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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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竹籠、完成!

「できた!」


竹を割り、細く整え、編み込んでいた職人たちが、ようやく手を止めた。

目の前には、少し不格好ながらも、ちゃんとした竹籠ができている。


「おお……」


「竹籠になったな」


ちほも近づいて見る。


「これが最初の竹籠……」


見た目は悪くない。

ただ――。


「まあ、まだ生竹の状態だけど……」


ちほが籠を軽く触る。


「これが乾いたら、もっとしっかりするんじゃないか?」


「そうだな」


職人の一人が籠を持ち上げる。


「今はまだ水分を含んでいる」


「乾いた後の状態を見ないと、不味いな」


「編み目も少し緩むかもしれん」


「逆に縮んで、きつくなるかもしれんぞ」


「なるほど……」


ちほは頷く。


「木と同じじゃなぁ」


「そうだな」


竹も木材と同じように、乾燥によって状態が変わる。だからこそ、今の状態だけを見て完成とは言えない。

職人たちも、それを理解している。


「じゃあ、これは乾かしてから、もう一度確認だな」


「そうだ」


「乾燥したら、さらに改良して……」


職人が籠を見ながら笑う。


「本格的な竹籠を作ってみっか」


「いいな」


「最初のやつより、ずっと丈夫にするぞ!」


「おう!」


「これなら物を入れて運べる」


「じゃあ、試しに使ってみるか」


「そうだな」


せっかく作ったのだ。実際に使ってみないと、どこが悪いのか分からない。


「じゃあ、何を入れる?」


「薪はどうだ?」


「いや、最初から重い物はやめておこう」


「それもそうだな」


「野菜くらいから試してみるか」


「いいだろう」


さっそく籠に野菜を入れてみる。


「持ち上げるぞ」


「おう」


「……大丈夫だな」


「底も抜けない」


「持ち手も問題ない」


ちほも横から確認する。


「ちゃんと使えるね」


「ただ……」


一人の村人が籠を見ながら言った。


「もう少し大きい籠が欲しいな」


「確かに」


「これくらいの大きさなら、もっと入れられた方が便利だ」


「それなら大きいのを作ればいい」


別の職人が言う。


「蓋付きも作れないか?」


「蓋?」


「物を運ぶ時、上から落ちたり、雨が降ったりしたら困るだろ」


「ああ、それはいいな」


「それなら、蓋付きも試してみるか」


さらに別の村人が籠を見ていた。


「農作業用なら、もっと丈夫な方がいい」


「野菜をたくさん入れるなら、今の籠では小さいか」


「底も強くした方がいいな」


「なら、それぞれ作ってみればいい」


「そうだな」


話がどんどん広がっていく。

ちほは、その様子を見ながら笑った。


「……そうしたら、また作ればいい」


「だな」


「実際に使ってみて、必要になった物を作る」


「その方が失敗も分かる」


「使いやすい形も見えてくる」


最初は、ただ資料に載っていた竹籠を真似してみただけだった。でも今は違う。


「大きな籠、蓋付きの籠、農作業用の丈夫な籠」


村人たち自身が、必要な物を考え始めている。


「うん」


ちほは、竹籠を眺めた。


「これでいいんだよね」


私がが全部決める必要はない。

村の人たちが使って、困って、考えて、作り直す。その繰り返しで、村独自の竹製品が生まれていく。


「さて……」


ちほは、竹林を見る。

まだ、竹は大量に残っている。


「竹籠だけでも、結構いろいろ作れそうね」


竹林の可能性は、まだまだ尽きそうになかった。

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