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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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椎茸、初収穫なるか!?

椎茸が原木から顔を出してから、数日。

最初は小さかった椎茸も、少しずつ大きくなっていた。


「おお! また大きくなっているぞ!」


「本当だ! 昨日よりも大きいな!」


木工職人たちは、毎日のように原木の様子を確認していた。

最初に椎茸が生えた原木だけではない。

ほかの原木にも、少しずつ変化が現れ始めている。


「こっちにも出てきたぞ!」


「こちらの木は、まだ小さいな」


「置き場所によっても違うのかもしれんな」


村人たちは、記録を確認しながら、原木ごとの違いを調べていた。


木の種類。

置き場所。

菌を植え付けてからの期間。


それぞれの記録を見比べることで、少しずつ栽培の様子が分かってきている。

そして、最初に生えてきた椎茸は……。


「そろそろ、収穫してもいいんじゃないか?」


木工職人のひとりが、椎茸を眺めながら言った。


「どうじゃろうな?」


「ちほさんに聞いてみるか!」


……え?私?

いやいや、椎茸栽培の専門家じゃないんだけど!


◇


「ちほさん! 椎茸が大きくなったぞ!」


呼ばれて向かうと、村人たちが原木を囲んでいた。


「おお! 確かに大きくなっていますね!」


最初に見たときは、まだ小さかった椎茸。

それが今では、立派な大きさになっている。


「初収穫じゃ! これくらいの大きさでいいのか?」


村長が、期待に満ちた顔で尋ねてきた。


「そうですね。一番美味しいとされる大きさです!」


……と、地球の栽培資料には書かれていたはず!


もちろん、椎茸は大きければ大きいほど美味しい、というわけでもない。

傘の開き具合なども、収穫時期を判断する目安になる。


今回の椎茸は、ちょうどよさそうだ。


「だ、そうだ! 皆、収穫じゃ!」


「おおー!」


村人たちから歓声が上がった。


ついに、初収穫!原木を選び、準備をして、椎茸菌を植え付けた。


そして、毎日状態を確認しながら、ここまで育ててきたのだ。


その成果が、目の前にある。


「よし! 傷つけないように収穫しましょう!」


私は村人たちと一緒に、椎茸を収穫した。


ひとつ。また、ひとつ。数はまだ少ない。

けれど、自分たちで育てた椎茸だ。


「おお……本当に採れたな」


「まさか、村でキノコを育てられるとはなあ」


村人たちは、収穫した椎茸を手に取り、嬉しそうに眺めていた。


私も、思わず笑顔になる。

うんうん!これは嬉しい!


◇


「さて、せっかくの初収穫ですから、みんなで味見をしましょう!」


私がそう提案すると、村人たちは大賛成だった。


「そうじゃな! どんな味がするのか、確かめてみよう!」



収穫した椎茸は、さっそく調理することになった。

今回は、椎茸そのものの味を確かめたい。

余計な味付けは控え、簡単に焼いたものと、鍋に入れたものを用意する。


じゅうじゅうと焼ける椎茸。

鍋から立ち上る湯気。

……うん。この香り、いいわね!


「では、いただきます!」


まずは、焼いた椎茸をひと口。


「……美味しい!」


噛むと、椎茸の旨味が口の中に広がった。

村人たちも、次々と味見を始める。


「おお! これは美味い!」


「森で採れるキノコとは、また違う味わいだな!」


「鍋に入れても、いい味が出そうだ!」


うんうん!自分たちで育てた椎茸だから、余計に美味しく感じるのかもしれない。


「これなら、もっと育てたいな!」


木工職人のひとりが言った。


「そうですね! 安定して収穫できるようになれば、村の食料にもなりますから!」


「それに、たくさん採れたら乾燥させてもいいんじゃろう?」


「はい! 乾燥させれば保存にも使えます!」


村長も、満足そうにうなずいた。


「これは、なかなか楽しみになってきたのう」


◇


初収穫を喜んだあと、木工職人たちは、さっそく記録の確認を始めた。


「今回、最初に収穫できたのは、この種類の木だったな」


「置き場所は、森の中の日陰だった」


「ほかの原木は、まだ小さいものもあるぞ」


「なら、もう少し様子を見て、違いを確認していこう」


村人たちは、今回の結果を次の栽培に生かそうとしていた。


どの木が適しているのか。

どの場所なら育ちやすいのか。

どのくらいの期間で収穫できるのか。


まだ、分からないことは多い。


でも、実際に椎茸が育ち、収穫できた。

これは大きな一歩だ。


「最初から、すべての原木で同じように育つわけではないんですね」


私が言うと、木工職人がうなずいた。


「そうだな。だからこそ、記録を残す意味がある。次は今回の結果を参考にして、もっと良い方法を探せばいい」


「お願いします!」


私は、村人たちに任せることにした。

私が持ってきたのは、椎茸栽培という方法だけ。


実際にどの木を使い、どこで育て、どう管理していくのか。


その答えを見つけていくのは、村人たちだ。

そして、もし栽培が軌道に乗れば……。


村で椎茸を安定して収穫できるようになる。

採れたてを料理に使う。

余った分は乾燥させる。


さらに、商人に売れるほどの量が確保できれば、新しい収入源にもなるかもしれない。


「……ふふふ」


私は、収穫した椎茸を眺めた。


干し場ができて、乾燥キノコの可能性が見えてきた。

そして今、村でキノコを育てる第一歩も踏み出せた。少しずつだけど、村の暮らしが変わってきている。


「ちほさん、何を笑っておるんじゃ?」


「いえ! これからが楽しみだなと思いまして!」


「そうじゃな。これからも、うまく育ってくれるといいのう」


村人たちの笑顔を見ながら、私はうなずいた。

初収穫は成功。

でも、ここで終わりではない。

むしろ、ここからが本番だ。


「よーし! 次は、もっとたくさん育てられるように頑張りましょう!」


「おおー!」


村人たちの声が、森に響いた。

こうして、村の新しいキノコ栽培は、最初の収穫を迎えたのだった。

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