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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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干しキノコ、旨味が増えた!?

干し場を作ってから数日後。

村人たちが行っていた乾燥実験に、最初の結果が出た。


「おお! 見てみろ!」


「こんなに小さくなるものなのか?」


干し場に集まった村人たちが、乾燥させたキノコを手に取っている。

生のときにはそれなりの大きさがあったキノコも、乾燥させると一回りも二回りも小さくなっていた。


「水分が抜けたからですね!」


私は記録用の紙を確認した。

干す前の大きさ、重さ、乾燥させた日数。

うんうん。

ちゃんと記録してくれている。


「これなら、保存できる期間も長くなりそうだな!」


「ただ、小さくなりすぎて、食べるところが減ったようにも見えるが……」


「まあまあ! 実際に食べてみましょう!」


見た目だけでは分からない。

味も確かめてみないとね!

というわけで、さっそく調理開始!


今回作るのは、簡単なキノコ鍋だ。


乾燥キノコを水で戻し、鍋に入れて煮込む。

味付けは、村で普段から使っている調味料を中心に、できるだけシンプルにした。

これなら、キノコそのものの味が分かるはずだ。


「よし、できたぞ!」


湯気の立つ鍋が、みんなの前に置かれた。

ふわりと漂う香り。

生のキノコを使ったときとは、少し違う。


「では、いただきます!」


私は木の器によそってもらい、ひと口食べた。

……おお!


「美味しい!」


キノコの味が、しっかりしている。

生のキノコを使った鍋も美味しいけれど、こちらはまた違った味わいだ。


「美味い! 生キノコとは、また別の旨味だ!」


「本当だな! こんなに味が変わるとは思わなかったぞ!」


村人たちも、次々と鍋を口に運んでいる。


「しかも、乾燥させておけば保存ができる!」


「採れたときに全部食べなくてもいいわけか!」


「そうそう! 食べきれない分を乾燥させておけば、あとで使えますからね!」


これはいい。


キノコがたくさん採れる時期に乾燥させておけば、採れない時期にも食べられる。

しかも、生のキノコとは違った旨味まで楽しめる。


保存できるだけではなく、美味しくなるのだから、村の食生活にとっても大きな一歩だ。


「うん! これならいいわね!」


私は満足して、もうひと口食べた。

……うん。

美味しいものは正義!


そんなことを考えながら鍋を囲んでいると、別の村人が干し場からキノコを持ってきた。


「ところで、こっちはどうする?」


見ると、まだ少し水分が残っていそうなキノコがあった。


「こっちは、もう少し干した方がよさそうですね」


「やはり、干す日数が足りなかったのか?」


「それもあるかもしれません。ただ、キノコの大きさや厚さによっても違うと思います」


私は記録用の紙を広げた。


「このキノコは、干す前から大きかったんですね」


「そうだな。こっちは小さかったから、同じ日に干し始めても乾き方が違ったのか」


「そういうことです!」


村人たちは、記録を見比べながら考え始めた。

「なら、次は少し小さく切ってみるか?」


「いや、切らずに干したものも残しておこう。違いが分からなくなる」


「風の当たり方も違うんじゃないか? 端の方と真ん中では、乾き方が違うかもしれん」


「なるほど。置く場所も記録しておけばいいわけか!」


おお!いいぞ、いいぞ!


私が細かく指示しなくても、村人たちが自分たちで問題を見つけて、次の実験方法を考えている。


最初は、キノコを干してみるだけだった。


それが今では、乾燥させる時間、食材の大きさ、置く場所まで比較しようとしている。

こうやって少しずつ、村独自の乾燥技術が身についていくのね。


「よし! 次に干すときは、切ったものと切らないものを両方用意しよう!」


「風の当たり方も調べてみるか!」


「記録も忘れるなよ!」


村人たちは、すっかりやる気になっていた。

私はその様子を見ながら、ふと思った。

乾燥キノコが美味しくできたのなら、果物も期待できるんじゃない?


干し柿や干しイチジク。


生のときとは違う甘さが楽しめるかもしれない。


それに、乾燥技術が身につけば、ほかの食材にも応用できる。

もちろん、食材によって適した方法は違うだろうし、乾燥させただけで何でも安全に保存できるわけではない。


でも、ひとつずつ確かめていけばいい。


「……乾燥させるだけなのに、こんなに味が変わるのか!」


村人のひとりが、しみじみとつぶやいた。

本当に、その通りだ。

そして、これはまだ始まりにすぎない。


「さて、次は果物の乾燥具合も確認しましょうか!」


「おお! 今度は果物か!」


村人たちは、さっそく干し場へ向かっていった。


……ふふふ。

異世界の干し果物。

いったい、どんな味になるのかな?

私は、次の味見を楽しみにするのだった。

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