果樹園?
「村長ーーーー!」
村の中に、私の声が響いた。
「うわ!?」
村長さんが驚いて振り返る。
「なんじゃまた……?」
「木の果樹を育てる方、いませんか?」
「へ?」
村長さんが首を傾げる。
「果樹? それなら……いるが?」
「また数人、貸してください!」
「……またか」
村長さんは苦笑した。
「まあ、良いか。今は確か、皆いるはずだ」
「ありがとうございます!」
「少し待て。呼んでくる」
◇
しばらくして村長さんと数人の村人たちが、私のところへやってきた。
「ちほさん?」
「はい!」
「ここなのか?」
「はい……」
私は果樹園の方を見る。
「果樹の森を見つけましたので……」
「果樹の森?」
村人たちは顔を見合わせる。
そして――。
「……こんな所、あったか?」
「いや?」
「俺は知らねーな……」
「私もだ」
みんなが周囲を見渡す。当然だ。数日前には、こんな場所はなかった。私が苗木を植えた場所だから。
「森って言っても……」
一人の村人が辺りを見回す。
「やたら綺麗に並んでるな?」
「そうだな」
「誰かが手を入れてるようだ」
「……」
私は黙っている。
まさか、私が数日前に植えました。
なんて言えない。
「種類別に植えてあるのか?」
「そうみたいだな」
村人たちは果樹を一本ずつ確認し始めた。
「これは……」
柿の木。
「食べられるのか?」
「まだ小さいぞ」
枝に付いた実を見ながら、村人が首を傾げる。
「でも、ちゃんと実がなってる」
「この木もだ」
「こっちは花が咲いている」
「こっちは蕾だな」
村人たちは興味深そうに木を調べていく。
「……変わった森だな」
「見たことのない木ばかりだ」
「これも果樹なのか?」
「たぶん……」
私は曖昧に答える。
「たぶん?」
村人がこちらを見る。
「後で教えますので!」
「お、おう?」
私は話を逸らす。
さらに村人たちは奥へ進んでいく。
「これは柑橘っぽいが……」
「柑橘?」
「黄色い実がなる木に似ている」
「こっちは?」
大きな葉を持った木を見上げる。
「このでかい葉のは、何だ?」
「えっと……」
私は少し考えた。イチジク。でも、今ここで全部説明するのは危険だ。というか。
「後で教えますので!」
「……」
「……教える?」
村人たちが顔を見合わせる。
「はい!」
私は笑顔で答えた。
「ちゃんと調べてから説明します!」
「そうか……」
村長さんが果樹園を見渡す。
「しかし……」
小さな実。花。蕾。たくさんの木。
「果物がこれだけ採れるなら、保存する方法も考えねばならんな」
「そうですね!」
保存。加工。乾燥。ジャム。
いろいろ考えられる。
でも――。
「それに付きましては……」
私は村長さんを見る。
「私も調べますので……」
「うむ」
「その間、この辺りの森の手入れをお願いします!」
「手入れ?」
「はい!」
「どういうふうに?」
「えっと……」
私は果樹園を見回した。
「枯れた枝があったら取り除くとか、雑草を取るとか……」
「なるほど」
「木が育つように、周りを綺麗にしてもらえれば」
「それなら任せておけ」
果樹に詳しい村人が頷いた。
「木の様子を見ながら手入れしておこう」
「ありがとうございます!」
これで一安心……と思った。
「ところで」
村人が一本の木を指差す。
「これは何という木なんだ?」
「……」
「こっちは?」
「……」
「この大きな葉の木は?」
「…………」
質問が止まらない。
「これは……」
「ちほさん?」
「はい!」
「全部、知っているのか?」
「えーっと……」
私は笑顔を作る。
「調べてから教えます!」
「…………」
村人たちが首を傾げる。
私はそっと後ずさる。
「では!」
「え?」
「私、用が出来ましたので!」
「ちほさん?」
「皆さん、お願いします!」
「お、おう……?」
私はそのまま走り出した。
「……行ってしまったな」
村人たちは顔を見合わせる。
村長さんが苦笑する。
「まあ……いつものことじゃ」
「そうだな」
果樹園に残った村人たちは、改めて木々を見渡した。
「さて……」
「まずは、この木々が元気に育つようにしてやるか」
「おう」
こうして。ユーカリに続いて――果樹園も、村人たちの手によって管理されることになった。
そして私はというと。
「……危なかった」
少し離れた場所で、私は胸を撫で下ろしていた。
「まだ、全部の果物を説明できるほど調べてないんだから……」
私は小屋に全力ダッシュ!
「さて……まずは、果樹の種類と育て方から調べるか」
こうして、私の新しい調査が始まった。




