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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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竹籠を作ってみよう!

竹の仮置き場が完成して、しばらく。


「ふぅ……」


ちほは、完成した竹の小屋を眺めていた。

簡単な建物ではあるが、ちゃんと屋根もある。

これで、間引きした竹を雨から守りながら乾燥させられる。


「よし。これで一安心かな」


そう思って周囲を見ると――。


「……ん?」


建物を作った時に使わなかった竹が、あちこちに置かれている。


長さの違う竹。少し細い竹。枝を落とした竹。


「結構、余ってるなぁ……」


捨てるのはもったいない。

ちほは少し考える。


そして――。


「あっ」


思いついた。


「そうだ」


持っいた印刷した竹製品の資料。

その中から一枚を取り出す。


「これ……作ってみる?」


ちほが見せたのは、竹籠の写真だった。


「竹籠か……?」


村人たちが覗き込む。


「竹を細く割って、編んで作るみたいです」


「なるほどな」


一人が周囲に散らばった竹を見る。


「建物の余りもあることだし……」


「試しに、やってみっか?」


「そうだな」


別の職人も頷く。


「竹に慣れておいた方がいいからな」


「それなら、やってみよう」


話は早かった。さっそく竹を一本選ぶ。


「まずは割るのか?」


「資料ではそうなってますね」


「じゃあ、やってみるか」


竹に刃物を入れる。


「……こうか?」


パキッ。


竹が割れる。


「おお」


「綺麗に割れたな」


「じゃあ、もう少し細く……」


今度は細く割ろうとする。

しかし――。


「……あれ?」


「途中で曲がったぞ」


「こっちは割れ方が違うな」


「竹によって違うのか?」


職人たちは竹を眺める。


「太さも違うからな」


「同じように割っても、仕上がりが違うぞ」


それでも作業を続け、細くした竹を並べる。


「さて、これを編むんだな」


「そうだ」


一本。また一本。交互に通していく。


「……」


「…………」


「………………」


しばらくして。


「思ったより難しいぞ」


「だな」


「見た目より、ずっと細かい」


ちほも少し離れたところから見ている。


「頑張れー……」


職人たちは竹を編みながら試行錯誤する。


「この竹、太すぎる」


「もっと細く割らないと編めない」


「こっちは細すぎるぞ」


「なら、太さを揃えた方がいいな」


「そうだな」


一度、途中まで編んだものをほどく。


「最初からやり直すぞ」


「おう」


別の竹を選び今度は、太さを確認してから割っていく。


「このくらいなら揃えられそうだ」


「割る幅も決めた方がいいな」


「じゃあ、最初に何本か同じ幅で作ってみるか」


「それがいい」


また作業が始まる。


「……」


ちほは黙って見ていた。

最初は、地球の竹籠を見せただけ。

作り方も詳しく教えていない。

それでも――。


「もっと細く」


「太さを揃える」


「割る幅を決める」


職人たちは、自分たちで問題を見つけて、自分たちで解決方法を考えている。


「うむ」


ちほは小さく頷いた。


「流石、職人……」


しばらくすると、少しずつ形が見えてきた。


「お?」


「籠っぽくなってきたな」


「もう少し底をしっかりさせよう」


「持ち手はどうする?」


「それは最後だ」


「なるほど」


試作品は、まだ綺麗とは言えない。

ところどころ編み目も不揃いだ。

それでも――。


「最初にしては、いいんじゃないか?」


「使えそうだな」


職人たちは満足そうに頷く。

ちほも笑った。


「……いい感じ」


竹林が村にやってきた。

そして今、竹を切り、乾かし、割り、編む。

少しずつだが、村人たちは竹の扱い方を覚え始めている。

ちほは少し離れた場所から、その様子を眺めていた。


「私は、完成品を見せただけなんだけどな……」


それでも十分だった。

村人たちが、自分たちで考えている。


「この村の竹籠は、この村の職人さんたちが作る」


その方が、きっといい。


「……さて」


ちほは竹林を見る。


「次は、何が作れるかな?」


まだまだ竹は大量に残っている。

竹籠は、その最初の一歩に過ぎなかった。

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