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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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ユーカリ材

ユーカリの森。


今日は、間引きすることになった木を使って、木工職人さんたちが実際に加工を始めていた。


「よし。まずは一本、切ってみるか」


「お願いします」


職人さんがユーカリの幹を確認する。

そして、斧を振り下ろした。


コンッ!


「……」


もう一度。


コンッ!


「やっぱ、思ったより硬いな」


「そうですね」


切り口を確認しながら、別の職人さんが頷く。


「木目も普通の木とは少し違う」


「乾燥させたらどうなるかも見たいな」


「そうだな」


切り出したユーカリを加工場へ運び、まずは小さな板を作る。


「これなら加工できる」


「削った感じは悪くないな」


「表面も綺麗に仕上がるぞ」


職人さんたちは、次々と試していく。

そして――。


「水にも強いぞ」


「本当か?」


加工した木片を水に浸ける。

しばらくして取り出してみる。


「……確かに」


「水を吸い込みにくいな」


「だから温泉にか――」


職人さんが私を見る。


「湯船に使えるってことか」


「そうですね!」


私は思わず頷いた。


「前に試した時も、水を弾いていました」


「なるほど」


職人さんは木片を眺める。


「これは普通の木とは違うってことか」


「そうみたいですね」


「面白い木だ」


そこからは早かった。


「小さな箱を作ってみるか」


「皿もいいな」


「コップはどうだ?」


「椅子も試してみよう」


次々と試作品が考えられていく。

小さな箱。皿。コップ。そして椅子。


「……」


私は少し離れた場所から、その様子を眺めていた。


ユーカリの木が、少しずつ形を変えていく。

最初は森に生えているだけだった木。

それが今では、村の人たちの手によって商品になろうとしている。


「……この木、なかなか面白いぞ」


木工職人さんが、完成した小さな箱を手にして呟いた。


「これなら、もっと色々な物が作れそうだ」


「ですね!」


私は笑顔で答えた。


「家具にもできそうですね」


「そうだな。乾燥後の状態も確認してみたい」


「それが分かれば、もっと使いやすくなる」


職人さんたちは、すでに次の作品について話し始めている。

私はその様子を見ながら、ほっと息を吐いた。


「ふぅ〜……」


これで。


「これで、このユーカリの件は順調に回りそうだね!」


薪になる。葉も使える。木材にもなる。

苗も村で育てる。そして、新しい商品まで作り始めた。


「……はぁ」


私はもう一度、深く息を吐いた。


「でも焦った」


「?」


職人さんがこちらを見る。


「何がだ?」


「あ、いえ。なんでもないです!」


私は慌てて誤魔化した。

まさか数日前に植えた苗木や、蒔いた種が――気が付いたら森になってました。


なんて。


「……」


そこで私は、ふと思った。


「ん?」


「どうした?」


「ちょっと待って……」


ユーカリがあんなことになっている。

ということは……他の果樹たちは!?


私は突然、嫌な予感がしてきた。

ユーカリだけが特殊なのか?

それとも――私が植えた果樹にも、同じようなことが起きているのか?


「私、用を思い出したので!」


「おー! 分かった!」


「ちょっと見てきます!」


私はその場を飛び出した。


「ちほさん、走らんでもいいぞー!」


「無理です!」


ダッシュ。全力でダッシュ。

向かう先は――果樹を植えた場所。


「ユーカリがあんなことになってるんだ……」


走りながら、私は考える。


「流石に、成長はそんなに早くない苗木たち……だよね?」


普通なら苗木を植えて数日で森になるなんて、あり得ない。

でも私の植えた植物には――。


「+神」


が付いている。


「……」


私は少しだけ速度を上げた。


「+神の影響が、どんなことになっているか……」


ユーカリだけが例外なのか。

それとも果樹たちも――まさか……私は果樹園へ向かって、さらに走る。


「お願いだから、普通に育ってて!」


しかし遠くに見えてきた木々を見た瞬間。

私は足を止めた。


「…………」


「え?」


そこに見えたのは――明らかに、数日前に見た時とは違う木々だった。


「……嘘でしょ?」


私はゆっくりと歩き出す。

そして果樹の一本に近づき――。


「鑑定!」


表示を確認した。


「…………」


私は固まった。


「+神……」


やっぱり。付いている。そして、その木には――小さな実が。


「…………」


「え?」


私は目を見開いた。


「実……なってる?」

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