干し場、初めての実験!
完成した干し場。
屋根があり、風通しも良く、雨や夜露を防げる。虫や鳥への対策も考えられている。
あとは、実際に使ってみるだけだ。
「さて、まずは手に入るキノコを使って、乾燥実験をしてみましょうか!」
私がそう提案すると、集まっていた村人たちは、それぞれ持ってきた材料を並べ始めた。
「果物なら、これがあるぞ!」
「こっちは森で採ってきたキノコだ!」
「干すだけなら簡単そうだが、どのくらい干せばいいんだ?」
「それを調べるのが実験ですよ!」
私は持ってきた紙を取り出した。
「まず、干す前の重さと大きさを記録します。それから、何日干したのかも記録してください。途中で状態が変わったら、それも書いておきましょう」
「重さまで量るのか?」
「はい! 乾燥すると水分が抜けるので、重さも変わるはずですからね」
「なるほど。見た目だけじゃなく、数字でも残すわけか」
そうそう!
感覚だけに頼るのも大切だけど、記録があれば次に作るときの参考になる。
しかも、大きさや厚さが違えば、乾燥するまでの時間も変わるかもしれない。
最初から完璧な答えを出す必要はない。何度も試して、村に合ったやり方を見つけていけばいいのだ。
「では、始めましょう!」
村人たちはキノコを広げ、それぞれの記録を取り始めた。
「こっちは大きいから、少し時間がかかりそうだな」
「なら、小さく切ったものも並べてみるか?」
「それなら、違いが分かるかもしれん!」
おお!
私が言わなくても、ちゃんと比較実験まで始めている。うんうん! ちゃんと守ってるわね!
私は少し離れたところから、村人たちの様子を眺めた。これなら、私が毎回指示を出さなくても大丈夫そうだ。
……うん。私の仕事が減っている気がする。
いや、いいことなんだけどね!
村が自分たちで考えて、動いてくれるようになるのが理想なのだから。
そんなことを考えていると、一人の村人が首をかしげた。
「なあ? キノコはこれでいいとして、肉や魚も保存したいなら、塩の使い方も今までと同じでいいのか?」
ん?肉や魚?確かに!
果物を乾燥させるのと、肉や魚を保存するのとでは、話が違う。
「……そう言われると、確かに気になりますね」
「今までも、肉や魚は塩漬けにして保存してきたがな」
「なら、それも実験してみましょう!」
私がそう答えると、村人たちは顔を見合わせた。
「実験か。何を変えてみるんだ?」
「まずは、今まで通りのやり方で作ってみましょう。それから、塩の量や干す日数を変えたものを作って、違いを調べていけばいいと思います」
「なるほどな。今までのやり方が基準になるわけか」
「そうです! ただし、肉や魚は傷むと危ないので、見た目や匂いだけで安全だと判断しないようにしましょう。保存できる条件は、きちんと調べないといけません」
そこは大事だ。
塩を使ったからといって、必ず安全に保存できるわけではない。
乾燥させれば何でも大丈夫、というわけでもないのだ。
この世界には冷蔵庫もない。
だからこそ、食べ物を長持ちさせる技術は、村の暮らしにとって大きな意味がある。
「塩漬けしたものなら、今もあるぞ?」
「それなら、今までの方法を確認するところから始められますね!」
「よし。なら、肉と魚も少しずつ試してみるか!」
村人たちは、さっそく保存食について話し合い始めた。キノコを干す。
そして、肉や魚の塩漬けについても、今までの方法を確かめながら改良していく。
ひとつの干し場から、いろいろな可能性が広がっていく。
干し果物が作れるようになれば、収穫した果物をすぐに食べきる必要もなくなる。
キノコだって、採れたときに加工しておけば、採れない時期にも利用できるかもしれない。
さらに乾燥技術が身につけば、ほかの食材にも応用できる可能性がある。
保存食が増えれば、食料が不足しやすい季節への備えにもなるだろう。
もちろん、すぐに何もかも上手くいくわけではない。
失敗もするだろうし、思ったように乾燥しないこともあるはずだ。
でも、その失敗も記録に残せば、次に生かせる。
そして、村人たちが技術を身につければ、それは単に自分たちの食料を確保するだけでは終わらない。
干し果物や乾燥キノコ、塩漬けの肉や魚。
保存できる商品が増えれば、商人に売れる品物も増えていく。
「……干し場ひとつで、結構いろいろできそうね」
私がつぶやくと、村長が笑った。
「まだ始めたばかりじゃぞ。まずは、きちんと保存できるものを作らねばな」
「そうですね!」
いきなり商品化を考えるより、まずは村で使えるものを作る。そして、安定して作れるようになったら、売り物にすることを考えればいい。
うん。この順番が大事だ。
私は干し場に並べられたキノコを見渡した。
これが上手くいけば、村の食生活が少し豊かになる。
そして、いつかは村の新しい産業にもなるかもしれない。
「よーし! まずは、乾燥実験の結果を楽しみに待ちましょう!」
「ちほさんは、食べるのを楽しみにしておるだけではないか?」
「そ、そんなことありませんよ!」
……いや、楽しみなのは本当だけど!
だって、干し果物って美味しいじゃない!
異世界の果物で作ったら、どんな味になるんだろう?
私は、並べられたキノコを見ながら、ひそかに期待を膨らませるのだった。




