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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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干し椎茸を作ってみよう!

「おお! また椎茸が採れたぞ!」


椎茸の原木を管理していた木工職人から、嬉しい報告が届いた。


初収穫からしばらく経ち、ほかの原木からも椎茸が採れるようになってきたのだ。

まだ大量に収穫できるわけではない。

それでも、少しずつ収穫が続くようになったのは大きな進歩だ。


「よし! 今回は、干し椎茸を作ってみましょう!」


私がそう提案すると、村人たちは首をかしげた。


「干し椎茸? また乾燥させるのか?」


「はい! 生のまま食べる分とは別に、一部を乾燥させて保存できるか試してみたいんです」


「なるほど。採れたものを、あとで食べられるようにするわけか」


「そういうことです!」


村には、すでに干し場がある。

キノコや果物を乾燥させる実験も進めてきた。

ならば、椎茸にも挑戦してみよう!


◇


「では、まずは記録からですね!」


私は、いつものように記録用の紙を取り出した。


「乾燥させる前の重さと大きさを測ります。それから、乾燥させた日数や、途中でどんな変化があったのかも記録してください」


「よし。こっちは大きい椎茸だな」


「こちらは小さい。大きさによって乾き方も違うかもしれんぞ」


「なら、大きさごとに分けて並べてみるか!」


村人たちは、椎茸を大きさごとに分けていった。

乾燥させる前の状態を記録し、風通しのよい場所に並べる。


もちろん、ただ置いておけばいいというわけではない。

雨や夜露に濡れないようにしながら、乾燥具合を確認していく必要がある。


「よし、これで準備完了だな!」


「はい! あとは、状態を見ながら乾燥させていきましょう!」


村人たちは、さっそく作業に取りかかった。

 

私は、その様子を見ながら思った。


こうやって記録を続ければ、どのくらいの大きさの椎茸が乾燥しやすいのか、どんな条件なら上手くいくのかも分かってくるはずだ。

そして、十分に乾燥できたら、次は味の確認だ。


……ふふふ。楽しみね!


◇


数日後。


「ちほさん! 干し椎茸の状態を確認してくれ!」


木工職人に呼ばれ、私は干し場へ向かった。

「どうですか?」


「見てくれ。ずいぶん小さくなったぞ!」

 

並べられた椎茸は、乾燥前と比べて小さくなっていた。表面も、ずいぶん乾いている。


「おお! ちゃんと水分が抜けていますね!」


村人たちは、乾燥前の記録と比べながら、重さや大きさの変化を確認した。


「これだけ小さくなるのか」


「生のときとは、まるで違うな」


「保存するなら、これくらい乾燥させる必要があるんだな」


ただし、見た目だけで十分に乾燥したと決めつけるわけにはいかない。

乾燥状態を確認し、湿気が戻らないように保管することも大切だ。

今回は少量の実験だからこそ、状態を確かめながら進めていく。


「よし! では、次は水で戻してみましょう!」


私は、乾燥させた椎茸を手に取った。

干し椎茸は、水に浸して戻してから料理に使う。


地球では、戻した水にも椎茸の旨味が溶け出すため、料理に利用することがある。


今回も、戻した椎茸と水を使って、簡単な鍋を作ってみることにした。


◇


「さあ、できましたよ!」


鍋から、湯気が立ち上る。

乾燥させた椎茸を戻し、その椎茸と戻し汁を使って煮込んだ鍋だ。


「では、いただきます!」


村人たちは、さっそく椎茸を口に運んだ。


「……おお!」


ひと口食べた村人が、目を見開いた。


「これは美味い!」


「生の椎茸とは、また違う味がするぞ!」


「鍋全体にも、いい味が出ているな!」


私も、ひと口食べてみた。


「うん! 美味しい!」


生の椎茸を使った鍋も美味しかった。

でも、こちらはまた違う。

乾燥させた椎茸ならではの旨味が感じられる。

さらに、戻し汁を使ったことで、鍋全体にも椎茸の味が広がっていた。


「生でも美味いが、干すとまた違う!」


「そうだな! これなら、保存しておく価値があるぞ!」


村人たちは、すっかり気に入った様子だった。


うんうん!


これなら、干し椎茸を作る意味がある。

ただ長く保存できるだけではなく、料理の味わいまで変えられるのだから。


「しかも、採れたときに全部食べなくてもよくなるんですよ!」


私が説明すると、村長もうなずいた。


「なるほど。収穫が多いときに乾燥させておけば、あとで食べられるわけじゃな」


「はい! 村の食料としても役立ちますし、たくさん作れるようになれば商品にもできるかもしれません」


「ふむ……これは、ますます椎茸を増やしたくなるのう」


村長の言葉に、木工職人たちも笑顔になった。


◇


食事のあと、村人たちは乾燥実験の記録を確認した。

乾燥前の重さ。大きさ。乾燥させた日数。

乾燥後の状態。


そして、戻したときの様子や、料理に使ったときの感想。


「次は、もう少し大きさをそろえて試してみるか」


「乾燥させる時間も、記録を見ながら調整できそうだな」


「椎茸がもっと採れるようになれば、乾燥させる分も増やせるぞ!」


村人たちは、すでに次の実験について話し合っていた。

最初は、地球から持ってきた知識を試してみるだけだった。


それが今では、村人たち自身が結果を確認し、改善点を探し、次の方法を考えている。


これなら、干し椎茸作りも村に根づいていくかもしれない。


栽培して収穫する。生のまま食べる。

余った分は乾燥させる。


そして、必要なときに戻して料理に使う。


さらに、安定して作れるようになれば、商人に売ることもできる。


椎茸の栽培と乾燥技術が組み合わさることで、村の食生活にも産業にも、新しい可能性が生まれつつあった。


「……うん! いい流れね!」


私は満足してうなずいた。


もちろん、まだ実験の途中だ。

栽培も乾燥も、もっと安定させていかなければならない。

でも、少しずつ前に進んでいる。


「さて、次は何を試そうかな?」


そう考えながら、私は干し場を見渡した。

椎茸だけでなく、ほかのキノコや果物も乾燥できる。


この干し場から、村の新しい保存食がいくつも生まれるかもしれない。


……ふふふ。


美味しいものが増えるのは、やっぱり嬉しい!

私は次の収穫を楽しみにしながら、小屋へ戻るのだった。

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