初めての薪拾い
「はぁー……」
私は畑を見渡した。
「どうにか畑っぽくなった」
最初は雑草と石だらけだった土地。
それを少しずつ耕して、土をならして、何とか畑らしい形にした。
「色々と種も蒔いたし、水もあげたし!」
種を植えた場所には、目印も立ててある。
「後は、芽が出るのを待つだけ!」
あとは自然の力に任せるしかない。
「……」
さて。
「次、何しようかな?」
小屋の中を見回す。
そこで、ふと気づいた。
「そう言えば……」
薪置き場を見る。
「薪が減ってきたわね」
お湯を沸かす。
そんなことをしていれば、当然薪も減っていく。
「薪拾いでもするか」
そうと決まれば準備だ。
小屋の中を探していると――
「あった」
壁に立て掛けてある道具。
「背負子」
昔ながらの木製の背負子だ。
「これ、小屋にあったのよね」
少し壊れていたところを見つけたので、前に修理しておいた。
「よし」
背負ってみる。
「……」
思ったより重い。
「これに薪を積むのよね?」
昔の人は、これで山から薪を運んでいたのか。
「すごいわ……」
今さらながら、昔の生活の大変さを実感する。
でも――
「まあ、やってみるか」
私は背負子を背負って、森へ向かった。
◇
「うーむ……」
森の中を歩く。
「薪拾いなんて初めてだな」
地面を見る。
落ちている枝を探す。
「これは……」
拾う。
「薪に使えそう」
背負子へ乗せる。
また歩く。
「これは?」
拾う。
「これも使えそうね」
少しずつ薪が増えていく。
「こういうの、意外と楽しいかも」
普段、森なんて歩く機会はない。
木々の間から差し込む光。
葉っぱが風に揺れる音。
鳥の鳴き声。
「森の中も、たまには良いわね」
足を止めて、上を見る。
「……あれ?」
木の上を鳥が飛んでいく。
「見たことのない鳥ね」
日本で見たことのある鳥とは、明らかに違う。
羽の色も違う。鳴き声も違う。
「やっぱり異世界なんだ……」
改めて実感する。
そして、ふと周囲を見回す。
「……」
「恐ろしい動物は……いない?」
昨日、猫人の女の子と会った。
一人で森の中に入って薪を拾っていた。
「あんな小さい女の子が入るぐらいだから……」
きっと、この辺りは安全なのだろう。
「まあ、平気かな?」
そう思いながら、また薪を拾う。
「よいしょ」
背負子に乗せる。
「もう少し集めて帰ろう」
森の中には、まだまだ薪になりそうな枝が落ちている。
んー。この先、真っ直ぐに行けば村か。
「遠くからちょっと見るくらいいいわよね?」
どんな村なのか。
そして――どんな人種がいるのか。
昨日会った猫人以外にも、色々な種族がいるのかもしれない。
「ちょっとだけ……」
私は背負子を背負ったまま、村の方向へ歩いていくことにした。
◇
「おっ」
森の中をしばらく進むと、木々の間から明るい場所が見えてきた。
「森の切れ目だ」
私は足を止める。
「さてさて……どうだろ?」
少しずつ近づいていく。
そして――
「おっ!」
目の前に広がったのは、広い畑だった。
その先には家が並んでいる。
「藁葺き屋根?」
思わず目を細める。
「うわぁ……」
まるで昔の日本の田舎みたいだ。
広がる畑。木造らしき家。藁葺きの屋根。
そして、畑の間を歩いている人らしき姿。
「……」
私はしばらく眺める。
「人らしき人はいるけど……」
遠すぎる。
「私の目じゃ見えないなぁ」
猫耳があるのか。
普通の人間なのか。
それとも、また別の種族なのか。
ここからでは全然分からない。
「まあ、今日はこのくらいでいいか」
村に入る勇気は、まだない。
今はただ――
「どんな村なのか分かっただけでも、収穫ね」
私は村をもう一度眺める。
そして、背負子に薪を積んだまま、来た道を戻ることにした。




