ユーカリの森を管理しよう!
翌日。ユーカリの森には、昨日集まった木工職人たちが来ていた。
「さて……」
木工職人さんが腕を組み、森を見渡す。
「まずは、この森をどう管理するかだな」
「管理?」
私が聞くと、職人さんが頷いた。
「これだけの木があるんだ。何も考えずに切ってしまったら、すぐに無くなる」
「なるほど」
「だから、全部切るんじゃない」
職人さんは森の中へ入っていく。
「育てる木」
一本の木を指差す。
「収穫する木」
少し離れた木を指差す。
「そして、葉を採る木」
さらに別の木を指差した。
「まずは、この三つくらいに分けた方がいいだろう」
「いいですね!」
私は頷いた。村の人たちが、自分たちで森を管理しようとしている。
それだけでも、なんだか嬉しい。
「でも、どのくらいの間隔で植えるか? というのも考えないとな」
別の職人さんが木々の間を見ながら言った。
「そうだな……」
最初の職人さんが周囲を見渡す。
「まずは、どの木を残すか?」
「だな」
「全部残すと、今度は木が密集しすぎる。育ちの悪い木も出てくるだろう。なら、まずは間引きする木を決めるか」
「そうしよう」
私は黙って話を聞いていた。
なるほど。ただ植えればいいわけじゃない。
森そのものを管理する必要がある。
「枝や葉はどうする?」
誰かが聞いた。
「葉は……何かに使えるって聞いたから、集めるか」
「うん。香り袋や石鹸にも使えるし、消臭にも使える」
「なら、葉は捨てない方がいいな」
「枝は?」
「乾かして薪にするか」
「それがいい」
「細い枝なら薪にしやすい」
「太い枝は木材に使えるかもしれん」
「なるほど」
枝一本も無駄にしない。
葉も使う。木は木材にする。
「……すごいな」
私は思わず呟いた。
最初は、ただのユーカリだった。
今では村の人たちが、
「これは薪、これは木材、これは葉を採る」
と、使い道を考えている。
「じゃあ、切った後は?」
私が聞く。
「また植えるんですよね?」
職人さんたちは顔を見合わせた。
「そうだなぁ……」
一人が少し考える。
「根を抜くか」
「根を?」
「切っただけでいいのか分からんからな」
「新しい苗を植えるなら、根を抜いて場所を空けた方がいいだろう」
「そうだな」
「切った場所には、新しい苗を植える」
「それを繰り返せばいい」
私は頷いた。
「つまり、収穫したら植える」
「そういうことだ」
「育て、使う、そしてまた植える」
「うむ」
なんだか、村の新しい循環ができていく。
「苗はどうする?」
今度は別の問題が出てきた。
私は少し考える。私がいなくなったら、ユーカリが増えなくなる。
「村で苗を育てられるようにした方がいいと思います」
「苗を?」
「はい。種から育てられるなら、村で育ててみませんか?」
「なるほど」
職人さんが頷く。
「それなら、植林する場所も自分たちで増やせるな」
「苗を育てる場所も作ろう」
「水をやる場所が必要だ」
「なら、村の近くに苗床を作るか」
また話が進んでいく。
私は少し離れた場所から、その様子を眺めていた。
「……もう私がいなくても進んでる」
最初は、私がユーカリを持ってきた。
私が植えた。私が使い道を調べた。
でも、これからは違う。
村の人たちが育て、村の人たちが管理し、村の人たちが使う。
そして、新しい苗を育てる。
「これなら……」
私は小さく笑った。
「本当に村の資源になるかもしれない」
すると、木工職人さんがこちらを見る。
「ちほさん」
「はい?」
「……ところで」
「はい?」
職人さんはユーカリの木を見上げた。
「これだけ木があるなら、ユーカリ材で何か新しい家具を作ってみるか」
「!」
私は思わず笑った。
「それも良いですね!」
「木材としての性質も、まだ全部分かってないからな」
「まずは小さな物から試してみるか」
「そうだな」
「椅子か?」
「箱もいい」
「机はどうだ?」
「まずは小物からだろう」
職人たちが次々に案を出していく。
「なら、まずは――」
木工職人さんが森を見渡した。
「間引きする木に印をつけるか!」
「おう!」
「どれを残す?」
「この木は真っ直ぐだから残そう」
「こっちは少し曲がっている。間引き候補だな」
「こっちは枝が多い。薪用にできそうだ」
職人たちは一本一本、木を確認していく。
私はその後ろをついて歩きながら思った。
ユーカリの森は、もう私だけのものではない。
村の人たちが自分たちで育てていく。
そして――。
「ユーカリから、また何か新しい物が生まれるかもしれないな」
そう呟くと、森の中から、
「ちほさん! この木はどうする!?」
と声が飛んできた。
「えっ、私に聞くの!?」
私は慌てて駆け寄った。
「いやいや! そこは木のプロで決めてくださいよ!」
「ははは!」
森の中に笑い声が響いた。
こうして、ユーカリはただの「早く育つ木」ではなく――。




