ユーカリ植林地、大変なことになっていた!?
「えっと……この辺りだったけど……」
私は森の中を歩いていた。ユーカリを植えた場所を確認するためだ。
確か、この辺だったはず……苗木を植えた場所。種を蒔いた場所。頭の中では、ちゃんと覚えている。
「……あれ?」
私は立ち止まった。
「なんか……雰囲気が違う?」
周囲を見回すと木。木。木。
「…………」
「どこ?」
私は首を傾げた。
「ちょっと待って!」
慌てて周囲を見回す。
「ここじゃない?」
いや。ここだったはず?でも、記憶にある景色と全然違う。
「……おかしい」
私は少し戻ってみる。
すると――。
「……え?」
今度は、私が歩いてきた場所まで木が生えている。しかも。
「これ……ユーカリ?」
見覚えのある葉。独特の香りと間違いない。
ユーカリだ。
「いやいやいや……」
私は頭を抱えた。
「私が植えたのって……数日前よ?」
さらに進む。すると、そこには大きく育ったユーカリが何本も並んでいた。
いや。並んでいるという表現がおかしい。
「……これ、植林っていうより……」
私は目の前に広がる木々を見渡した。
「森林じゃない?」
しかも、よく見ると、さらに奥には小さな木まで生えている。
「あれ?」
近づいてみる。
「これ……種から芽が出たやつ?」
確かに、種を蒔いた。でも、芽が出るまでだって普通はそれなりに時間がかかるはず。
なのに。
「なんで、もうこんなに大きくなってるのよ……」
私はしゃがみ込んで、小さなユーカリの葉を確認する。
そして――。
「……鑑定!」
鑑定を使う。
表示された結果を見て、私は固まった。
「……+神」
出ている。間違いない。
「やっぱり私が植えたり、蒔いたりしたやつだ!」
つまりここにあるユーカリは、全部私が原因。
「これは……」
私は立ち上がった。
「いつの間に、こんなに成長したの!?」
数日前。苗木を植えた。種を蒔いた。
それだけだったはず。それが今では――。
「……森になってる」
私は額に手を当てる。
「何となく……まずいか?」
この量なら、薪にもできる。
木材にもできる。葉っぱも採れる。商品も作れる。でも。
「誰が管理するの?」
このまま放っておいたら、どんどん増えるんじゃない?
「……村長さんに話して、管理できる人を回してもらわないと!」
私は急いで村へ戻った。
◇
「村長ーーー!」
村長さんの家に飛び込む。
「どうした? そんな血相を変えて……」
「ユーカリの森が!」
「……はい?」
「思ったより大きくなって……!」
「…………」
村長さんが首を傾げる。
「森?」
「はい!」
「ユーカリという木の森が?」
「そうです!」
「そんなもの、いつの間に……」
「それは……」
言えない。私が植えました。
数日前にそしたら森になりました。
なんて、絶対に言えない。
「と、とにかく!」
私は話を逸らした。
「木に詳しい人を何人か貸してください!」
「木に詳しい者を?」
「はい。あの場所を見てもらいたいんです」
村長さんは少し考える。
「……まあ、良いが?」
「ありがとうございます!」
私はすぐに木工職人さんたちを連れて、ユーカリの植林地区へ向かった。
◇
「……これが、ユーカリの森か」
木工職人さんが目の前の景色を見上げる。
「村から少し離れた所に、こんな場所があったとは……」
別の職人さんも周囲を見渡した。
「いや、俺も知らなかったぞ」
「これだけの木があるとはな……」
私はその横で、汗をダラダラ流していた。
いやいや。違うんです。私が苗木や種を、数日前に植えたり蒔いたりしたら――。
気がついたら森になってました。
……とは。言えない。絶対に言えない。
「これだけあれば、十分だな?」
「そうだな」
「薪として使っても、木材として使っても、かなりの量が取れそうだ」
「葉も利用できるんだったな?」
「そう聞いている」
職人たちは、すでに木を見ながら話し合っている。
「これなら村の新しい資源になりそうだ」
「うむ」
「……こんなにあるとは、気が付かなかったな」
「…………」
私は黙って笑った。
「そ、そうですね……」
冷や汗が止まらない。
すると、一人の職人さんが私を見る。
「ちほさん!」
「はい!」
「ここの管理は、俺らに任せろ!」
「え?」
「そうだぞ!」
別の職人さんも胸を張る。
「俺らは木のプロだ!」
「木の状態を見ながら、使う木と育てる木を分けていけばいい」
「それに、もっとユーカリを増やそう」
「増やす?」
「これだけ成長が早い木なら、植林する価値がある」
「薪にもなる。木材にもなる。葉も使える」
「ならば、もっと増やした方がいい」
私は目を丸くした。
「…………」
話が勝手に進んでいく。
「ちほさん!」
「はい?」
「もっとユーカリってのを増やすぞ!」
「…………」
私は森を見る。そして、もう一度見る。
「……よろしくお願いいたします……」
それしか言えなかった。
こうしてユーカリは単なる「温泉の香り付けに使える木」から――。
薪。木材。香料。消臭。虫除け。石鹸。
そして、植林による新しい資源。村人たちの中で、少しずつ位置づけが変わり始めていた。
そして私は、一つだけ心の中で思う。
「……これ以上、急激に育ったりしないよね?」
森の中で、風が吹いた。
ユーカリの葉が――ざわざわと揺れた。
「…………」
「……大丈夫よね?」




