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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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椎茸をもっと増やそう!

「さー! キノコ鍋だ!」


「おー! まずは食べてみよう!」


初収穫した椎茸を前に、村人たちはすっかり食べる気満々だった。


採れた椎茸は、まだそれほど多くない。

それでも、せっかくの初収穫だ。


まずは、みんなで味わってみることになった。

鍋には、椎茸のほかにも村で採れた野菜を入れる。


ぐつぐつと煮込めば、いい香りが漂ってきた。


「うーん! いい匂いだな!」


「そろそろ食べられるんじゃないか?」


「では、いただきます!」


村人たちは、さっそく椎茸を口に運んだ。


「おお! 美味い!」


「森で採れるキノコとは、また違う味わいだな!」


「鍋に入れると、いい味が出るもんだ!」


うんうん!自分たちで育てた椎茸だから、喜びもひとしおだろう。


……私も食べたい!

もちろん、私も鍋をいただいた。


「うん! 美味しい!」


椎茸の旨味が、鍋全体に広がっている。

これなら、いろいろな料理に使えそうだ。

すると、村人のひとりが声を上げた。


「焼いても美味しいわよ!」


「そうなのか!」


「なら、早速だ!」


残っていた椎茸を、さっそく焼いてみることになった。火の上でじっくりと焼く。

椎茸から水分がにじみ、香ばしい匂いが漂ってきた。


「確かに焼いても美味いな!」


「だなー!」


「鍋に入れるのとは、また違う味だ!」


村人たちは、焼いた椎茸にも大満足だった。

鍋に入れてもよし。焼いてもよし。

これは、なかなか使い勝手のいい食材になりそうだ。


「もっと増やすべ!」


誰かがそう叫ぶと、みんなが賛同した。


「そうだな! これだけ美味いなら、もっと育てたい!」


「たくさん採れるようになれば、村の食料も増えるぞ!」


「余った分は保存もできるんだろう?」


「はい! 乾燥させれば、干し椎茸にもできますよ!」


私が答えると、村人たちの目が輝いた。


「よし! 次はもっとたくさん育てよう!」


こうして、初収穫の喜びは、次の栽培へとつながっていった。


◇


「さて、次はどうするかじゃな」


食事を終えると、村長と木工職人たちが集まり、今後の栽培について話し合いを始めた。


「今回、最初に収穫できた原木は、これだったな」


木工職人が記録を広げる。


「木の種類はこれで、置き場所は森の中の日陰だった」


「こちらの原木も変化は出ているが、まだ収穫には至っていない」


「なら、今回の結果を参考にして、原木を増やしてみるか?」


「そうだな。ただし、同じ木ばかりにするのではなく、ほかの候補も残しておこう」


おお!いい判断だ。


今回、椎茸が収穫できたからといって、ほかの木では育たないと決まったわけではない。

まだ試している途中なのだから、いろいろな可能性を残しておくのは大切だ。


「まずは、今回うまく育った原木と同じ種類の木を多めに用意する。それから、ほかの候補も少しずつ試す。これでどうだ?」


「それがよさそうだな!」


村人たちは、次に準備する原木の数や管理場所について相談を進めていった。


「原木を増やすなら、管理する場所も考えないとな」


「そうだな。今の場所だけで足りるか、確認してみよう」


「収穫の時期が重なることも考えておかないといかんな」


さすがだ。 


ただ原木を増やすだけではなく、その後の管理まで考えている。


「では、次の原木探しもお願いしますね!」


私がそう言うと、木工職人たちは力強くうなずいた。


「任せておけ! 木のことなら俺たちの出番だ!」


頼もしい!


これなら、椎茸栽培も少しずつ村に根づいていきそうだ。


◇


一方、私は小屋に戻って考えていた。


「さて……椎茸が増えるなら、保存方法も考えないとね」


今回の収穫量は、まだ少ない。

だから、今すぐ大量の保存食を作る必要はない。


でも、今後たくさん収穫できるようになったら、生のまま食べきるのは難しくなるかもしれない。


そこで、思い浮かぶのが……。


「干し椎茸!」


そう!地球では、椎茸を乾燥させて保存する方法がある。


乾燥させれば長持ちさせやすくなるし、戻して料理に使うこともできる。


しかも、乾燥させることで旨味が増すのも魅力だ。


すでに村には干し場がある。


乾燥キノコの実験も始めているから、椎茸にも応用できる可能性は高い。


「うん! これは試してみる価値があるわね!」


私は、さっそくパソコンを開いた。


椎茸の乾燥方法。干す前の下処理。

乾燥に適した状態。保存方法。

必要な情報を調べていく。


ただし、乾燥させれば何でも安全に保存できるわけではない。


十分に乾燥させ、湿気を避けて保管することも大切だ。


「まずは少量で試してみましょう!」


私は、調べた情報を印刷した。


次に椎茸が収穫できたら、生のまま食べる分と、乾燥させる分に分けてみよう。

乾燥させたものは、戻して料理に使い、味の違いも確かめる。


もし上手くいけば、村で採れた椎茸を長く利用できるようになる。


さらに、十分な量を安定して作れるようになれば、商人に売ることも考えられる。


「……ふふふ。生の椎茸に、干し椎茸か」


食べ方が増える。

保存できる食料が増える。


そして、村の新しい商品が増える。

椎茸栽培は、単にキノコを育てるだけでは終わらない。


栽培から収穫、加工、保存、販売へ。


村人たちが自分たちで育て方を工夫し、収穫したものを加工して売れるようになれば、立派な産業になるはずだ。


もちろん、まだ始まったばかり。

まずは原木を増やし、安定して収穫できるようにすることが先だ。


「よし! 栽培と乾燥、両方を少しずつ進めていきましょう!」


私は、印刷した資料をまとめた。


村の食生活が豊かになり、さらに収入にもつながる。


そんな未来を想像しながら、私は次の収穫を楽しみに待つのだった。

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