」


木工職人が満足そうに頷いた。


「以前の物より使いやすくなったかもしれません」


「本当ですか?」


「ええ。ただし、しばらく使ってみて、問題がないか確かめる必要はあります」


なるほど。


一度うまくいったからといって、すぐに完成と決めつけない。


使い続けて問題がないか確認する。

もし不具合があれば、原因を調べて改良する。


そうやって、少しずつ良い物にしていくわけだ。


「これなら、ほかの道具も修理できそうですね」


私がそう言うと、木工職人は頷いた。


「柄が折れただけなら、刃の部分を買い直す必要はありませんからな」


そうなのだ。今までは、道具が壊れたら新しい物を買うしかないと思っていた。


しかし、壊れた部分だけを交換できるなら、費用を抑えられる。しかも、修理の技術が身につけば、村の中で対応できる範囲も広がっていく。


「村長さんにも報告しておきましょう!」


私はさっそく村長さんを呼んだ。


「村長さん! 斧の柄を修理できましたよ!」


「おお! もうできたのですか!」


村長さんは、修理された斧を見て目を丸くした。


「これなら、刃を買い直さずに済みますな」


「はい。もちろん、何でも直せるわけではありませんが、こうした修理なら村の中でできそうです」


「それは大きな進歩ですぞ!」


村長さんは嬉しそうに頷いた。

そして、しばらく斧を眺めたあと、ふと思いついたように言った。


「ちほ殿。今回の修理について、記録を残しておいてはどうでしょう?」


「記録ですか?」


「ええ。どの木を使ったのか、どのように加工したのか、使い心地はどうだったのか。そうしたことを残しておけば、次に修理するときの参考になります」


「それはいいですね!」


私は思わず声を上げた。


せっかく新しいことを試しても、何も記録しなければ、次に同じことをするとき、また最初から考えなければならない。


逆に、記録が残っていれば、失敗も成功も次に活かせる。


木の種類。柄の太さや長さ。取り付け方。

修理した日。使ってみた結果。


そして、問題があれば、その内容も書いておく。


「鍛冶の勉強にも、同じように記録を残すとよさそうですね」


「そうですな。木工も鍛冶も、経験を積み重ねることが大切でしょう」


村長さんは、さっそく記録用の紙を用意すると言い出した。


……うん。


これは、いい流れだ。道具を直す。

直し方を記録する。その記録を参考にして、次の修理をもっと上手に行う。


そうすれば、村の技術が少しずつ蓄積されていく。


私が毎回、地球から答えを持ち込まなくても、村人たち自身で解決できる問題が増えていくはずだ。


「うむ。こちらもいい流れ!」


私は満足して頷いた。


最初は、壊れた斧の柄を交換しただけ。

でも、その小さな修理から、村の中に新しい仕組みが生まれようとしている。


……ただし。


「ちほ殿、次は鍬の柄もお願いできますかな?」


「えっ?」


村長さんが、別の道具を持ってきた。


「こちらも少し傷んでおりましてな」


「いや、私は修理する人じゃないですよ!?」


「はっはっは。もちろん、職人にお願いするつもりです」


……びっくりした。


私まで木工職人にされるところだったよ!


まあ、これからは村の中で修理できる物が増えていけばいい。

そして、鍛冶の技術も少しずつ身につけていけば、金属製品の修理にも挑戦できるようになるだろう。


焦らず、一歩ずつ。村の発展は、こういう小さな積み重ねから始まるのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。