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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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椎茸の原木、その後は?

椎茸菌を原木に植え付けてから、しばらく経った。

村人たちは、定期的に原木の状態を確認していた。


「さて、今日はどうなっているかな?」


木工職人たちが、森の中に置かれた原木を一本ずつ確認していく。


「こっちは……特に変わりはないな」


「こっちも、見た目は同じだ」


「ん? これは少し違うか?」


一本の原木を持ち上げ、表面を確かめる。


「いや……気のせいかもしれん」


「うーむ。分からん! 椎茸が出て来ないと分からんわ!」


思わず、そんな声が上がった。

まあ、そうなるよね。


私だって、原木を眺めているだけで菌がどこまで広がっているのか分かるわけではない。


「ちほさん。これ、本当にキノコが生えるんだよな?」


「生えるはずですよ!この方法で栽培しているんですから!」


「そうか……。しかし、こうも変化がないとなあ」


「すぐに生えてくるわけではありませんからね。もう少し待ちましょう!」


そう答えながらも、私自身、少し気になっていた。


だって、あの椎茸菌には……。


+神


が付いていたのだから!

ユーカリも、竹も、果樹も、普通では考えられないほどの成長を見せた。

ならば、椎茸菌だって何か変化があってもおかしくない。


……いや、むしろ変化がない方がおかしいのでは?


「うーん……」


私は原木をじっと見つめた。


でも、見た目は普通だ。木の表面に、椎茸らしいものが生えているわけでもない。


「……鑑定!」


また念の為に、原木を鑑定してみた。

すると。椎茸菌。

やっぱり、+神が付いている。


「うーん……分からん!」


鑑定しても、成長の具合までは分からない。

菌が原木の中でどこまで広がっているのか、いつ椎茸が生えてくるのか。

そういったことまでは、教えてくれないようだ。


「……まあ、待つしかないか」


私は、ため息をついた。


◇


一方、木工職人たちは、記録を広げて相談していた。


「こちらの原木は、日陰に置いてある」


「こっちは、少し風が通る場所だったな」


「木の種類も違う。太さも違うぞ」


「これでは、どれが原因で変化が出たのか分からんな」


そうなのだ。


今回の実験では、木の種類も置き場所も複数ある。

それぞれの違いを調べるには、記録を見比べる必要がある。


「まあ、今はまだ判断できん。もう少し様子を見よう」


木工職人のひとりが、そう結論づけた。


「それに、原木の中で菌が広がっているなら、外から見ただけでは分からんかもしれん」


「なるほど。見た目に変化がなくても、何も起きていないとは限らないわけか」


「そういうことだな」


おお!いい考え方だ。

見た目に変化がないからといって、失敗だと決めつける必要はない。


今は、栽培を始めてからの期間も短いのだ。

記録を続け、原木が乾燥しすぎていないか、置き場所の状態に問題がないかを確認する。


そして、変化が現れるまで待つ。

それが、今できることなのだろう。


「ちほさん、しばらくはこのまま管理してみるぞ」


「はい! お願いします!」


村人たちは、原木の状態を記録し、元の場所へ戻していった。


◇


それから数日後。

私は、また椎茸の原木を見に来ていた。


「……うーん」


やっぱり、見た目はあまり変わらない。

少なくとも、私には分からない。

でも、気になる。


あの+神が、何も影響していないとは思えないのだ。


「もし、成長が早くなっているなら……」


私は、原木を見つめながら考えた。


植物の成長が早くなったときは、目に見えて変化があった。

ユーカリは、あっという間に森になった。

竹も、気づけば大きな竹林になっていた。

果樹も、季節を無視するような成長を見せている。

ならば、椎茸も成長が早くなるのではないだろうか?


「成長が早くなれば……椎茸も早く出てくるはず!」


……たぶん!

いや、そもそも、菌の成長とキノコが生えてくる時期が、どこまで関係しているのか。


私も詳しいわけではない。


原木の中で菌が広がることと、椎茸が発生することは別の段階だ。

だから、菌の成長が早くなったとしても、すぐに椎茸が生えてくるとは限らない。


「……うーん。考えても分からないわね!」


結局、そこに戻ってしまう。

だったら、観察を続けるしかない。


私は、原木の状態を記録している村人たちのところへ向かった。


「どうですか? 何か変化はありました?」


「今のところ、はっきりした違いはないな」


「そうですか……」


「まあ、焦っても仕方がない。毎日確認していこう」


「そうですね!」


私はうなずいた。


焦らず、記録を残し、変化を待つ。

それが今の方針だ。

ただし……。


「……早く生えてこないかなあ」


思わず、本音が漏れてしまった。


「ちほさん、やっぱり食べたいのか?」


「そ、それもありますけど! ちゃんと育つか気になるんですよ!」


「ははは! まあ、楽しみに待とうじゃないか!」


村人たちの笑い声が、森に響いた。

椎茸菌に付いていた+神。

それが、どんな変化をもたらすのか。

今はまだ、分からない。


でも、もし本当に成長が早くなるのなら……。

村の新しい産業が、思っていたよりも早く始まるかもしれない。


私は、もう一度原木を振り返った。


「……頑張って育ってね!」


椎茸が顔を出す日を楽しみに、私はその場を後にした。

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