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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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商人が来る前に、商品を作ろう!

「よーし! 商人さんが来る前に、できるだけ商品を作っておこう!」


村長の声が響いた。

それを合図に、村人たちが一斉に動き始める。


「竹籠は、こっちに積んでおくぞ!」


「大きい物と小さい物は分けておけ!」


「蓋付きの籠も、もう少し作っておこう!」


竹籠作りは、すっかり村の仕事の一つになっていた。最初は試しに作っただけだったのに、今では大きさも形もさまざまだ。


大きな籠は農作業用。

中くらいの籠は、収穫物や薪を運ぶため。

小さな籠は、日用品を入れるのに便利だ。

さらに、蓋付きの籠も作られ始めている。


「これなら、用途に合わせて選べるな」


「そうだな。使う場所によって形を変えればいい」


職人たちは、実際に使った村人たちの意見を聞きながら、少しずつ改良を続けていた。

ちほは、その様子を眺めていた。


「うんうん。順調、順調!」


竹籠だけではない。

ユーカリを使った商品作りも進んでいる。


「香り袋は、これでいいか?」


「もう少し葉を入れた方が香りが強くなるんじゃないか?」


「こっちは靴や物置に置く消臭袋だ。香り袋とは分けておこう」


「石鹸も、もう少し試してみるぞ!」


村人たちは、それぞれの持ち場で工夫を重ねていた。


ユーカリの葉を集める者。香りを抽出する者。

布を縫って袋を作る者。石鹸を試作する者。


そして、ユーカリ材を加工する木工職人たち。

それぞれが、自分たちにできることを考えて動いている。


「……うむ!」


ちほは腕を組んで頷いた。


「非常に良い流れができてる!」


最初は、ちほが地球の商品や作り方を紹介していた。しかし、今は違う。


村人たちが自分たちで考え、試し、改良している。ちほが一つの商品を紹介すれば、それをきっかけに別の商品が生まれることもある。


「これなら……」


ちほは、少しだけ真面目な顔になった。


「私がもし急にいなくなっても、自立してやっていけるかな」


もちろん、まだ問題はある。


地球の商品や情報がなければ、思いつかないこともあるだろう。それに、作った商品が必ず売れるとは限らない。


それでも、今の村人たちなら、自分たちで工夫していける気がした。


「……うん」


ちほは小さく頷く。

自分がいなければ何もできない村ではなく、自分がいなくても続いていく村。

それが理想だった。


「まあ、まだまだこれからだけどね!」


ちほは、いつもの調子に戻った。


◇


「ちほさん!」


「ん?」


声をかけてきたのは、木工職人だった。

その手には、見慣れない木製品がある。


「これも一緒に見てもらえないか?」


「新商品ですか?」


「ああ。ユーカリ材を使って、ちょっと試してみたんだ」


差し出された品を、ちほは受け取った。


「これは……?」


木で作られた、小さな蓋付きの箱だった。

ただの箱ではない。

蓋の部分には細かな細工が施され、側面には異なる色合いの木材が組み合わされている。


「おお……!」


ちほは思わず声を上げた。


「これ、いいですね!」


「そうか?」


職人が嬉しそうに笑う。


「ユーカリ材は水に強い。それに、他の木材と組み合わせても面白いんじゃないかと思ってな」


「なるほど……」


「まだ試作品だ。蓋の具合も、もう少し調整したい」


「でも、こういう商品なら、地球でも売れそうです!」


「本当か?」


「はい!」


ちほは箱を眺めながら考えた。

小物入れとして使える。装飾品を入れてもいい。大きさを変えれば、用途も増える。


「これ、いくつか種類を作ってみてもいいかもしれませんね」


「そうだな。大きさを変えたり、模様を変えたり……いろいろ試してみるか」


職人は、すでに次の案を考え始めていた。


「お願いします!」


ちほは箱を返した。


「……いやあ、いいねぇ」


自分が教えたわけではない。

職人が、自分で考えて作った商品だ。

こういうものが増えていけば、村の産業はもっと強くなる。


「……うん。やっぱり、いい流れだ」


ちほは、満足そうに笑った。

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