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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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ユーカリの香りを温泉で

さて。せっかくユーカリの葉から香りのある液体が取れたんだから。


「まずは、村の温泉で試してみるか!」


小さな瓶に少量だけ入れて、私は温泉へ向かった。


◇


「村長さん、ちょっと試してみたいものがあるんです」


「ほう?」


村長さんや、温泉小屋を作っている人たちが集まってくる。


私は小さな瓶を取り出した。


「これ、ユーカリの香りなんです」


「ユーカリ?」


「この前の木ですよ」


瓶の蓋を少し開ける。


「どうぞ」


村長さんが鼻を近づける。


「……」


少し考えて。


「……森のような匂いじゃな」


「ですよね!」


別の村人も嗅いでみる。


「確かに、木のような……」


「でも、少し違うな」


「すーっとする感じがする」


思ったより評判は悪くない。


「じゃあ、温泉で少しだけ試してみましょう」


私は温泉のお湯に、ごく少量だけ加えてみる。


「これでどうでしょう?」


しばらくすると、湯気と一緒にユーカリの香りが広がっていく。


「……」


村長さんが湯船に入る。


「……」


そして目を閉じる。


「……これは……」


少し間を置いて。


「……良いのう」


「ですよね!」


私も笑ってしまう。

温泉の温かさと、すっきりした香り。

思った以上に合っている。


「これは面白いな」


木工職人さんも興味を持ったようだ。


「この香りを使えば、他にも何か作れるんじゃないか?」


「例えば?」


「香りを染み込ませた袋とか」


「香り袋ですね!」


「それから石鹸に混ぜるのはどうじゃ?」


「それもいいですね」


別の村人からも声が上がる。


「乾燥させた葉を袋に入れても香りは残るのか?」


「試してみたいですね」


「温泉用に、香りを加えるためのものとして売るのも……」


「それも商品になりますね」


私は思わず周囲を見る。

私が考えていたのは、


「温泉に入れてみよう」


ただ、それだけ。なのに、もう村人たちが、新しい使い道を考え始めている。


「……いい流れね」


私は小さく笑った。


◇


その日の夜。

私は小屋に戻って、もう少しユーカリについて調べてみることにした。


「せっかくだから、もっと調べておこう」


パソコンを開き、ユーカリの利用方法。

精油。香り。石鹸。消臭。虫除け。

いろいろ調べていく。


「へぇ……」


香りを利用した商品だけでも、かなり種類がある。さらに、ユーカリの精油について調べていると、殺菌や抗ウイルス作用などについて紹介している情報も見つかった。


鼻詰まりや、のどの不快感、咳などに関する利用。

虫除けや消臭目的で使われることもあるらしい。


「中々いろいろと使えるわね」


ただし、使い方を間違えれば危険な場合もある。特に原液をそのまま肌につけたり、飲んだりするのは駄目。


「これはちゃんと注意しておかないと」


薬として扱うのではなく、まずは香りや消臭、虫除けなど、用途を限定して使う方がよさそうだ。私は調べたことを紙にまとめていく。


「香り、消臭、虫除け、石鹸、温泉、香り袋」


「……」


これだけあれば、村人たちが新しい商品を考える材料になる。


「これ、村長さんにも見せよう」


私はさらに紙をまとめる。

私が全部商品を考える必要はない。


むしろ――。


「村の人たちに情報を渡して、考えてもらった方がいい」


そうすれば、香り袋を作る人。石鹸を作る人。

温泉用の商品を作る人。消臭用品を作る人。

それぞれの得意分野を活かせるかもしれない。


「うむ!」


私は頷く。


「村の新商品が増えれば、村が潤う!」


そして、もう一つ大事なことがある。


「しかも……」


私は少し考える。


「村で生産できるなら、私がいなくなっても回る」


これが大きい。

私が地球から物を持ってくるだけでは、私がいなくなったら終わってしまう。


でも、村でユーカリを育てて、葉を収穫して、蒸留器を使って、香りを作って、それを商品にする。

そこまで村の中でできるようになれば――。


「私がいなくても、村の人たちだけで続けられる」


水車もそうだった。農具も布も木工品も革製品も最初は私がきっかけを持ってきた。


でも、今では村人たちが自分で作って、自分で改良している。


「これでいいんだよね」


私はパソコンを閉じる。


「私が全部やるんじゃなくて、村の人たちが自分たちでできるようにする」


その方が、この村はもっと強くなる。


「……よし!」


明日は、この資料を村長さんに渡そう。

そして――。


「どんな新商品が生まれるか、楽しみね」


私は笑いながら、布団へ向かった。

また一つ村に新しい可能性が増えた。

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