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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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干し果物、甘さが変わった!?

干し場での乾燥実験を始めてから、さらに数日。

今度は、こちらの世界の果物の乾燥具合を確認することになった。


「おお! こんなに小さくなるのか!」


村人たちが、干し場に並べられた果物を手に取っている。

干す前はそれなりの大きさがあった果物も、水分が抜けて小さくなっていた。


「キノコもそうだったが、果物も随分と変わるんだな」


「それでは、さっそく味見してみましょう!」


私は乾燥した果物をひとつ手に取った。

見た目は少し変わったけれど、果たして味はどうだろう?


ひと口、かじってみる。


「……あっ! 甘い!」


生のときよりも、甘さがぎゅっと濃くなったように感じられる。

もちろん、果物によって違いはあるだろうけれど、これはなかなかいい。


「本当だ! こんなに甘くなるのか!」


「水分が抜けただけなのに、不思議なものだな」


「こっちも食べてみろ! また違った味がするぞ!」


村人たちも、次々と味見を始めた。

干しキノコでは旨味が感じられ、干し果物では甘さが際立つ。

同じ乾燥という方法なのに、食材によって違う発見がある。


これは面白い!


「ちほさん、持ってきた柿やイチジクも、こんなふうにできるのか?」


「はい! 柿なら干し柿にできますし、イチジクも乾燥させて保存できますよ!」


もっとも、地球から持ってきた果樹は、まだ育っている途中だ。

実がたくさん採れるようになるには、もう少し時間がかかる。


でも、収穫できるようになれば、干し柿や干しイチジクも作れる。

ほかの果物だって、乾燥させることで保存しやすくなるものがあるはずだ。


「果物がたくさん採れるようになれば、食べきれない分も保存できるわね!」


「そうだな! 収穫できる時期に作っておけば、別の季節にも食べられる!」


村人たちも、すっかり乗り気だった。

干し場は、ただ食べ物を乾燥させるだけの場所ではなくなりつつある。


村の食料を長持ちさせ、食べ方を増やし、いずれは商品を作る場所にもなるかもしれない。


うんうん!これはいい流れね!

ただ、私はひとつ気になっていた。


「……ところで、キノコ料理も、もっと種類を増やせないかな?」


「キノコ料理か?」


「はい。干しキノコは旨味が強く感じられましたよね。なら、いろいろな料理に使えば、料理の幅が広がるんじゃないかと思って」


鍋に入れるだけでも美味しかった。

でも、それだけではもったいない。

スープに入れたり、肉と一緒に煮込んだり、細かく刻んで料理に混ぜたり。

キノコの種類や戻し方によっても、味が変わるかもしれない。


……うーん。


考えていたら、お腹が空いてきた。


「キノコか……」


私は腕を組んだ。


「そうだ! 椎茸!」


椎茸なら、地球では栽培されている。

菌を手に入れれば、この世界でも栽培できるかもしれない。


もちろん、こちらの木や気候で上手く育つかは試してみないと分からない。


それでも、森で採れるキノコだけに頼るより、安定して収穫できる方法があれば便利だ。


食料になるだけでなく、乾燥椎茸として保存したり、商品として売ったりできる可能性もある。


「よし! 頼んでみよう!」


私は、さっそく小屋へ戻った。


◇


「さとるー? いる?」


私は、いつものように鞄に向かって声をかけた。


「なにー?」


向こうから、さとるの声が返ってくる。


「椎茸菌の注文しておいて!」


「……椎茸? 原木?」


「いや、菌の方! 確か注文できるから!」


椎茸の栽培には、原木に菌を植え付ける方法もあれば、菌床を使う方法もある。

まずは、手に入りそうなものを調べて、試せるところから始めればいい。


「分かった! ちょっと調べてみるよ!」


「お願いね!」


これで、ひとつ準備が進んだ。

私は鞄から離れると、机の上に置いてあるパソコンを開いた。


「さて……椎茸の栽培方法は、と」


検索画面に文字を打ち込んでいく。


原木栽培。菌床栽培。必要な木の種類。

栽培に適した温度や湿度。

収穫までにかかる期間。


調べれば調べるほど、いろいろな情報が出てくる。


「へえ……原木に菌を植え付けて、そこから椎茸が育つのね」


森には木がたくさんある。


ユーカリもあるけれど、椎茸に向いている木があるかは別の話だ。


地球で使われている木なら、こちらでも同じように育つとは限らない。


まずは、村にある木で試す必要がありそうだ。


「それに、菌そのものを村で増やせるようになったら……」


私は、ふと手を止めた。


椎茸菌を毎回地球から取り寄せるのではなく、こちらで増やせるようになれば、栽培を続けやすくなる。


村で菌を管理し、原木を準備し、椎茸を育て、収穫したものを食べたり乾燥させたりする。

そこまでできれば、立派な産業になるかもしれない。


ただし、菌を増やす方法は、原木に菌を植え付けることとは別の話だ。


適切な環境を整えなければならないし、ほかの菌が混ざってしまう可能性もある。


「……これは、ちょっと調べないと無理か」


私は、椅子の背もたれに体を預けた。

いきなり菌を増やすところまで考えるのは、さすがに早い。


まずは、椎茸菌を手に入れる。


それから、こちらの環境で育つか試す。

栽培ができたら、収穫量を増やす方法を考える。


ひとつずつ進めればいい。


「よし! まずは椎茸栽培の情報をまとめよう!」


私は再びパソコンに向き直った。

干し場から始まった食料保存の工夫。


そこから、キノコの栽培へ。


もし成功すれば、森で採れるキノコだけに頼らず、村で計画的に収穫できるようになるかもしれない。


そして、収穫した椎茸を乾燥させれば、保存食にもなる。


……ふふふ。


キノコ鍋だけじゃなく、いろいろな料理が作れるようになるかもしれない。


これは、期待できそうだ!

私は、椎茸の栽培方法を調べ続けるのだった。

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