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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者:


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11/32

猫人親子がやって来た

「はぁ……」


鍬を地面に置く。


「畑仕事がこんなにキツいとは……」


額の汗を拭う。


「暑い……」


朝からずっと土を耕していた。

腕は痛い。腰も痛い。

それでも――


「でも、大分耕せてきたかな?」


荒れていた畑も、少しずつ土が柔らかくなってきた。


「よし」


一度、腰を伸ばす。

その時、ふと森を見る。


「……」


昨日の猫人。


「猫人、今日は来ないのかしら?」


薪を拾いに来ていたから、今日も来るかと思っていた。


「まあ……」


私は苦笑する。


「向こうから見ても怪しさ満点だしね」


森の近くに突然現れた小屋。

そこに一人で住んでいる人族。

しかも、見たこともない服を着ている。

怪しくない方がおかしい。


「まあ、仕方ないか」


そう思った時だった。


「こっち! こっち!」


「ん?」


森の方から声が聞こえた。


「誰?」


私は目を凝らす。


「ほら!」


森の中から、昨日の猫人の女の子が出てきた。


「あ!」


その隣には――


「おー!」


昨日の猫娘と――


「大人猫娘!」


どう見ても母親らしき女性が一緒にいる。


「ほら! いたでしょ? かーちゃん!」


「ええ。本当にこんな所に……」


二人がこちらへ歩いてくる。


「こんにちは……?」


私は恐る恐る声を掛ける。


「……こんにちは」


大人の猫人も少し警戒した様子で挨拶を返した。


「貴女、こんな所に住んでるの?」


「はい」


私は頷く。


「流れでそうなりまして……ここをお借りしてます」


「こんな所に小屋があったなんて……」


女性は周囲を見回す。


「うちの娘がね、森の中に小屋が出来て、人族が住んでるって言うから」


「……」


「まさかと思って見に来たんだけど……」


「ええ……」


私は苦笑する。


「不味かったですかね?」


「いや」


女性は首を横に振った。


「ここは誰の森でもないから」


「そうですか……」


少しホッとする。

でも、女性の視線が私の服へ向いた。


「しかし……その服は?」


「え?」


私は自分の服を見る。

現代の服。


「……」


しまった。

異世界の人から見れば、確かに変なのかもしれない。


「あー……」


私は咄嗟に答える。


「遠い親戚から、珍しいからって貰ったものです」


「ふーん」


女性が私を見る。


「……」


「……」


如何にも怪しい答えだ。自分でもそう思う。でも、他に説明のしようがない。


「まあ……」


女性はそれ以上追及しなかった。


「何かあったら、ここを真っ直ぐに行った所に村があるから来なさいな」


「村が……」


「ええ」


「はい。何かありましたら……」


「じゃあねー!」


娘の方が元気よく手を振る。


「うん。またね」


二人は森の方へ戻っていく。

私はその後ろ姿を見送る。


「……」


どうやら、この先に村があるらしい。


「村……か」


異世界に来て初めて、まともに人の住む場所を知った。


そして――


「また来てくれるかな?」


昨日の猫人の女の子が振り返り、手を振っている。


私も手を振り返した。


「……まあ」


少なくとも、敵ではなさそうだ。

でも――


「やっぱり、色々と説明するのは難しいわね」


私は荒れた畑を見る。

そして、手にした鍬を見る。


「まずは、ここでちゃんと暮らせるようにしないと」


異世界生活。

少しずつだけど、形になってきていたかな?

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