村の干し場を作ろう!
「さて、今回は干し場作りだね!」
ちほは、村人たちと一緒に作業場所へやってきた。果物を保存するために考えた干し場。
それが、キノコや薬草にも使えるかもしれないという話になり、村人たちがさっそく準備を始めていた。
「えっと、これが資料です!」
ちほが取り出したのは、印刷した写真だった。
設計図というほどのものではない。
地球で使われている、屋根付きの乾燥小屋の写真である。
「……設計図っていうか、写真だけどね」
ちほは小さく呟いた。
しかし、村の職人たちは写真を覗き込むと、すぐに話し合いを始めた。
「なるほど。屋根があって、中に棚を作るのか」
「壁は全部塞がなくてもよさそうだな」
「そうだな。風が通るようにした方がいい」
「雨さえ入らなければ、これで十分か」
「うむ。大体分かった」
「……え?」
ちほは思わず聞き返した。
「もう分かったんですか?」
「まあ、何となくだがな」
職人の一人が笑う。
「写真に写っている物を見れば、どう組み立てているか想像できる。細かいところは、作りながら考えればいい」
「流石、職人……」
ちほは感心した。
自分なら、写真を見ても「ふーん、こんな感じか」で終わってしまいそうだ。
それを、この人たちは実際に作るところまで想像できるらしい。
「じゃあ、始めるか!」
「おう!」
村人たちが動き始めた。まずは、骨組み作りから。
「柱は木材でいいだろう」
「屋根の骨組みは竹も使えそうだな」
「なら、竹と木材を組み合わせてみるか」
村で手に入る材料を活用しながら、少しずつ形を作っていく。
「屋根は雨が流れるように、傾斜をつけよう」
「そうだな。雨水が溜まったら困るからな」
「屋根材はどうする?」
「木の板でもいいが……竹を半分に割って並べる方法もあるぞ」
「竹なら、まだまだあるからな」
「よし、試してみよう!」
竹林から大量に採れる竹。
それが、こんなところでも役に立つ。
ちほは、その様子を見ながら頷いた。
「うんうん。竹があってよかったね!」
骨組みができると、次は棚作りだ。
「果物は、こういう棚に並べて干すんだな」
「キノコも同じように置けそうだ」
「薬草は種類ごとに分けられるようにしておこう」
「それなら棚を何段かに分ければいい」
「いや、薬草は香りが移ることもあるかもしれん。果物やキノコとは別にした方がいいんじゃないか?」
「なるほど。なら、棚を分けておこう」
村人たちは、使い方まで考えながら棚を配置していく。そして――。
「壁はどうする?」
「全部塞ぐ必要はないだろう」
「風が通らなくなるからな」
「ただ、虫や鳥が入るのは困るぞ」
「なら、網を張ればいいんじゃないか?」
「網か……」
「目の細かいものがあれば、虫も入りにくいだろう」
「よし、それも探してみよう」
雨や夜露を防ぐ屋根。
風が通るように開けた壁。虫や鳥を防ぐ網。
果物、キノコ、薬草を分けて干せる棚。
写真を参考にしながら、村の職人たちは自分たちなりの干し場を作り上げていった。
「……すごいなぁ」
ちほは、少し離れた場所から眺めていた。
「私、写真を持ってきただけなんだけど……」
それでも、村人たちはちゃんと形にしてくれる。
しかも、写真をそのまま再現するのではなく、村にある材料や使い方に合わせて工夫している。
「こういうところが、職人さんなんだろうなぁ」
ちほは感心するばかりだった。
◇
やがて、屋根と棚ができあがった。
「よし、こんなところか」
「風も通るし、雨も入りにくそうだな」
「網を張れば、虫や鳥も防げそうだ」
「これなら使えそうだな」
村人たちは、完成した干し場を満足そうに眺めていた。
ちほも中を覗いてみる。
「おお! ちゃんとできてる!」
まだ実際に使ったわけではない。
乾燥具合や使い勝手は、これから確かめる必要がある。
それでも、最初の設備としては十分そうだった。
「これで、果物が採れた時も安心ですね!」
「ああ。収穫できたら、さっそく試してみよう」
「キノコも干してみたいな」
「薬草もだな」
そんな話をしていた時だった。
一人の村人が、ふと思いついたように口を開いた。
「……なあ?」
「ん?」
「これなら、肉や魚も干せるんじゃないか?」
「…………」
一瞬、全員が黙った。そして――。
「おお!」
「確かに!」
「肉や魚も、保存できるようになれば便利だな!」
「そうだな。たくさん獲れた時に、すぐに食べきれなくても無駄にならん!」
ちほの目が輝いた。
「おおお! それはいいですね!」
果物を干す。キノコを干す。薬草を干す。
そして、肉や魚まで。
「めちゃくちゃいい流れじゃない!」
ちほは思わず声を上げた。
最初は、果樹園で採れる果物を保存するためだった。
それが、村にあるさまざまな食材を保存する話へと広がっている。
収穫した果物を無駄にしない。
山で採れたキノコを長く利用する。
薬草を必要な時に使えるようにする。
さらに、肉や魚まで保存できれば、食料を無駄にすることも減らせるかもしれない。
「……うん!」
ちほは満足そうに頷いた。
「これは、村全体の食料保存に発展しそうね!」
ただし、肉や魚は果物と同じように干せばいいわけではない。塩漬けにするのか。
どのように乾燥させるのか。
どうすれば傷みにくく、安全に保存できるのか。そこは、別に考える必要がある。
「まあ、それはこれからですね!」
ちほは、完成した干し場を見上げた。
「まずは果物から。使い方が分かってきたら、ほかの物にも挑戦してみましょう!」
「そうだな!」
村人たちも頷く。
こうして、村に初めての本格的な干し場が完成した。そして、この干し場は、果物を保存するだけの場所では終わらないかもしれなかった。




