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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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ついに椎茸が顔を出した!?

「おい! これ……キノコじゃないか!?」


朝。

いつものように椎茸の原木を確認していた木工職人が、突然、大きな声を上げた。


「どうした?」


「こっちだ! ちょっと見てくれ!」


仲間の職人たちが駆け寄ってくる。

そして、原木を見た瞬間。


「おおっ! 本当だ!」


「キノコだ! キノコが生えてきたぞ!」


原木の表面から、小さなものが顔を出していた。まだ小さい。けれど、これまで観察してきた変化とは明らかに違う。


「ついに来たか!」


「本当に育つんだな!」


木工職人たちは、興奮した様子で原木を囲んだ。今まで、何度も確認してきた。

変化がある。でも、椎茸は出てこない。


そんな日々が続いていたのだ。

それだけに、今回の発見は嬉しい。


「村長にも知らせよう!」


「ちほさんにもだ!」


村人たちは、さっそく私を呼びに来た。


◇


「ちほさん! 椎茸が生えてきたぞ!」


「えっ!? 本当ですか!?」


私は、思わず立ち上がった。

ついに!?

本当に椎茸が生えてきたの!?


「どこですか! 見せてください!」


私は村人たちと一緒に、原木の管理場所へ向かった。そして……。


「おおおっ!」


原木から、小さなキノコが顔を出していた。


「これが……椎茸?」


「そうだ! 間違いないと思うぞ!」


「まだ小さいが、椎茸に見えるな!」


村人たちは、嬉しそうにうなずいている。

でも、ここは慎重に確認しないとね。

私はキノコに近づいた。


「……鑑定!」


すると。椎茸


「……おお!」


間違いない!


「椎茸です! 本物の椎茸ですよ!」


「おおおっ!」


「やったぞ!」


「ついに育ったんだな!」


村人たちから、歓声が上がった。

原木を選び、準備をし、菌を植え付けてから、ずっと観察を続けてきた。


そして、ついに椎茸が顔を出したのだ。


「いやあ、これは嬉しいな!」


「これで、村でもキノコを育てられるかもしれん!」


「まだ一本だけだ。ほかの原木も確認してみよう!」


喜びながらも、木工職人たちはすぐに記録を取り始めた。


どの種類の木だったのか。

どこに置いていたのか。

菌を植え付けてから、どれくらいの期間が経ったのか。


今回の結果は、今後の栽培にとって大切な手がかりになる。


うんうん!


こういうところは、さすが職人さんたちね!


◇


「……ところで」


私は、小さな椎茸をじっと見つめていた。


「鑑定結果に、+神が付いていないわね」


そうなのだ。


椎茸菌を鑑定したときには、確かに+神が付いていた。


だからこそ、成長が早くなるのではないかと期待していたのだけれど……。


今回、生えてきた椎茸そのものには、+神が付いていない。


「……どういうこと?」


私は、もう一度鑑定してみた。


結果は変わらない。


椎茸


うーん。菌には+神が付いていた。

でも、育った椎茸には付いていない。

となると……。


「地球から持ち込んだ果樹の実にも、+神は付かないのかしら?」


私は、ふと思いついた。

地球から持ってきた植物には、+神が付いていた。


ユーカリも、竹も、果樹もそうだった。

そして、それらは驚くほどの成長を見せた。

でも、育った果物そのものはどうなのだろう?

果樹に付いている+神と、そこから実った果物に付くものは、別なのだろうか。


それとも、そもそも+神は植物の成長にだけ影響するのだろうか?


「……謎!」


考えても、さっぱり分からない。

椎茸菌に付いていた+神が、菌の成長を早めたのかもしれない。

けれど、普通に育った場合との比較ができていない以上、断定はできない。


それに、椎茸が生えてきたからといって、栽培全体が成功したわけでもない。

これから、ほかの原木でも育つのか。

安定して収穫できるのか。

確認することは、まだまだある。


「まあ、今は椎茸が育ったことを喜びましょう!」


私は、ひとまず疑問を頭の隅に置くことにした。


◇


「さて、これからどうするかじゃな」


村長が、木工職人たちに声をかけた。


「まずは、この椎茸がどれくらい大きくなるのか、記録を続けましょう」


「そうだな。収穫する時期も見極めなければならん」


「ほかの原木も確認してみよう。これ一本だけでは、まだ何とも言えんからな」


村人たちは、さっそく次の作業に取りかかった。

小さな椎茸を見つけたからといって、すぐに収穫するわけではない。

成長の様子を観察し、適切な収穫時期を見極める。


そして、ほかの原木でも育つかどうかを確認する。

これが上手くいけば、村で椎茸を栽培できるようになるかもしれない。

森で採れるキノコだけに頼らず、計画的に収穫できる。


採れた椎茸は、料理に使える。

余った分は乾燥させて保存できる。


さらに、安定して収穫できるようになれば、商人に売ることだって考えられる。


「……ふふふ」


私は、思わず笑みを浮かべた。

キノコ鍋に、干し椎茸。

今まで森で採っていたキノコとは、また違った食生活が広がるかもしれない。


「ちほさん、また食べることを考えておるな?」


「い、いいじゃないですか! 食べることも大切ですよ!」


村長が笑い、周りの村人たちも笑った。

でも、本当に楽しみなのだ。


自分たちで育てた椎茸を、自分たちで料理して食べる。

それだけでも、村の暮らしが少し豊かになる気がする。

そして、もし栽培が軌道に乗れば、新しい産業にもつながる。


「よし! まずは、しっかり育てましょう!」


私は、原木から顔を出した小さな椎茸を見つめた。


+神の謎は、まだ分からない。


でも、椎茸が育つことは確認できた。

ここから先、どんな結果が待っているのだろう。


私は期待を膨らませながら、村人たちと一緒に成長を見守ることにした。

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