果樹園の苗木は順調です!
「さて、果樹園はどうなってるかな?」
小屋を出たちほは、果樹園へ向かっていた。
竹林にユーカリの森。
最近は植物関係で驚かされることが多い。
「果樹の方は、ちゃんと管理できてるといいけど……」
そんなことを考えながら歩いていると、果樹園から村人たちの声が聞こえてきた。
「おお! こっちは芽が出たぞ!」
「本当か?」
「ほら、見てみろ!」
「こっちはまだだな……」
「こっちの枝は、少し根が出てきたぞ」
どうやら、村人たちは果樹を増やす実験をしているらしい。
「皆さん、こんにちは!」
「ああ、ちほさん!」
「どうですか? 果樹は増やせそうですか?」
「まだ何とも言えんな」
村人の一人が、植えたばかりの苗を指差す。
「こっちは挿し木だ」
「枝から根が出てきたものもあるが、変化のないものもあるな」
「なるほど……」
ちほは苗木を覗き込んだ。
同じ種類の果樹でも、育ち方には違いがあるらしい。
「全部が同じように育つわけじゃないんですね」
「そういうことだな」
「だから、いつ植えたかも記録している」
「おお!」
ちほは感心した。
「ちゃんと記録までしてるんですね!」
「当たり前だろう?」
村人は笑った。
「何も記録していなければ、次にどうすればいいのか分からなくなるからな」
「確かに!」
ちほは頷く。
挿し木で増やしたもの。それぞれの成長具合を確認して、違いを調べる。
こうすれば、どの方法がこの土地に合っているのか、少しずつ分かってくるはずだ。
「……うん。順調そうでよかった!」
ちほは、ほっと胸を撫で下ろした。
これなら、自分が付きっきりにならなくても大丈夫そうだ。
……ただし。
「…………」
ちほは、元気に育っている苗木を見つめた。
葉の色も良い。
茎もしっかりしている。
植えてから、まだそれほど日が経っていないはずなのに。
「……やっぱり、+神って植物を丈夫にする効果もあるのかな?」
思わず呟く。
ユーカリは森になった。
果樹も、普通では考えられないほど元気に育っている。そして竹は、あの有様だ。
「うーむ……」
成長を早めるだけなのか。
それとも、病気や環境の変化にも強くなるのか。
「……分からん!」
ちほは、あっさり考えるのをやめた。
「まあ、元気に育っているなら、今はいいか!」
「ちほさん?」
「いえ、何でもありません!」
村人が不思議そうな顔をしていたので、ちほは慌てて話を変えた。
「ところで、果樹が実をつけるまでには、まだ時間がかかりますよね?」
「そうだな。すぐに収穫できるわけではない」
「ですよね……」
ちほは少し考える。
「だったら、今のうちに収穫した後のことも考えておきませんか?」
「収穫した後?」
「はい。果物をどう保存するか、ということです」
村人たちは顔を見合わせた。
「保存か……」
「今でも、果物を干して保存する方法はあるぞ」
「そうですね!」
ちほは頷いた。
「まずは、干すことができる果物から考えましょう!」
◇
「例えば、前に少しお話しした柿ですね」
ちほは持ってきた資料を取り出した。
「熟した柿をそのまま食べるのもいいですけど、渋柿なら皮を剥いて干すことで、甘くなるものがあります」
「ほう。干すと甘くなるのか?」
「はい。地球では、干し柿として食べられています」
「それは面白いな」
村人たちは興味深そうに資料を覗き込む。
「他にも、イチジクは干して保存できますし、栗も乾燥させたり、加工したりする方法があります」
「なるほどな」
「ただ、果物によって向いている保存方法は違います。実際に試してみる必要がありますね」
「それなら、まずは少しずつ試してみるか」
「そうですね!」
ちほは、嬉しそうに頷いた。
私が全部決める必要はない。
保存方法の例を紹介すれば、村人たちが実際に試し、この土地に合った方法を見つけてくれるだろう。
「それと……」
ちほは、ふと思い出した。




