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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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果樹園にも異変が!?

「……嘘でしょ?」


私は果樹園の前で固まっていた。

数日前。確かにここへ果樹の苗木を植えた。

柿。栗。梅。柑橘。イチジク。

その他にも、いくつかの果樹を植えている。

どれも、まだまだ小さな苗木だったはず。


「……」


私はまず、一番近くにあった柿の木へ近づく。


「鑑定!」


表示された情報を確認する。


「うん。間違いなく柿……」


そして、枝を見る。


「……ん?」


葉の間に、何かある。


「これ……実?」


小さい。ものすごく小さい。

でも、どう見ても実らしきものが付いている。


「いやいやいや……」


私は次の木へ移動する。


梅。


「鑑定!」


梅の木だ。そして――。


「……これも?」


枝の先に、小さな実らしきもの。


「梅にも実が付いてる!?」


次。栗。


「鑑定!」


栗。こちらは実ではない。


「……花?」


小さな花のようなものが付いている。


「栗って……花が咲く時期だっけ?」


私は首を傾げる。

いやいや、待て待て、待ってそもそも――。


「今って何月よ?」


私は空を見上げた。


「…………」


分からない。異世界に来てから、地球の季節感をそのまま当てはめていいのかも分からない。


さらに次。

柑橘。


「鑑定!」


「……」


葉の間を見る。


「蕾……?」


小さな蕾がいくつも付いている。

そして――イチジク。


「……これは?」


実は付いていない。

でも。


「葉っぱ、増えすぎじゃない?」


数日前より明らかに葉が多い。

枝も伸びている。


「…………」


私は果樹園全体を見渡した。

柿には実らしきもの。梅にも実。栗には花。

柑橘には蕾。イチジクは葉が異常に増えている。


「……」


私はゆっくりと空を見上げる。

そして。


「季節感は、どうなってるんじゃーーー!!」


森に私の叫び声が響いた。


「…………」


返事はない。当たり前だ。私は深呼吸する。


「落ち着け……私……」


すー。はー。


「深呼吸を……」


すー。はー。


「よし」


もう一度、果樹を見る。


「+神=単純に全部が超高速成長するわけではない?」


私は少し考える。

ユーカリは、とんでもない速度で成長した。

でも果樹は、種類によって成長の仕方が違う。


葉だけ増えるもの。花が出るもの。蕾ができるもの。実らしきものまで付いているもの。


「……」


私は首を傾げる。


「いや……」


そして気づく。


「ある意味、超高速成長だけど……」


普通なら苗木を植えて数日で、ここまで変化すること自体がおかしい。


「うん」


私は頷いた。


「やっぱり普通じゃないわ」


原因は分からない。

でも、鑑定にはちゃんと――+神


と表示されている。


「……やっぱり、これが原因なのかな?」


私は木の葉をそっと触る。


「まあ……」


今のところ、枯れているわけではない。

むしろ元気そうだ。


「ちゃんと育ってるなら……いいか!」


また出た。私の得意技。まあ、いいか。


「でも……」


私は果樹園を見渡す。小さな苗木だった果樹たち。その一部には、すでに花や実らしきものまである。


これが全部、ちゃんと育ったら――。


「……」


私は想像してみる。

柿。梅。栗。柑橘。イチジク。それ以外の果樹。それらが一斉に実を付けたら。


「……これ、全部ちゃんと育ったら……」


私は果樹園を見渡した。


「村、果物だらけになるんじゃない?」


「…………」


嬉しい。ものすごく嬉しい。

果物が増えれば、村の食料にもなる。

加工品も作れる。ジャムだって作れるかもしれない。乾燥させれば保存食にもなる。

そして、地球で売れる商品になる可能性だってある。でも――。


「……多すぎたら、どうするんだろ?」


今度は別の心配が出てきた。

収穫。保存。加工。販売。運搬。


「……」


私は頭を抱える。


「果樹園まで、村の新しい仕事になりそうね」


ユーカリの森に続いて、果樹園まで。

私が何気なく持ち込んだものが、どんどん村の産業になっていく。


「……まあ」


私は果樹を見ながら笑った。


「これも、村のみんなで考えていけばいいか」


私一人で全部やる必要はない。村の人たちが果物を見れば、きっと何かを思いつく。

食べる。保存する。加工する。売る。


「さて……」


私は果樹園をもう一度見渡した。


「まずは、ちゃんと育つか見守らないとね」


小さな実。小さな蕾。咲き始めた花。

たくさんの葉。果樹園は、少しずつ変化を始めていた。

そして――その変化が、村に新しい仕事と商品を生み出すことになる。


……たぶん。


「でもお願いだから、ユーカリみたいに数日で森にはならないでよ?」


私は果樹園に向かって、そうお願いした。

もちろん。木々は何も答えてくれなかった。

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