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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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果樹の名前を教えよう

「よし……」


私は小屋に戻ると、すぐにパソコンを開いた。


「まずは調べないと!」


果樹の名前を再度、確認!

育て方!実がなる時期?食べ方!保存方法!

そして加工品。


「これも……」


私は次々と地球の資料を調べていく。


「柿、梅、栗、柑橘、イチジク……」


知らない果樹についても調べる。

そして、必要な情報をまとめて――。


「印刷!」


プリンターから、紙が次々と出てくる。


「育て方!」


印刷。


「食べ方!」


印刷。


「加工品!」


印刷。


「よし!」


かなりの量になった。


「これで説明できる!」


私は資料を抱えて、小屋を飛び出した。


◇


「皆さん!」


果樹園へ戻る。


「どうした? ちほさん……」


村人が驚いた顔をする。


「そんな汗だくで急がなくても……」


「調べて来ました!」


私は息を整えながら、抱えてきた資料を見せる。


「これが資料です!」


「資料?」


「はい!」


私は一枚目を取り出した。


「まず、これは柿です!」


果樹を指差す。


「熟すと甘くなります!」


「ほう……」


「生で食べられます!


村人たちは興味深そうに聞いている。

私は心の中で鑑定を使う。


『鑑定!』


『柿 +神』


「うむ」


合ってる。間違いなく柿だ……と思ったところで。


「ん?」


私は隣の柿を見る。


「こっちの柿……葉っぱの形が少し違う?」


「そうなのか?」


「ちょっと待ってください」


『鑑定!』


『柿 +神』


「……」


同じ柿。でも、表示が少し違う。


これ……渋柿だよーん!


「へ?」


ちほが固まった。


「渋柿です」


「渋い?」


「はい!」


私は頷く。


「同じ柿でも、渋くてそのままでは食べにくい種類があります」


「なるほど……」


「でも!」


私は資料をめくる。


「皮を剥いて、干して水分を飛ばすと甘くなります!」


「ほぅ……」


村人たちが柿を見上げる。


「同じ柿なのに、そんな違いがあるのか」


「そうなんです」


私も改めて驚いた。

地球では知っていたことでも、こうして実物を見ながら説明すると面白い。


「では、次!」


私は別の資料を取り出した。


「これは梅!」


「梅か」


「生で食べると危険です!」


「へ!?」


村人たちが一斉にこちらを見る。


「死ぬ!?」


「いや、言い方が怖かったですね!」


私は慌てて訂正する。


「生の梅の実には、そのまま大量に食べるのに適さない成分があります。だから、生食するものではありません!」


「……驚かせるな」


「すみません」


私は資料を見せる。


「でも、加工すれば大丈夫です!」


「加工?」


「はい。塩を使ったりして、梅干しなどにできます」


「ほう……」


「他にもいろいろな加工方法があります」


「梅というのも、使い道が多そうだな」


村人たちは梅の木を眺める。


「次は――」


私はまた別の紙を取り出した。


「栗!」


「これは知っているぞ」


「実を食べられます!」


「どうやって?」


「茹でたり、焼いたり、料理に使ったりできます」


「なるほど」


「保存方法もありますよ」


「それは後で詳しく教えてくれ」


「はい!」


次。


「これはイチジク!」


「これも果物なのか?」


「はい。生でも食べられますし、乾燥させても食べられます」


「乾燥?」


「はい。水分を抜くことで保存しやすくなります」


村人たちは、次々と質問してくる。


「なら、この果物はどう保存できるのか?」


「種を取って増やせるのか?」


「それとも、挿し木でも増やせるかのう?」


「加工するとしたら、何ができる?」


「これは地球ではどうやって育てている?」


質問が止まらない。


「えっと……」


私は資料を抱え直す。


「順番にお願いします!」


「ははは!」


みんなが笑う。すると、一人の村人が果樹を見ながら言った。


「これを村の商品にできないか?」


「そうですね!」


私は頷く。

果物そのものを売る。乾燥させる。

加工する。保存食にする。いろいろな可能性がある。


「でも……」


別の村人が言った。


「考える前に、実が採れるようにせんとな?」


「そうだな」


「まだ小さい木も多いからな」


「まずは木をちゃんと育てることだな?」


「実が採れなければ、商品も何もない」


「確かに……」


私は頷いた。


「その通りですね」


ユーカリの時とは違う。

ユーカリは、数日で森になった。

でも果樹は、種類によって成長の仕方も違う。


「まずは果樹を元気に育てる」


「うむ」


「実が採れたら、その時に加工方法を考える」


「それがいい」


「保存方法も、それまでに調べておこう」


「苗を増やす方法もだな」


「種だけじゃなく、挿し木という方法もあるなら試してみたい」


「では、まずは木の世話からだ」


村人たちは、それぞれ果樹の周りへ散っていく。


「この木は水が足りないか?」


「こっちは枝を少し整理した方がいい」


「雑草も取っておこう」


私はその様子を眺めた。


「……うん」


果樹園も、少しずつ形になってきている。

私が全部やるんじゃない。私は地球の知識を持ってくる。村人たちは、それを使って自分たちで考える。

そして――。


「果物が採れたら、また新しい商品が生まれる」


私は果樹園を見渡した。


「……楽しみだな」


ただ。その時、私はまだ知らなかった。

この果樹園の果実が――村の食卓だけではなく、村の新しい産業になることを。

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