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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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砂糖作りへの第一歩!

小屋に戻ったちほは、考えていた。


「……しかし」


ちほには、もう一つ気になっていることがあった。


「そうだ。果樹園!」


思わず声が出る。

竹林やユーカリの森に気を取られて、少し後回しになっていた。


「果樹園の方も、最低限は考えないとね!」


村人たちに管理を任せてはいる。


果樹を増やす方法も、少しずつ試しているはずだ。けれど、果樹は植えたら終わりではない。

実がなるまで育てなければならないし、収穫した後のことも考える必要がある。


「干し果物にするのか、梅を漬けるのか……」


それに、砂糖が手に入ればジャムも作れるかもしれない。


「サトウキビと甜菜、どうなったかな?」


弟のさとるに頼んだままだった。


「あとで確認しないと」


ちほは指を折って数える。

竹製品。ユーカリ製品。果樹園。砂糖作りの準備。


「……あれ?私、結構やること多くない?」


しばらく考えてから、ちほは首を振った。


「いやいや。全部を自分でやる必要はない!」


そう。

果樹園のことも、村人たちと相談すればいい。

私が知っている情報を渡し、村人たちが自分で考えられるようにする。

今までと同じだ。


「よし! まずは果樹園の様子を見に行こう!」


ちほは立ち上がった。

……その時だった。


「姉さーん!」


バッグの向こうから、さとるの声が聞こえてきた。


「ん? さとる?」


「ちょうどよかった。サトウキビと甜菜の件だけど……」


「どうだった?」


ちほは思わず身を乗り出す。


「サトウキビは、流石に無理だって」


「ええっ!?」


「苗を手に入れるのは難しいみたいだよ」


「そ、そうなんだ……」


サトウキビは熱帯や亜熱帯で栽培される作物だ。苗を手に入れられる場所も限られる。

さすがに、何でも簡単に手に入るわけではないらしい。


「じゃあ、甜菜は?」


「甜菜なら手に入るから、少し待ってくれって」


「おおっ!」


ちほの顔が明るくなる。


「よかった!」


甜菜は砂糖の原料になる作物だ。

サトウキビが駄目でも、甜菜が手に入るなら砂糖作りへの道は残されている。


「分かった! じゃあ、甜菜はお願いね!」


「了解。手に入ったら話しかけるよ」


「お願い!」


さとるとの鞄越しの会話が終わる。

ちほは満足そうに頷いた。


「よし! これで砂糖作りの第一歩は確保かな!」


……まだ種が手に入ったわけではない。

育つかどうかも分からない。

そして、砂糖を作る方法だって、これから調べなければならない。


「……まあ、何とかなるでしょ!」


最近は、そんなことばかりだ。

植えたユーカリは森になり。

果樹は想像以上に育ち。

竹は竹林になっていた。


「……いや、あの成長速度は普通じゃないんだけどね」


ちほは思わず遠い目をした。

それでも、もし甜菜がこちらの世界でも育つなら――。

果物を甘く煮詰めて、ジャムにできるかもしれない。

甘い保存食が作れれば、村の新しい商品になる可能性もある。


「ふふふ……」


ちほの口元が緩む。


「果物に砂糖。これは期待できる!」


ただし、まずは甜菜を育てるところからだ。


「よし! 果樹園の様子を見に行こう!」


ちほは小屋を出た。

村では、商人が来る日に向けて商品作りが続いている。


竹籠に、ユーカリ製品に、木工品。


そこへ果樹の加工品まで加われば、村で作れる商品はさらに増える。


「うんうん。いい感じ!」


ちほは歩きながら頷いた。

もっとも――これ以上、植えた植物が勝手に森にならなければいいのだが。


「……いや、ほんとに頼むよ?」


誰に向かって言ったのか。

それは、ちほにも分からなかった。

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