竹籠、村の新商品になる!
竹籠を作り始めて、しばらく。
村のあちこちで、竹籠が使われるようになっていた。
「これ、便利だな!」
「野菜を運ぶのが楽になったぞ」
「薪を入れて運ぶのにも使える」
「収穫した物をまとめるのにも丁度いいな」
最初は試作品だった竹籠。
それが、実際に使ってみると予想以上に便利だった。そして――。
「こっちは持ち手を長くした方がいいな」
「そうだな。肩に掛けられるようにすれば、もっと楽になる」
「農作業用なら、底をもっと丈夫にしよう」
「重い物を入れるからな」
別の村人からも声が上がる。
「子どもでも持てる小さい籠も欲しい」
「それなら、小さく編めばいい」
「蓋付きも作ろう」
「それなら、薪用と収穫用で形を変えた方がいいな」
気がつけば――竹籠の改良案が、次々と出ていた。ちほは、少し離れたところから、その様子を眺めていた。
「……すごいなぁ」
最初は、一つの竹籠だった。
それを実際に使ってみる。
使ってみて、不便なところを見つける。
そして、改良する。
「やっぱり、これが一番いいよね」
ちほが一人で考えて作るより、ずっと良い。
「使う人が考えて、作る人が改良する」
そうやって村に合った竹籠になっていく。
◇
そんなある日。
村長が竹籠を一つ持ち上げた。
「……これ」
「はい?」
「商品にもできるんじゃないか?」
「!」
ちほが振り返る。
「商品?」
「そうじゃ」
村長は竹籠を見る。
「この村では、もう普通に使える」
「はい」
「じゃが……」
村長は少し考える。
「この世界では竹そのものが高級品じゃ」
「そうでしたね」
「なら、竹籠も当然……」
「高く売れる?」
「可能性はあるじゃろうな」
ちほは竹籠を見る。
今まで村で使う生活用品だと思っていた。
でも――それ自体が商品になる。
「……だったら」
ちほは竹林を見る。
「たくさん作って出荷できれば、この村はもっと潤うかもしれませんね」
「そうじゃな」
村長も頷く。
「竹籠だけではない」
「え?」
「ユーカリを使った品も、最近増えてきておる」
「そういえば……」
ユーカリの香り袋。石鹸。消臭用品。温泉用の香り。さらにユーカリ材を使った木工品も、少しずつ増えている。
「今は、それらを作っておく」
村長が言う。
「次に商人が来るまでに、できるだけ商品を作っておくんじゃ」
「なるほど」
「売れる物が増えれば、商人もまた来るじゃろう」
「商人さんが来る頻度が上がれば……」
ちほも続ける。
「この村に入ってくる物も増える」
「そういうことじゃ」
今までは、村から外へ売る物が少なかった。
だから商人が来る理由も少ない。
しかし――竹籠。ユーカリ製品。木工品。
そして、これから増えていく果樹の加工品。
売れる物が増えれば、商人にとっても魅力的な村になる。
「商品を売る」
「そのお金で、村に必要な物を買う」
「また商品を作る」
「さらに商人が来る」
ちほは、その流れを想像する。
「……いい循環になりそう」
「そうじゃな」
村長も笑う。
「今までは、売る物が少なかった」
「はい」
「ならば、作ればいい」
「……そうですね」
ちほは笑った。
「じゃあ、商人さんが次に来るまでに、いっぱい作りましょう!」
「おう!」
「竹籠を増やすぞ!」
「ユーカリの品も作らんとな!」
「新しい竹製品も試してみよう!」
村人たちの声が響く。
ちほはその様子を見ながら、ふと思った。
この村は、少しずつ変わっている。
最初は、ただの小さな村だった。
それが今では――自分たちで資源を見つけ、自分たちで加工し、自分たちで商品を作り、それを商人に売ろうとしている。
「……うん」
ちほは満足そうに頷いた。
「なんか、村が商売を始めたって感じだね」
そして村では、次の商人がやって来る日まで――竹籠やユーカリ製品を作る日々が始まった。




