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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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干し椎茸、商人に売れるかな?

「うーむ……干し椎茸、商品になるかな?」


干し椎茸を作り、味と保存性に手応えを感じたちほ。

せっかく村で作れるようになったのだから、売り物にできないだろうか?


そんなことを考え始めていた。


「生の椎茸も美味しいけど、干し椎茸なら長く保存できるし、運ぶのも楽よね」


生の椎茸は、時間が経てば傷んでしまう。

その点、しっかり乾燥させた干し椎茸なら、保存性が高く、遠くまで運ぶ商品にも向いている。

商人に売ることができれば、村の新たな収入源になるかもしれない。


「よし! まずは村長に相談ね!」


ちほは干し椎茸を持って、村長のところへ向かった。


「村長ー! ちょっと相談があるんですけど!」


「おお、ちほさんか。今度は何じゃ?」



「干し椎茸を、商人に売れないかなと思って」


「干し椎茸を?」


村長は、ちほが持ってきた干し椎茸を手に取った。


「これなら、長く保存できるんじゃったな」


「そうです! それに、戻して料理すると美味しいんですよ!」


「ほう……。保存が利いて、美味しいとなれば、売り物になるかもしれんな」


「ですよね!」


ちほは大きく頷いた。

しかし、ここで勢いに任せて大量生産を始めるわけにはいかない。


「ただ、いきなり大量に作るのはやめておきましょう」


「ふむ。何か問題があるのか?」


「まず、ちゃんと商品として売れる品質にできるか確認したいんです。それに、どれくらい売れるかも分かりませんから」


「なるほどのう。売れるかどうか分からぬのに、大量に作っても困るということじゃな」


「そういうことです!」


作ったはいいものの、売れなければ在庫を抱えることになる。


それでは、せっかくの新しい産業も続かない。

まずは少量を作り、商人に見せられる商品に仕上げる。


それが今回の目標だ。


「では、椎茸を育てている者たちにも話をしてみよう」


村長は、さっそく関係する村人たちを集めてくれた。


「干し椎茸を商品にする、か」


「確かに、乾燥させれば長く保存できるのは分かったが……」


「商品にするなら、見た目も揃えた方がよいのではないか?」


村人たちは、干し椎茸を手に取りながら考え始めた。


「そうですね。大きさがバラバラでも味には問題ないと思いますけど、商品として売るなら、ある程度揃っていた方がいいと思います」


「ならば、大きさごとに分けてみるか」


「乾燥具合も確認したいな。まだ水分が残っていると、保存に問題が出るかもしれん」


「そうだな。どれくらい乾かせばよいのか、記録を取ろう」


おお!


私が言い出す前に、みんな考えてくれている。

ちほは、少し離れたところから村人たちの様子を眺めた。


「乾燥させる日数だけでなく、椎茸の大きさや厚さによっても違いそうですね」


「ならば、それも記録しておこう」


「保管する場所も考えねばならんな。湿気が多いところでは、せっかく乾かしても元に戻ってしまうかもしれん」


「袋や容器も必要になるな」


次々と意見が出てくる。


大きさを揃える。乾燥状態を確認する。

保管方法を考える。


そして、実際に保存して状態を確かめる。

商品として売るために必要なことを、村人たちは自分たちで考えていた。


「うんうん! いい感じ!」


ちほは満足そうに頷いた。

私が全部決める必要はない。

作っている人たちが、自分たちで考えて改良していく。その方が、きっと長続きする。


「ちほさん、まずは少量を商品用に作ってみることにしたぞ」


木工職人が声をかけてきた。


「ありがとうございます! それでいきましょう!」


「ただし、すぐに大量に作るのはまだ早いな。まずは品質を安定させねば」


「はい!」


「それと、椎茸の栽培も続けていかねばならん。売れるからといって、今ある椎茸を全部干してしまうわけにもいかんからな」


「あっ、確かに!」


生の椎茸として食べる分も必要だ。

干し椎茸にする分も必要だ。

そして、次の収穫に向けて原木の管理も続けなければならない。

売ることばかり考えて、栽培がおろそかになってしまっては本末転倒だ。


「まずは、村で安定して作れるようにする。それから売る量を増やしていきましょう!」


「うむ。それがよかろう」


村長も賛成してくれた。


こうして、村では干し椎茸を商品にするための準備が始まった。

まだ、商人に売れると決まったわけではない。

値段だって分からない。


それでも、村で育てた椎茸を加工し、保存の利く商品にできる。


これは大きな一歩だった。


ユーカリの香り袋や石鹸、竹籠、木工品。

そして、干し椎茸。


村で作れるものが、少しずつ増えている。


「ふふふ……。これ、村の特産品になったりして?」


思わず期待してしまう。

もちろん、売れるかどうかは商人次第だ。

でも、まずは作れるものを増やすこと。

そして、品質を安定させること。

それができれば、売る機会はいずれやってくるはず。


「よーし! 干し椎茸、頑張って商品にしましょう!」


ちほの声に、村人たちも笑顔で応えた。

こうして、干し椎茸は村の新たな特産品候補となったのだった。


……そして。


その機会は、思っていたよりも早くやってくることになる。

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